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SPEED 03 確証の破綻
SPEED 03-01
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「何やてぇっ!どういうこっちゃオヤジ!」
「落ち着きなさいカルナ。私ひとり消えれば全て丸く治まるんだ」
「でも悪いんはソイツ等で、父チャンが責任を取ることやないやんか」
「いや、人の上に立つ者としては失格だ……如何なる理由(ワケ)があろうと。だから身を退く行為自体が必要で当然なことなんだよエルナ」
二人の父は策略によって苦境を強いられた。にも拘らず、更なる苦境を背負い込もうとしていた。多くの人を守るが為に、自らの手で。
その強い意志は、二人を黙らせリビングルームに統治を呼んだ。が、
「私ほどの幸せ者はいないだろう、こんなに想ってくれる子供達を授かったのだから……それだけで何度でもやり直せる」渦中に呑まれた本人とは思えない台詞が、意思尊重に傾聴していた二人の指針にブレを導く。
「ま、待ちなさい二人とも!どこへ行くつもりなんだ」
「別にドコでもない……単コロ転(コロ)がしや」
「心配せんでええよ父チャン……二人とも単車乗んの上手やねんで」
振り返ることのない二人の低い返事(トーン)。
「あそこは治外法権なんだぞ。国際問題にまで発展すれば私の手には負えなくなり、企業(グループ)の人間全てが路頭に迷ってしまうんだぞ」
さすがの二人もソレには歩調を緩めた。が、
「心配せんでええ……峠を一回りするだけや……すぐ帰る」結局、二人は一度も振り返らずリビングの扉を開け放った。
「!?お!お前!?」
カルナはまともに開口できなかった。
目の前には、壁に寄り掛かる約一ヶ月前の男が。
「……零士……他人(ひと)ん家に勝手に上がり込んで何しとんねんお前は!」
対し零士は、カルナの怒声を身体ごと押し退けると、リビングの外から二人の父へ向け深々と頭を下げた。
{大変……御久しく」
「おお零士君!よく来てくれた。アイツから聞かされてはいたが……これ程まで立派に成長していたとは……」
「では後ほど改めて御挨拶に伺います」
再び頭を下げ、静かに扉を閉じる零士。
「……おい……説明せぇや、話が見えへんぞ」
「説明?どのことについてだ?」
「チッ!トボケやがって……まあええ、吐かせたい話(ヤマ)はクサル程あるが今は遊んどる暇がない。逃がしたる」
カルナは先刻のお返しとばかり零士を押し退け、エルナと共に玄関(エントランス)へと向かった。
「ヒマ人顔が急いでドコへ行く気だ?」
「お前には関係ないし教えたくもないわ」
「領事館までの道案内なら俺が買って出てやろうか?」
二人の歩みを射抜く零士の発声。
「テメエ……つくづく勘に触る奴(やっ)ちゃな。用が済んだらその何でも知ってるって風な顔色を変えたる。ココで待っとれ」
不意な来訪者を残し二人は戸外へ。
「落ち着きなさいカルナ。私ひとり消えれば全て丸く治まるんだ」
「でも悪いんはソイツ等で、父チャンが責任を取ることやないやんか」
「いや、人の上に立つ者としては失格だ……如何なる理由(ワケ)があろうと。だから身を退く行為自体が必要で当然なことなんだよエルナ」
二人の父は策略によって苦境を強いられた。にも拘らず、更なる苦境を背負い込もうとしていた。多くの人を守るが為に、自らの手で。
その強い意志は、二人を黙らせリビングルームに統治を呼んだ。が、
「私ほどの幸せ者はいないだろう、こんなに想ってくれる子供達を授かったのだから……それだけで何度でもやり直せる」渦中に呑まれた本人とは思えない台詞が、意思尊重に傾聴していた二人の指針にブレを導く。
「ま、待ちなさい二人とも!どこへ行くつもりなんだ」
「別にドコでもない……単コロ転(コロ)がしや」
「心配せんでええよ父チャン……二人とも単車乗んの上手やねんで」
振り返ることのない二人の低い返事(トーン)。
「あそこは治外法権なんだぞ。国際問題にまで発展すれば私の手には負えなくなり、企業(グループ)の人間全てが路頭に迷ってしまうんだぞ」
さすがの二人もソレには歩調を緩めた。が、
「心配せんでええ……峠を一回りするだけや……すぐ帰る」結局、二人は一度も振り返らずリビングの扉を開け放った。
「!?お!お前!?」
カルナはまともに開口できなかった。
目の前には、壁に寄り掛かる約一ヶ月前の男が。
「……零士……他人(ひと)ん家に勝手に上がり込んで何しとんねんお前は!」
対し零士は、カルナの怒声を身体ごと押し退けると、リビングの外から二人の父へ向け深々と頭を下げた。
{大変……御久しく」
「おお零士君!よく来てくれた。アイツから聞かされてはいたが……これ程まで立派に成長していたとは……」
「では後ほど改めて御挨拶に伺います」
再び頭を下げ、静かに扉を閉じる零士。
「……おい……説明せぇや、話が見えへんぞ」
「説明?どのことについてだ?」
「チッ!トボケやがって……まあええ、吐かせたい話(ヤマ)はクサル程あるが今は遊んどる暇がない。逃がしたる」
カルナは先刻のお返しとばかり零士を押し退け、エルナと共に玄関(エントランス)へと向かった。
「ヒマ人顔が急いでドコへ行く気だ?」
「お前には関係ないし教えたくもないわ」
「領事館までの道案内なら俺が買って出てやろうか?」
二人の歩みを射抜く零士の発声。
「テメエ……つくづく勘に触る奴(やっ)ちゃな。用が済んだらその何でも知ってるって風な顔色を変えたる。ココで待っとれ」
不意な来訪者を残し二人は戸外へ。
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