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SPEED 06 傀儡の氷解
SPEED 06-02
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移ろふ月が最も煌々と輝く満月の夜をランデブー走行で疾走するZIとハーレー。
「一人前(イッチョマエ)によう喰らい付いてくるやんけ!」
「カル兄ぃのウデがオチたんちゃうかぁ!」
―しかし驚きやな……月影のオッチャン達が改造(イジ)ったZI(コイツ)の試乗(シェイクダウン)が一ヶ月前。あん時は変わり目を味わったんやから当然の如くビックリさせられた……やが!コイツはそれだけでオワリやなかった、現在(いま)に比べたらあん時が色褪せる。心臓(エンジン)の応答性(レスポンス)向上を筆頭に、車体の全てが走行距離を重ねる度に高次元で連結(リンク)されるように感じる……底ナシってかぁっ!あのオッチャンとんだ食わせ者(モン)やで―
ニヤケる眼前に迫る鋭角な左コーナー。
「エルナ!突っ込み勝負や!」
「吠えときながらビビって先にブレーキ握んのちゃうか!」
始まった二人の意地の張り合いは、互いの限界を限界でなくす結果をもたらし、ブレーキングポイントを極限にまで奥に取る技術を成形。二台は車体を左に傾ける最終手続きを踏み、コーナーへのアプローチを完成させた。
―ん?対向車……まあ、この次元でも今のエルナやったら中央線(センター)を割ることもないやろ―
自分達の進む方向から路面を照らすまだ見ぬヘッドライトに二人は気付いていたが、日常は懸念材料には成り得なかった。しかし、
「なッ!何やとォォォッ!」二台の前に現われたるは、
「ウッ!ウッソォォォッ!」四輪を全てスライドさせ両車線を目一杯に使う姿態(バリケード)だった。
「クッソォッ!こんなトコでトチってドリフトってかァッ!?」
「避けるラインが一本もないやんかァッ!」
刹那を跨ぐ間にも、二人の目に飛び込んで来る映像インパクトは大きくなるも、カルナとエルナに残されたる手段は車速を落とすしかなく、手段(フルブレーキング)は、コーナーアプローチの際に傾けていた車体の前後タイヤを容易に滑らす結末を導き、
「カッコ悪う!急いどんのにコッチまでのんびりドリフトさせられてもうた!」周辺に轟く悲鳴に近いスキル音を計八本とした。
「単車のドリフトは難しい(ムズイ)ねんでェッ!」
白煙を撒き散らす四本のタイヤを目前に不安定な車体で最大のバランスを保つ二機は、同アングルにて互いに接触寸前の間隔を維持するも、不毛な態勢(ドリフト)を続けるしかなかった。
「止まれクソッタレェッ!」
「コッチ来んなァッ!アッチ行けェッ!」
コーナー出口から車が現われて約四秒、その短時間を支配していた時代錯誤のVTR映像(スローモーション)に突如、二人の叫びを聞き届けたかの如し停止機能が働いた。車のドアとの間隔その差数センチという際で。
身の縮まる一刻。けたましさを包み込む深夜独特の静けさ。
「一人前(イッチョマエ)によう喰らい付いてくるやんけ!」
「カル兄ぃのウデがオチたんちゃうかぁ!」
―しかし驚きやな……月影のオッチャン達が改造(イジ)ったZI(コイツ)の試乗(シェイクダウン)が一ヶ月前。あん時は変わり目を味わったんやから当然の如くビックリさせられた……やが!コイツはそれだけでオワリやなかった、現在(いま)に比べたらあん時が色褪せる。心臓(エンジン)の応答性(レスポンス)向上を筆頭に、車体の全てが走行距離を重ねる度に高次元で連結(リンク)されるように感じる……底ナシってかぁっ!あのオッチャンとんだ食わせ者(モン)やで―
ニヤケる眼前に迫る鋭角な左コーナー。
「エルナ!突っ込み勝負や!」
「吠えときながらビビって先にブレーキ握んのちゃうか!」
始まった二人の意地の張り合いは、互いの限界を限界でなくす結果をもたらし、ブレーキングポイントを極限にまで奥に取る技術を成形。二台は車体を左に傾ける最終手続きを踏み、コーナーへのアプローチを完成させた。
―ん?対向車……まあ、この次元でも今のエルナやったら中央線(センター)を割ることもないやろ―
自分達の進む方向から路面を照らすまだ見ぬヘッドライトに二人は気付いていたが、日常は懸念材料には成り得なかった。しかし、
「なッ!何やとォォォッ!」二台の前に現われたるは、
「ウッ!ウッソォォォッ!」四輪を全てスライドさせ両車線を目一杯に使う姿態(バリケード)だった。
「クッソォッ!こんなトコでトチってドリフトってかァッ!?」
「避けるラインが一本もないやんかァッ!」
刹那を跨ぐ間にも、二人の目に飛び込んで来る映像インパクトは大きくなるも、カルナとエルナに残されたる手段は車速を落とすしかなく、手段(フルブレーキング)は、コーナーアプローチの際に傾けていた車体の前後タイヤを容易に滑らす結末を導き、
「カッコ悪う!急いどんのにコッチまでのんびりドリフトさせられてもうた!」周辺に轟く悲鳴に近いスキル音を計八本とした。
「単車のドリフトは難しい(ムズイ)ねんでェッ!」
白煙を撒き散らす四本のタイヤを目前に不安定な車体で最大のバランスを保つ二機は、同アングルにて互いに接触寸前の間隔を維持するも、不毛な態勢(ドリフト)を続けるしかなかった。
「止まれクソッタレェッ!」
「コッチ来んなァッ!アッチ行けェッ!」
コーナー出口から車が現われて約四秒、その短時間を支配していた時代錯誤のVTR映像(スローモーション)に突如、二人の叫びを聞き届けたかの如し停止機能が働いた。車のドアとの間隔その差数センチという際で。
身の縮まる一刻。けたましさを包み込む深夜独特の静けさ。
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