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第八章 決着
第八章 第六幕
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「バラクア、2番リングの前にある人口風は、今はかなり強いわ。8ってところね。向かい風だから、バランス崩さないようにして。逆にその後にある、5番リング後の風は弱いわ。3しか無いわね。減速が効かないから飛び出し過ぎないようにして」
ルティカは1番リングを潜るよりも先に、5番リングまでに設置された風力装置の情報をバラクアに全て伝えた。
「任せろ! 自然風の方は頼んだぞ!」
即座にバラクアから、こちらの意図を汲んだ力強い応答が返ってくる。いつもよりも特に頼もしく感じるバラクアの言葉が、ルティカの胸の内を強く揺さぶる。
不覚にも緩みそうになる涙腺から顔を覗かせる雫を、気合で無理矢理に引っ込めた。だが、そのツンとした鼻の奥の感覚が、バラクアと共に過ごしてきた今までの鴻鵠士人生を、ルティカの脳裏に思い起こさせた。
思えばルティカは、いつもバラクアに助けられてばかりだった。
そう、もしもバラクアが居なければ、ルティカは未だに悲しみの淵に身を窶したまま、自室の隅に身を潜めてめそめそと泣いていたかもしれないのだから。
――ありがとね、バラクア……。
だから、言葉に出すのは恥ずかし過ぎるから、バラクアの頭頂部に軽く手を触れ、心の内だけで、そんな謝辞をそっと手向けた。そして再び、ルティカの視線は前方を飛ぶベート達へと移る。
6番リングに差し掛かる手前で、レベは先程パストを食らわされた6番選手をさらりと抜き去った。
周回遅れとなった6番選手は、この時点で失格だ。
だがレベは、失格の決まった6番選手の前に立ちはだかると、まるでさっきのお返しだとでも言うように、6番選手にパストをお見舞いした。
6番選手はレベの起こした気流の乱れに両翼を取られ、そのまま会場の端へと吹き飛ばされていった。
足掻きながら飛ばされていく6番選手を見つめるベートの口元が、笑みの形に歪む。その挑発的な態度に、心の内がより燃え上がるのをルティカは感じた。
――へぇ~、ボンボン故の、完璧主義ってか?
確かに、スタート直後に攻撃を食らったルティカも、6番選手への印象は最悪だった。だからベートの感情も理解出来なくは無い。だが、今はレースの終盤であり、自分と鎬を削っている状況だ……。
――そんな状況でよ、態々減速してまで、周回遅れの選手にパストを食らわせようなんて……。
沸騰しそうな血液に水をかけるように、誰にも聞こえないであろう空中で、悪態を敢えて声に出す。
「余裕ぶっかましてんの? それとも、何? 私達なめられてるのかな? ねぇ、バラクア……」
無理矢理に貼り付けた満面の笑顔は、見た者を恐怖に陥れる事受けあいであろう。
バラクアは先程のルティカの指示を見事に取り入れ、5番リングをサラリと潜り抜けた。先を行くベート達は、6番選手に気を回した所為か
、未だ7番リングと8番リングの間を飛翔している。
二頭の差は、リング2つ分にまで縮まっていた。
「今に見てなさいよベート! その性格が命取りだって事、思い知らせてやるわ!!」
ルティカは貼り付けていた笑顔を解き、眉を吊り上げて高らかに叫んだ。
――お前がすぐ熱くなるのも、いつか命取りになりそうだがな。
相棒の逆鱗に触れる事はせず、バラクアは心の内だけで一人言ちた。
ルティカは1番リングを潜るよりも先に、5番リングまでに設置された風力装置の情報をバラクアに全て伝えた。
「任せろ! 自然風の方は頼んだぞ!」
即座にバラクアから、こちらの意図を汲んだ力強い応答が返ってくる。いつもよりも特に頼もしく感じるバラクアの言葉が、ルティカの胸の内を強く揺さぶる。
不覚にも緩みそうになる涙腺から顔を覗かせる雫を、気合で無理矢理に引っ込めた。だが、そのツンとした鼻の奥の感覚が、バラクアと共に過ごしてきた今までの鴻鵠士人生を、ルティカの脳裏に思い起こさせた。
思えばルティカは、いつもバラクアに助けられてばかりだった。
そう、もしもバラクアが居なければ、ルティカは未だに悲しみの淵に身を窶したまま、自室の隅に身を潜めてめそめそと泣いていたかもしれないのだから。
――ありがとね、バラクア……。
だから、言葉に出すのは恥ずかし過ぎるから、バラクアの頭頂部に軽く手を触れ、心の内だけで、そんな謝辞をそっと手向けた。そして再び、ルティカの視線は前方を飛ぶベート達へと移る。
6番リングに差し掛かる手前で、レベは先程パストを食らわされた6番選手をさらりと抜き去った。
周回遅れとなった6番選手は、この時点で失格だ。
だがレベは、失格の決まった6番選手の前に立ちはだかると、まるでさっきのお返しだとでも言うように、6番選手にパストをお見舞いした。
6番選手はレベの起こした気流の乱れに両翼を取られ、そのまま会場の端へと吹き飛ばされていった。
足掻きながら飛ばされていく6番選手を見つめるベートの口元が、笑みの形に歪む。その挑発的な態度に、心の内がより燃え上がるのをルティカは感じた。
――へぇ~、ボンボン故の、完璧主義ってか?
確かに、スタート直後に攻撃を食らったルティカも、6番選手への印象は最悪だった。だからベートの感情も理解出来なくは無い。だが、今はレースの終盤であり、自分と鎬を削っている状況だ……。
――そんな状況でよ、態々減速してまで、周回遅れの選手にパストを食らわせようなんて……。
沸騰しそうな血液に水をかけるように、誰にも聞こえないであろう空中で、悪態を敢えて声に出す。
「余裕ぶっかましてんの? それとも、何? 私達なめられてるのかな? ねぇ、バラクア……」
無理矢理に貼り付けた満面の笑顔は、見た者を恐怖に陥れる事受けあいであろう。
バラクアは先程のルティカの指示を見事に取り入れ、5番リングをサラリと潜り抜けた。先を行くベート達は、6番選手に気を回した所為か
、未だ7番リングと8番リングの間を飛翔している。
二頭の差は、リング2つ分にまで縮まっていた。
「今に見てなさいよベート! その性格が命取りだって事、思い知らせてやるわ!!」
ルティカは貼り付けていた笑顔を解き、眉を吊り上げて高らかに叫んだ。
――お前がすぐ熱くなるのも、いつか命取りになりそうだがな。
相棒の逆鱗に触れる事はせず、バラクアは心の内だけで一人言ちた。
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