異世界では巨大な鳥の首に跨りレースをするようです

泣村健汰

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第七章 C級フレイク杯

第七章 第三幕

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「バラクア、8番リング直後の横からの風、かなり強いわ。向かい風じゃないにしろ、回避した方がいい」
「分かった、任せろ!」

 そう告げると、バラクアは8番リング直後の人口風を上方向にさらりとかわしてみせた。

「やるじゃない!」

 ルティカが称賛の声を上げる。

「この位、余裕だ。次は?」
「次はリングが3つ続いてるわ。この周は真正面から潜ってくれていい」
「この周は? どういう事だ?」
「雲の動きで分かったの。早ければ次の周、遅くても四周目に入るまでに、会場に風が吹き始めるわ。それも、結構強めの」

 ルティカの言葉に、バラクアは総毛立つのを感じた。

「雲の動きで? 本当か?」
「多分ね。風が吹いたらこっちのもんだけど、あんまり差をつけられたらヤバイかもしれない。だからそれまではバラクアに任せるわ。出来るだけ順位を上げて欲しい。私は、風と状況を読む事に専念するわ」
「了解した」

 13番リングまでは、人口風力装置は無い。だから技術的な事はバラクアに任せ、ルティカは再び前方のグループへと目をやった。
 8番リング直後の人口風を上手く捌けた影響か、先程よりも集団との差は縮まっている。
 一群になっていたグループは、先頭の3頭と、中盤の6頭に分裂し、その差はジリジリと開き始めていた。その分、中盤グループにルティカ達は近づいているのだから、先頭グループとの差が開いた訳では無いと、大まかに概算をはじき出す。
 先頭集団は、現在16番リングを潜り終えたところだ。
 ベートとレベのコンビは、先頭集団の真ん中、二位に位置付けていた。

「おいルティカ」

 バラクアの声に、意識を手元に戻す。

「13番リング後の、下に吹く向かい風、今はどの位だ?」

 再び前方に目を移す。中盤集団が今正にその人口風に差し掛かった所で、強風の為か皆一様に、一度下に吹き飛ばされている形になっている。

「ん~、かなり強いわね。9ってところかしら?」
「それは強いな、飛ばされるわけだ」

 この『9』と言う数字は、ルティカとバラクアの間だけで通じる記号の様なものだ。
 レース場に設置された人口風力装置は、風向きは変わらないが、風力は違う。トップの選手が一周、つまり20番リングを通過した瞬間にリセットされ、風の強さが変わるのだ。その為に、例え自然風が全く無い状況だったとしても、鴻鵠士には風読力が欠かせない必須項目となっている。
 何度も何度も、大量の風力装置を相手に大立ち回りを繰り返した事で、ルティカは自慢にしていた風読みの力に、さらに磨きをかけていた。風力装置と、そこから噴き出される風を少し見ただけで、瞬時に風の強さの度合いまで分かるようになったのだ。
 そこでバラクアが、人口風の出す風の強さの度合いを10段階に分ける事を提案した。
 それからは、10段階の風の強さが感覚として瞬時に判断出来るまで、根気良く風を読み続けた。そしてそれを、バラクアとの共通認識とし、3の風ならこの程度、7の風ならこの程度と、ルティカの感覚を、今まで伝わらなかったあやふやな言葉での指示では無く、数値としてバラクアに伝える事が可能となったのだ。そんな事を繰り返した結果、今ではルティカは、自然風だろうが人口風だろうが、吹く風の強さを正確に数値で測れるようにまでなっていた。
 これはベテランのA級、S級の選手ならばともかく、まだ一年目の新人鴻鵠士であるルティカに、本来出来る芸当では無いのだ。風読みに対する、ずば抜けた才が有ったと言わざるを得ない。
 バラクアはレベル3に位置する、三連続の9番、10番、11番のリングを次々と通過し、現在はレベル5の12番リングを目指して上昇している最中だ。

「逆に、13番後をするっと抜けられたら、かなり差が縮まるわね」

 中盤集団はみな強烈な人口風に流され、13番リングのすぐ下にある14番リングよりも、もっと下に飛ばされてしまっていた。再び上昇してリングを潜るため、かなりのタイムロスだろう。集団で飛んでいただけに、他の選手が飛ばされてしまうのを見ていても、対応する事が出来ないようであった。
 12番リングにさしかかった時、バラクアはルティカに呟いた。

「強さは9なんだろ? 試してみたい事があるんだがいいか?」
「いいけど、どうする気?」
「全力で乗ってみる!」
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