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side零夜 自覚
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その時、控室には俺と雄飛しか居なかった。
「あのさ、お前の客のアユムくんって居るじゃん」
「うん。居るね」
「あー、その、あんまこういうこと聞くの良くないかもしれないけど、お前あの客が好きなのか?」
「はい?」
予想外の発言にスマホを弄っていた手が止まる。
「いや、なんかアユムくんにだけ他の客と態度違うなっていうか」
「男と女で態度同じ人の方が少なくない?」
「いや、そうなんだけど」
雄飛はしばらく口の中でもにょもにょ言ったあと、再び口を開いた。
「俺も一応ホストだからさ、営業については理解してるんだよ。でもだからこそ、零夜のアユムくんへの態度ってちょっと私情が入ってる感じがするというか」
「な、なにそれ」
声が震えたのは的外れな発言に傷ついたからではない。自覚があったところを突かれたからだ。
アユムと居ると、心地良い。仕事なんて関係なく、ずっと一緒に居たいと思う。
実際計算も駆け引きもなく、仕事の後や休日に予定がなければアユムに会いに行ってしまう。喜んでほしいから、気合を入れて料理なんてしてしまう。
俺がなりたかったホストはそんなことしない。仕事にも客にも真摯でありたい。だからこんなではいけないのだ。
でも、なんでそうなってしまうのだろう。
雄飛の一連の発言が頭の中でパチパチと弾ける。
「俺、アユムのこと好きなのかな」
「は? 俺が知るかよ......」
呆れたような言葉を返されてしまう。そりゃそうだ。そんなもの本人、今回の場合は俺にしかわからない。
今は俺にもわからない、だが。
「ま、仕事に支障が出なきゃいいから」
「うん」
これは気を引き締めなくてはいけない。元よりこの仕事に向いていない自覚はあるから、その分努力で補わなくてはいけないのだ。
身支度を整え控室を出る。
俺、アユムのこと好きなのかな。
先ほど雄飛に投げつけた問いを今度は自分に向けてみる。考えてもよくわからなかった。
俺は恋というものをしたことがない。だから男が好きとか女が好きとかもよくわからない。性欲は人並みにあるが、視覚情報で興奮するというのがよくわからなかった。アユムと寝るまでは。
アユムのパソコンを勝手に見てしまった。悪いことだ。わかっている。
しかし普段から節約節約と言っておきながらパソコンを付けたまま仕事に行ってしまったアユムにも非はあるではないだろうか? ......ないか。
ともかく画面には体を売る仕事の求人が並んでいた。
最近はこういうのがよく広告に出るから、間違えて押してしまったのかもしれない。しかし今日からどこぞの風俗店に体験入店を始めると言っていた客を思い出した。ホストクラブの料金はお世辞にも安くない。その中で一番になろうとしてくれる子の中には体を売っている子が少なくなかった。
それゆえ、こういう業界には慣れている。自分も場合によってはあまりいい印象を持たれない仕事をしているので親しみを持っているくらいだった。
しかしアユムがそういう職業に就くところを想像すると、どうしようもない不快感が押し寄せてくる。もちろん職業に対しての嫌悪感ではない。
ただ、アユムが他の人に触れられ、あんな可愛い姿を見せているところを想像したらどろっとしたものが体の中でうごめく感覚があった。
あの姿を見るのは俺だけでいい。あの体に触るのも、俺だけで。
アユムが姉のようだと語るさゆちゃんにさえみっともなく嫉妬してしまうのに、体を売るなんて冗談じゃない。
そういえば、アユムは俺が誰と会っても誰と寝ても嫌そうな顔はしない。当然か。ホストとはそういうものだと、最初からわかっていたはずだ。
しかしおもしろくない。アユムも俺みたいに、とまではいかなくともヤキモチくらい焼いてほしい。俺ばかり好きみたいだ。
......俺ばかり好き?
