HEAVENS HEARTS

SPEED 04 平穏の驚駭

SPEED 04-07

「お前達が前後の見境を失した今回の一件、そしてこれから様々な災厄をこの国に招こうとしている首謀者」

「ソイツを炙り出す為に適合者を数人にまで絞り込み」

「そんな回りくどう調べんでも領事館に行きゃあ踏ん反り返っとんで、ソイツは」

「館（アソコ）に今居るのは首謀者ではなく実行犯、つまり手下よカル。一カ月後なら話は別だけど」

「俺は別に手下でも構わん。直接手を下したソイツ等からケジメ取んのが先決やから」

「取敢えず猪のような性格は後（のち）の為に取っておけ。相手は俺達のことを隅々にまで熟知している。ならば、こちらも……」

零士は、カルナの眼光に血気を見て取り、即、含みを持つ台詞（セリフ）で諌（いさ）めた。

「父チャンに何の恨みがあったんやろ？あんなことまでして……」

「恨みか……エルナ、人間という生き物は何かしらの問題に遭遇した時、受け取り方によってその後の人生が枝分かれするものなんだ。例えば、自分にクリアできない事柄を他人がいとも簡単にやって退けた時など顕著に表れ、後（のち）、四つのタイプに分かれる。ひとつは、腹に一物を抱えることなく心から称賛を送れるタイプ。ひとつは、できた相手とできない自分は違う人間なのだからと、思い込むことでプライドを傷付けないよう自分に噓を付き無関心を装うタイプ。そしてひとつは、できない自分の不甲斐なさや悔しさをバネに努力するタイプ。このタイプの特徴は、仮にその場で成功を納めなくともそこで培ったモノを用い、他の道で大成する点だな」

「で、最後に残るが問題の首謀者タイプね。他人（ひと）の成功を羨む心が元来大きい割に羨望を消化する受け皿が浅い性質保持者。皿から零（こぼ）れた羨望を妬みへと変化させ、最悪、自分以外の成功が認められなくなる現実破綻者。破壊を始めとする妨害工作で悦に入り、挙句、見せ付けられた成功を自（おの）が功績とするためなら横取りをも企んだりする。って感じね」

「そんなセコイ性格のせいでオヤジは追い込まれたんか……」

「ホンマに居（お）んの？そんなセコイ奴……」

「ああ、数え切れん程にな。ただ、実行に移す人間となると数は限られてくる」

「お陰で楽な絞り込みだったわ。オマケに、あなた達の御父様が製薬グループを取り仕切る立場になるのを待っていたかのような今回の薬品奪取のタイミング。しかも、手段は御父様の情に訴えた卑劣なヤリ方。それ等を統合すれば御父様のことをかなり熟知した人物、身近に居た人物となる。と」

「情に訴えるって何や？」

カルナが怪訝を発散した。