HEAVENS HEARTS

HI-ROCKS

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SPEED 05 覚醒の光条

SPEED 05-11

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左半身への指令伝達直後、動きを制限されていた左手首が金属音を残し解き放たれた。
自由となった自が左腕を一点見詰めにするカルナ。が、突然我に返り、戒めを全て解かれた上肢により起座、先刻まで枷となっていた拘束具を凝視した。途端、
「何じゃコレェェェッ!」驚嘆の叫びがカルナの大口から噴き上がった。

「何?ナニ?ウッワァァァッスッゴッ!」

驚嘆につられエルナが覗き目にしたモノは、役目を果たせなくなった金属の残骸。屈強ぶりを提言していた枷が、髪の接触部を境として真っ二つとされた成れの果てだった。

「気に入ってもらえたか?俺の手品は」

「何ニヤケとんや!にしてもこの切り口……磨かれたような鏡面仕上げになっとる……」

啖呵を切るもののカルナの心根は急速に尻すぼみに。

「減った口数ついでにコレ持っててくれるか?」

どこから取り出してきたのか、零士は直径三十センチ級の鉄球を片手に、カルナの眼前へ突き出した。

「イミわからん、ついでにの意味が……種明かしもまだやのにそんな玉いらん。いらんちゅうてんねん、渡すなっちゅう!ね?ん!ナンや……このタマ!?」

無理矢理に手渡された鉄球(ソレ)は、とても片手で持ち堪えられる代物ではなく、両手を以て初めて可能となる高重量を備えていた。

「ソイツは通常鉄よりも密度が高く……どうでもいいか。ちょっと待ってろよ」

「お前は何でそんなエラソーや?」

零士は返し台詞を待たずベッド・ジェラルミンケース間を往復、洋刀の柄らしきを握る。

「種明かし前の見世物はまだ残ってるぜ」

言うや否や、零士は右手に握る柄(モノ)を左肩辺りに配置。柄の先からレーザー光のような青白く輝く二メートル程の刀身を出現させた。

「ちょっ……ソレ……チョット待てぇっ!ナニやらかそうと……」

得体の知れない物体に動悸を際どくするカルナ。間髪入れず青白い刀身を振り抜く零士。

「グッナラァァァッ!」

未だ下肢を拘束され迫る刀身を避けられないカルナは、驚異的な重量を誇る真球を顔前にすくい上げることで必死の防御(ガード)とした。
そんな高密度体(ガード)を相手に如何な抵抗をも示さず、凄まじき速度で刀身が水平に通り抜けたるは、ほぼ同時。

「ク……クソォッ!何の断わりもなく……」

「断わり?ウンザリなんだろ講釈は」

「何やその態度は?くだらん光(ハッタリ)でクソ重い玉……持ち上げさせやがって」

突っつくカルナは、不本意に開かされた両脚間に鉄球を降ろすべく、両腕を脱力させた。

「あっカル兄ぃ!アブナイ!」

「あん?何が?……ナ、ナァァァッ!?」

鈍い異音を漏らす鉄球。刀身が走り抜けたラインを境界線に、上部半分がカルナの傾けた角度に従いズレ始め、一つの球体物質が最終的には二つの半円体に転生、強烈な衝撃波を伴いベッドへとメリ込んだ。

「……コ……コッ……コワァァァッ!も、もうちょっとで足が潰れ……オマエッ!シバイたるから足枷(コレ)ハズセェエエッ!」

「OK」

首を縦に振ることを断固として譲らなかった零士が、初めて否定に立たずやけにあっさりと承諾側へと転んだ。が、柄を握る両手は青眼の構えに移行、カルナにとっておぞましき笑みを注ぐ。

「ウソやろ……そんなモンでオマエ……アホか!?オイッッッ!」
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