いや、まだ俺がアユムを好きだと決まったわけではない。
「ああ、もう! わけわかんない!」
思わず一人の部屋で声に出して叫んだ。
「あのさ、お前の客のアユムくんって居るじゃん」
「うん。居るね」
「あー、その、あんまこういうこと聞くの良くないかもしれないけど、お前あの客が好きなのか?」
「はい?」
予想外の発言にスマホを弄っていた手が止まる。
「いや、なんかアユムくんにだけ他の客と態度違うなっていうか」
「男と女で態度同じ人の方が少なくない?」
「いや、そうなんだけど」
雄飛はしばらく口の中でもにょもにょ言ったあと、再び口を開いた。
「俺も一応ホストだからさ、営業については理解してるんだよ。でもだからこそ、零夜のアユムくんへの態度ってちょっと私情が入ってる感じがするというか」
「な、なにそれ」
声が震えたのは的外れな発言に傷ついたからではない。自覚があったところを突かれたからだ。
アユムと居ると、心地良い。仕事なんて関係なく、ずっと一緒に居たいと思う。
実際計算も駆け引きもなく、仕事の後や休日に予定がなければアユムに会いに行ってしまう。喜んでほしいから、気合を入れて料理なんてしてしまう。
俺がなりたかったホストはそんなことしない。仕事にも客にも真摯でありたい。だからこんなではいけないのだ。
でも、なんでそうなってしまうのだろう。
雄飛の一連の発言が頭の中でパチパチと弾ける。
「俺、アユムのこと好きなのかな」
「は? 俺が知るかよ......」
呆れたような言葉を返されてしまう。そりゃそうだ。そんなもの本人、今回の場合は俺にしかわからない。
今は俺にもわからない、だが。
「ま、仕事に支障が出なきゃいいから」
「うん」
これは気を引き締めなくてはいけない。元よりこの仕事に向いていない自覚はあるから、その分努力で補わなくてはいけないのだ。
身支度を整え控室を出る。
俺、アユムのこと好きなのかな。
先ほど雄飛に投げつけた問いを今度は自分に向けてみる。考えてもよくわからなかった。
俺は恋というものをしたことがない。だから男が好きとか女が好きとかもよくわからない。性欲は人並みにあるが、視覚情報で興奮するというのがよくわからなかった。アユムと寝るまでは。
アユムのパソコンを勝手に見てしまった。悪いことだ。わかっている。
しかし普段から節約節約と言っておきながらパソコンを付けたまま仕事に行ってしまったアユムにも非はあるではないだろうか? ......ないか。
ともかく画面には体を売る仕事の求人が並んでいた。
最近はこういうのがよく広告に出るから、間違えて押してしまったのかもしれない。しかし今日からどこぞの風俗店に体験入店を始めると言っていた客を思い出した。ホストクラブの料金はお世辞にも安くない。その中で一番になろうとしてくれる子の中には体を売っている子が少なくなかった。
それゆえ、こういう業界には慣れている。自分も場合によってはあまりいい印象を持たれない仕事をしているので親しみを持っているくらいだった。
しかしアユムがそういう職業に就くところを想像すると、どうしようもない不快感が押し寄せてくる。もちろん職業に対しての嫌悪感ではない。
ただ、アユムが他の人に触れられ、あんな可愛い姿を見せているところを想像したらどろっとしたものが体の中でうごめく感覚があった。
あの姿を見るのは俺だけでいい。あの体に触るのも、俺だけで。
アユムが姉のようだと語るさゆちゃんにさえみっともなく嫉妬してしまうのに、体を売るなんて冗談じゃない。
そういえば、アユムは俺が誰と会っても誰と寝ても嫌そうな顔はしない。当然か。ホストとはそういうものだと、最初からわかっていたはずだ。
しかしおもしろくない。アユムも俺みたいに、とまではいかなくともヤキモチくらい焼いてほしい。俺ばかり好きみたいだ。
......俺ばかり好き?
いや、まだ俺がアユムを好きだと決まったわけではない。
「ああ、もう! わけわかんない!」
思わず一人の部屋で声に出して叫んだ。
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