52 / 52
SPEED 06 傀儡の氷解
SPEED 06-03
しおりを挟む
「んっ……はぁぁぁ……こんなボケェッ!ドヘタなドラテクでドリフトってかァッ!降りて来いやァッ」
車のサイドウインドーよ砕けよとばかり腹の底からぶちまけられた困憊。
「カル兄ぃ……この車ってさぁ……」
「あん?」
満月の明かりが溢れているとはいえ、パニック寸前だった二人には今の今まで車種の特定などできる筈もなかった。されど、今現在カルナとエルナの前に横たわる車(バリケード)は、二人にとって見覚えのある黒いコルベット・スティングレー。紛れもなく月華の愛機だった。
モーター音に伴い下がるサイドウインドー。
「ゲ、ゲ……ゲッ……カ……」
カルナはこの場に居る筈のない月華の姿を車内に確認し、抱えていた数多くの罵声を霧散していまった。
「ハ~イ!元気してたン。ん?ナニ鯉の口みたいにパクパクしてんのよ。エルはエルで鳩豆みたいな顔してるし」
先刻の出来事を架空然とした第一声。
「お前さぁ……何でそんな素?……俺等もうチョットでひき殺されるトコやったやん?」
「格別に麗しき今宵に満ちし天心の月」
「無視(シカト)かい!」
「シカト?あなた達の方こそ私との約束を反古にしてドコ行こうとしてたの?」
図星を指されグゥの音もでないカルナ。
「ねぇエル?」
呆気に取られ未だ口の利けないエルナを見透かすような月華の上目遣い。
「え?……えぇぇぇっと、あ、いや……アタシはヤメとこうやって言うたんやけど……カル兄ぃに脅迫されて仕方なく……」
「ヤッパリね」
「って!ウソォッ!アレ噓やで!何でお前アッサリ確信?」
「と、ところでさぁ何で月華姉ぇがココに?」
居心地の悪さから振られた新たなる話題。
「ゼロが言ったのよ。この件のあなた達に約束なんてあってないようなものだから必ず黙って襲撃に行くって。二人を捕まえるんなら先回りもいいが、このルートを遡れば退屈しないで済むぞともね。そしたら彼の言った通りZIとハーレーの排気音(エキゾーストノート)が近付いて来るじゃない?咄嗟にステアリングを切ってでも強引に止めたくもなっちゃうじゃない?」
「なっちゃうじゃない……可愛い顔して何エゲツないことウキウキ言うとんねん……」
「あ・り・が・と。でも結果は見ての通り問題なかったでしょ?あなた達の反射神経を信じてればこそよ」
「コッワァッ!まるっきり他人任せやんけ」
仕掛け人本人とは思えない楽観視ぶりに、カルナは今更ながら目を丸くした。
車のサイドウインドーよ砕けよとばかり腹の底からぶちまけられた困憊。
「カル兄ぃ……この車ってさぁ……」
「あん?」
満月の明かりが溢れているとはいえ、パニック寸前だった二人には今の今まで車種の特定などできる筈もなかった。されど、今現在カルナとエルナの前に横たわる車(バリケード)は、二人にとって見覚えのある黒いコルベット・スティングレー。紛れもなく月華の愛機だった。
モーター音に伴い下がるサイドウインドー。
「ゲ、ゲ……ゲッ……カ……」
カルナはこの場に居る筈のない月華の姿を車内に確認し、抱えていた数多くの罵声を霧散していまった。
「ハ~イ!元気してたン。ん?ナニ鯉の口みたいにパクパクしてんのよ。エルはエルで鳩豆みたいな顔してるし」
先刻の出来事を架空然とした第一声。
「お前さぁ……何でそんな素?……俺等もうチョットでひき殺されるトコやったやん?」
「格別に麗しき今宵に満ちし天心の月」
「無視(シカト)かい!」
「シカト?あなた達の方こそ私との約束を反古にしてドコ行こうとしてたの?」
図星を指されグゥの音もでないカルナ。
「ねぇエル?」
呆気に取られ未だ口の利けないエルナを見透かすような月華の上目遣い。
「え?……えぇぇぇっと、あ、いや……アタシはヤメとこうやって言うたんやけど……カル兄ぃに脅迫されて仕方なく……」
「ヤッパリね」
「って!ウソォッ!アレ噓やで!何でお前アッサリ確信?」
「と、ところでさぁ何で月華姉ぇがココに?」
居心地の悪さから振られた新たなる話題。
「ゼロが言ったのよ。この件のあなた達に約束なんてあってないようなものだから必ず黙って襲撃に行くって。二人を捕まえるんなら先回りもいいが、このルートを遡れば退屈しないで済むぞともね。そしたら彼の言った通りZIとハーレーの排気音(エキゾーストノート)が近付いて来るじゃない?咄嗟にステアリングを切ってでも強引に止めたくもなっちゃうじゃない?」
「なっちゃうじゃない……可愛い顔して何エゲツないことウキウキ言うとんねん……」
「あ・り・が・と。でも結果は見ての通り問題なかったでしょ?あなた達の反射神経を信じてればこそよ」
「コッワァッ!まるっきり他人任せやんけ」
仕掛け人本人とは思えない楽観視ぶりに、カルナは今更ながら目を丸くした。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?
くまの香
ファンタジー
いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる