HEAVENS HEARTS

SPEED 04 平穏の驚駭

SPEED 04-11

「そうね。大金をつぎ込んで自（おの）が肉体を破壊するなんて愚の骨頂だわ。でもね、人間って生き物は弱いから負のエネルギーに引き寄せられてしまいがちなの。自分の居場所を突然に失ったり、心の傷の癒し方を知らなかったり……負を抱えてしまえば刹那の快楽や幸福感での昇華っであったとしても、延長線上に現実逃避が用意されているのなら、諸共と考える人間が居たっておかしくはないわ。手にしたモノが更なる負の方向に流れ陥る実だとわかっていたとしても」

「と言えど、最近の奴等は流行（はやり）で手を付けたり、周囲が打（や）っているから自分も打（や）らなければ仲間から疎外される、といった逆転した言い訳ばかりを横行させているがな」

「わからん……自分の個性を押し殺してまで群れたがる心境が……わからん」

不可解にして不快な感覚に歪む眉間。

「彼等だけを責める訳にはいかないんだけどね。国が管理し易いよう個性を消す教育を一人当たり十年以上も施してるんだから」

「そんな同一思考・迎合思考・疎外感につけ入れば、ヒット商品をデッチ上げるなんてことも可能な訳だ」

「わかったで零士さん！それも情報操作の一つや。人が群がれば口コミで情報が広がり、トドメにマスコミが煽るって構図とちゃう？」

得意満面に語りエルナ完全復活。

「そうだ。そしてその口コミを奴等は最大限（フル）に活用した。ドラッグがタダで手に入るとした内容で」

「タダぁ！？ドラッグの無料奉仕なんて聞いたことないでぇ。儲けたいんちゃうの？」

「何もわかってへんなぁお前は、タダでバラ撒くんは中毒にする期間だけや。中毒者（ジャンキー）にまで仕立て上げれば胴元（オヤ）は自然と動きをヤメよる、ドラッグに高値を付ける為に。それでも求め彷徨う連中は窃盗や強盗をしてでも金を作り、バカ売れ。採算は十分に取れるってのでどうや零士？」

「ああ、珍しく正解だ」

「ウ、ウソ……カル兄ぃに教えられた……」

エルナは、愕然と同居した。

「まあ商売（あきない）の基本やな。しっかし起伏の激しい奴（やっ）ちゃで……それはともかく、聞けば聞く程ムカツクな。オヤジの厚意を無下にするだけでは飽き足らず、己の育ってきた風景を苦しみながら見ている同胞を見捨て、自分達は他国を蝕み豪遊とはな」

「憤慨には早いぜカルナ。お前の神経を逆撫でする話（ネタ）はまだ序の口だ」