HEAVENS HEARTS

HI-ROCKS

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SPEED 06 傀儡の氷解

SPEED 06-03

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「んっ……はぁぁぁ……こんなボケェッ!ドヘタなドラテクでドリフトってかァッ!降りて来いやァッ」

車のサイドウインドーよ砕けよとばかり腹の底からぶちまけられた困憊。

「カル兄ぃ……この車ってさぁ……」

「あん?」

満月の明かりが溢れているとはいえ、パニック寸前だった二人には今の今まで車種の特定などできる筈もなかった。されど、今現在カルナとエルナの前に横たわる車(バリケード)は、二人にとって見覚えのある黒いコルベット・スティングレー。紛れもなく月華の愛機だった。

モーター音に伴い下がるサイドウインドー。

「ゲ、ゲ……ゲッ……カ……」

カルナはこの場に居る筈のない月華の姿を車内に確認し、抱えていた数多くの罵声を霧散していまった。

「ハ~イ!元気してたン。ん?ナニ鯉の口みたいにパクパクしてんのよ。エルはエルで鳩豆みたいな顔してるし」

先刻の出来事を架空然とした第一声。

「お前さぁ……何でそんな素?……俺等もうチョットでひき殺されるトコやったやん?」

「格別に麗しき今宵に満ちし天心の月」

「無視(シカト)かい!」

「シカト?あなた達の方こそ私との約束を反古にしてドコ行こうとしてたの?」

図星を指されグゥの音もでないカルナ。

「ねぇエル?」

呆気に取られ未だ口の利けないエルナを見透かすような月華の上目遣い。

「え?……えぇぇぇっと、あ、いや……アタシはヤメとこうやって言うたんやけど……カル兄ぃに脅迫されて仕方なく……」

「ヤッパリね」

「って!ウソォッ!アレ噓やで!何でお前アッサリ確信?」

「と、ところでさぁ何で月華姉ぇがココに?」

居心地の悪さから振られた新たなる話題。

「ゼロが言ったのよ。この件のあなた達に約束なんてあってないようなものだから必ず黙って襲撃に行くって。二人を捕まえるんなら先回りもいいが、このルートを遡れば退屈しないで済むぞともね。そしたら彼の言った通りZIとハーレーの排気音(エキゾーストノート)が近付いて来るじゃない?咄嗟にステアリングを切ってでも強引に止めたくもなっちゃうじゃない?」

「なっちゃうじゃない……可愛い顔して何エゲツないことウキウキ言うとんねん……」

「あ・り・が・と。でも結果は見ての通り問題なかったでしょ?あなた達の反射神経を信じてればこそよ」

「コッワァッ!まるっきり他人任せやんけ」

仕掛け人本人とは思えない楽観視ぶりに、カルナは今更ながら目を丸くした。
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