HEAVENS HEARTS

HI-ROCKS

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SPEED 04 平穏の驚駭

SPEED 04-16

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「現在(いま)までの経緯はこれでいいかしらゼロ?」

「そうだな」

「おっ!終了か?やっとこさ小難しい話から解放されんで」

「よう言うわ、イチバン乗っとったくせに」

「ムカツク奴をシバクには理由(イミ)が多い方がええからな。講釈オワリ!コレ外してくれや」

月華と零士が互いの顔を見合わせる。

「まだ外せないな。何度も言わせるな」

「それはコッチのセリフやろぉぅ……貴重な時間をかなり割いたってのによぉっ!」

「よく聞いてカル。ワンウェイ・チケットしか持たない者を魔窟には送り出せないのよ」

動きに乏しいカルナにあって眉が反応。

「片道切符か……言いたいこと言うてくれんな月華チャンは……魔窟は袈裟やけど?あの滅(ラグナ)ジャンキーの弱点を知った今、楽勝や」

「お前では無理だな。弱点(ウイークポイント)がわかったとて徐々に攻撃力の上がる奴を相手にどうやって心臓(ソコ)にまで辿り着く?もっとも、一発で心臓をエグれる自信があるんなら話は別だがな」

「そうや!すっかり忘れとった。上昇(アレ)は一体どういう種や?」

「どうやねんやろ?さっきまでのヤル気満々の態度……ドコ行ったんや?」

「お前は何も見てへんからノンキをカマせる」

「ソレを忘れとったんはドコの誰や言うてん」

「はぁぁぁいストップ!説明に時間が掛かり過ぎて疲れちゃった、一息入れましょうか?カルはいいわね、ずっと楽な態勢で」

「どこがや?誰が好き好んで」

と、その時、カルナの物言いに重ねるかのよう室外からドアがノックされた。

「どうぞ」

「お茶を御持ちしました」

室内に外気を持ち込んだその声の主は、月華の後ろを歩(つ)いているにも拘わらず、上半身の殆どをカルナ達に見せる巨体を誇っていた。
カルナとエルナは、大男の身体に不釣り合いな優しい眼差しに瞠目し、場や状況から記憶の糸を手繰らずとも懐かしさを直結させた。

「月影(つきかげ)のオッチャンやんけぇっ!」

「うっわぁ!月影チャン元気やったかぁ!」

発声は同時に、行動は気持を抑え切れなかったエルナが不自由な身のカルナを残し、月影と呼んだ大男に走り抱き付いた。

「エ、エルナ様……お……お茶が……」

月影と呼ばれた男は巨体に似合わぬトレイ上のティーカップを気遣い、慌てふためいた。

「久し振りやいうのにそんなん気にしてる場合ちゃうで月影チャン!しっかし昔とちっとも変わってへんなぁ」

穴が開く程に視線を上下させるエルナが、ブラックスーツを纏う月影の姿に見入った。

「エルナ様は見目麗しく」

「もう、零士さんと同じようなことを。そんなんじゃキューピットはオトされへんで」

「それは困りましたね」

ティーカップを手渡し笑い飛ばす月影。

「おや?カルナ様は手術をお受けに?」

「オモロイやん、御無沙汰の間に随分とオチャメになったみたいやん?ん、オッチャン何か小さなってへんか?大丈夫かカラダ?」

「私が小さく見えるのはカルナ様が立派に成長された証ですよ」

「図体だけだがな」

「ウッサイ!このバカ零士!」

「どうぞカルナ様、冷めないうちに召し上がればささくれた心も癒えますよ。月華様、零士様……例のモノは全てこの中に」

月影の持つジュラルミンケースが零士に。
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