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SPEED 02 現実の終着
SPEED 02-06
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踊り迫るハーレーの排気音(エキゾーストノート)。
「はぐらかすなやオイ!狙いは何や!」
カルナの両手が零士の胸倉を掴む。
「敵と味方の区別が付く目は大事だぜカルナ」
零士がカルナの手を解くのと同時、輪郭崩す速度を持つハーレーが駐車場を突き刺した。
「アラ!男同士で随分と仲がいいじゃない」
カルナと零士の目前で転回(ブレーキターン)を果たした月華の上目遣いが、二人の繋がれた手を茶化した。
「アホ言え!」
「笑えない冗談だな」
互いの手を邪険に汚物然と振り払う二人。
「ヤッパ月華さんは凄かったでカル兄ぃ!見たことない次元を体感させてくれたわぁ!ん?アレ?革ジャンボロボロ、どうし……アッ!腹癒せでアレか?」
エルナは駐車場内に漂うパワーバランスを高揚から見逃し、矢継ぎ早に捲くし立てた。
「そんなんちゃうわボケ!」
「妹に八つ当たりはよくないぜ。じゃあな」
カルナの肩を叩き、零士は愛機(コルベット)のもとへ。
「オイ!ちょっ……」
が、零士は振り返ることなく右手を挙げるのみ。カルナは強引に場を治められた。
「今日はとっても素敵な時間を過ごせたわ。じゃあねエルナちゃん」
ハーレーを降りる月華も零士に続き愛機へ。
「今度また一緒に走ろうな」
「モチロン、楽しみにしてるわ」
振り返るウインク。エルナは感極まり両手をハシャがせた。
エルナから貰った微笑を自分に投影し、月華は隣に並ぶ零士の歩調に合わせた。
「例の連中……動き出したぜ」
月華は、視線を前方に残したままの零士の呟きに、典雅な微笑みを瞬時に置き去った。
「そう……やっぱりあの二人をマークしていて正解だった……で、Heavens Heartsの方は?」
「問題ない」
零士と月華は各々のコルベットに火を入れると、別れ(クラクション)と共に爆音のハーモニーを轟かせ、駐車場を捨て去った。
「しかしスゴかったなぁ……にしても、月華さんに乗っけてもうてから何か頭ん中にモヤが……ってオイ!聞いてるかカル兄ぃ?」
「ん!?何やウッサイのボケ。俺等も帰んぞ」
「ボケはないやろボケは。ヤッパ何かあったんやろ、あの男性(ひと)と」
「何もナイわ」
カルナは素っ気ない答え方をした。
だが、何でもない筈はなかった。数分前まで自が神経を疑う狂気の沙汰が目の前で展開されていたのだから。
恐れはなかった。ただ見たモノに真実味が見出せず、虚無感に苛まれていた。
だからこそカルナは、ソレすら目に通していないエルナに話すこと自体を憚った。
「置いてくぞ……」
カルナは男(ジャンキー)に付けられたZ1のキズを虚脱状態で見やると、二台(コルベット)が去った方向とは逆の帰路を取り、神妙にクラッチを繋いだ。
ー何があったんや……ー
自分とは正反対にある表情を読むに足る判断材料のないエルナは、釈然としないモノを胸にしながらも忙しなく駐車場を後にした。
静寂の戻る駐車場。静けさは場内に残るスクラップをも呑み込み、包み隠してゆく……
「はぐらかすなやオイ!狙いは何や!」
カルナの両手が零士の胸倉を掴む。
「敵と味方の区別が付く目は大事だぜカルナ」
零士がカルナの手を解くのと同時、輪郭崩す速度を持つハーレーが駐車場を突き刺した。
「アラ!男同士で随分と仲がいいじゃない」
カルナと零士の目前で転回(ブレーキターン)を果たした月華の上目遣いが、二人の繋がれた手を茶化した。
「アホ言え!」
「笑えない冗談だな」
互いの手を邪険に汚物然と振り払う二人。
「ヤッパ月華さんは凄かったでカル兄ぃ!見たことない次元を体感させてくれたわぁ!ん?アレ?革ジャンボロボロ、どうし……アッ!腹癒せでアレか?」
エルナは駐車場内に漂うパワーバランスを高揚から見逃し、矢継ぎ早に捲くし立てた。
「そんなんちゃうわボケ!」
「妹に八つ当たりはよくないぜ。じゃあな」
カルナの肩を叩き、零士は愛機(コルベット)のもとへ。
「オイ!ちょっ……」
が、零士は振り返ることなく右手を挙げるのみ。カルナは強引に場を治められた。
「今日はとっても素敵な時間を過ごせたわ。じゃあねエルナちゃん」
ハーレーを降りる月華も零士に続き愛機へ。
「今度また一緒に走ろうな」
「モチロン、楽しみにしてるわ」
振り返るウインク。エルナは感極まり両手をハシャがせた。
エルナから貰った微笑を自分に投影し、月華は隣に並ぶ零士の歩調に合わせた。
「例の連中……動き出したぜ」
月華は、視線を前方に残したままの零士の呟きに、典雅な微笑みを瞬時に置き去った。
「そう……やっぱりあの二人をマークしていて正解だった……で、Heavens Heartsの方は?」
「問題ない」
零士と月華は各々のコルベットに火を入れると、別れ(クラクション)と共に爆音のハーモニーを轟かせ、駐車場を捨て去った。
「しかしスゴかったなぁ……にしても、月華さんに乗っけてもうてから何か頭ん中にモヤが……ってオイ!聞いてるかカル兄ぃ?」
「ん!?何やウッサイのボケ。俺等も帰んぞ」
「ボケはないやろボケは。ヤッパ何かあったんやろ、あの男性(ひと)と」
「何もナイわ」
カルナは素っ気ない答え方をした。
だが、何でもない筈はなかった。数分前まで自が神経を疑う狂気の沙汰が目の前で展開されていたのだから。
恐れはなかった。ただ見たモノに真実味が見出せず、虚無感に苛まれていた。
だからこそカルナは、ソレすら目に通していないエルナに話すこと自体を憚った。
「置いてくぞ……」
カルナは男(ジャンキー)に付けられたZ1のキズを虚脱状態で見やると、二台(コルベット)が去った方向とは逆の帰路を取り、神妙にクラッチを繋いだ。
ー何があったんや……ー
自分とは正反対にある表情を読むに足る判断材料のないエルナは、釈然としないモノを胸にしながらも忙しなく駐車場を後にした。
静寂の戻る駐車場。静けさは場内に残るスクラップをも呑み込み、包み隠してゆく……
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