HEAVENS HEARTS

SPEED 06 傀儡の氷解

SPEED 06-01

―ほんじゃ行こか―

火が入り躍動を始めるZIのエンジン。

「ええんかな？月華姉ぇ達に黙ったままで」

「ホンダラ月華ん家（ち）に行ったらええやんけ。そらアイツ等にはHHCの恩がある……けど、これ以上の借りを作る訳にはいかんのや。だからこそ俺はこの一ヶ月間、死に物狂いでHHCをモノにしてきた。自分ひとりの手だけでも、領事館（あそこ）の連中に欲を掻くとどうなるか知らしめられるようになる為に」

「それはアタシも一緒や。でも月華姉ぇとの約束が……かと言って約束守ってたらカル兄ぃに先越されてまうし……」

エルナは思案に暮れた。が、思慮を断ち切るかのようなZI（カルナ）の乾いた排気音（エキゾーストノート）が自宅の格納庫（ハンガー）を支配。

「ッサイナ！もう……カル兄ぃにええトコ持ってかれたないよなぁ……決めた！アタシも速攻でケジメ取りに行く！」

野太い排気音も決意表明に合わせ参会。

「全開（フルスロットル）や！覚悟せぇや」

格納庫内でZIの旋律（メロディー）とハーレーの鼓動（リズム）が渾然、一つのウネリとなって増長。

「吠面の好かれんのはドッチかなぁ！」

調和（ユニゾン）のクラッチミートが噴き上がる白煙を置き去りに、カルナとエルナは猛然と車道へ。