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約束
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パロミデルはとんでもないことを企てていた。
圷の話によれば、ルガイドは屋敷に籠ってずっと研究に没頭していたらしい。
それがパロミデルを大魔王にする魔法薬を作ることだった。
今、パロミデルがルガイドの屋敷に入っていったと言うことは、その薬が完成したのだろうと言った。
「なんてことを……」
国がこんな状況になっても平然としていた理由はこれだったのか。
自分はいずれ大魔王になる。そうなれば穢れも何も関係ない。どの道国民は殺される運命だったと、パロミデルだけは知っていたんだ。
「パロミデルがもし本当に大魔王になれば、お前たちだって危機に立たされるだろう。なぜそんな風に笑って言える?」
「そりゃ、約束しているからさ」
「何を?」
「パロミデル様が大魔王になった暁には、俺たちにもそのパワーを与えてくれるってな」
自分達にグレアを放った男の言うことを信じているのか? なんとも哀れだ。
俺からはこれ以上話しても無駄だと思ったが、ジェネシスさんが口を開いた。
「二人とも。あの団長が本当に約束を守る人ならば、お前たちにグレアを放ったりしない」
圷と桐生の顔が青ざめた。
「だって……本当にそう言ったんだ。聖女では穢れを浄化できないって情報を仕入れてきたパロミデル様が、『それならば大魔王になってでも生き延びてやる。そしたらお前たちを遣いの者にしてやる』って」
やはり、ジェネシスさんの予想が当たっていた。会合には出ずとも情報を流してくれる人はいるのだ。そして俺は邪魔だから追放した。
「ジェネシスさん、とにかく急いで行きましょう」
こいつらのお蔭でパロミデルの思惑を知ることはできた。
本当にルガイドが大魔王の魔法薬を完成させていれば大変な事態になる。
遣い獣の白い鳥の背中に乗りこもうとした時、ジェネシスさんに腕を掴まれた。
「どうしたんですか?」
「Lien、これだけ約束してくれ。絶対に一人で解決しようとしないで欲しい」
「大丈夫ですよ。俺が助けなければデミゴットになった意味がありません。なんとしてでもパロミデルを倒して見せます!」
「そうではない! Lien、俺の目を見て?」
ジェネシスさんとまともに視線を合わせると、興奮しすぎていた自分に歯止めがかかった。
「君は一人じゃない。俺も付いている。サミュエルや、ジャックスさんもいる。この意味が分かるかい?」
「俺は今まで助けられてばかりいました。だから今度は俺がみんなを救いたいんです! この気持ちが間違っているとでも?」
ジェネシスさんは寂しそうな表情を見せた。
「どんなに強くても、一人で戦ってはいけない。騎士団長の俺も一人で戦うことはない。仲間がいるからだ。仲間を信じる者こそ、本当の強さを手に入れられるんだよ。そして君は半分人間で、そして俺の恋人だ。君は一人じゃない。約束だ。これが全て解決したら、二人だけの時間を作ると」
手を取り、甲にキスを落とす。
「ジェネシスさん……」
俺は一人で立ち向かおうとしていた。祈るだけでどんな困難にも勝てる。みんなを危ない目に合わせたくないし、何より自分の手でパロミデルを倒したかった。
ジェネシスさんの強さは一人のものではないと言う。信頼出来る仲間がいるから、戦う勇気が出るのだと。
だから俺にも仲間を信じて欲しいと。
「ジェネシスさん、間違いに気付かせてくれて、ありがとうございます。俺と共に戦ってください」
「勿論だよ。Lien」
手を握りお互いを高め合う。
「よし! 行こう!!」
真実はこの目で見るまで分からない。その時の最善を尽くすのみだ。
「待ってくれ!」と力なく叫ぶ二人を無視して、ルガイドの屋敷へと急いだ。
屋敷の外から、様子を伺ってくれているジャックスさんと落ち合う。
パロミデルたちの計画を簡潔に説明すると、ジャックスさんは俺たちと一緒に、他の騎士団員は街まで移動し、巡回中のヴァシリカの騎士団員に状況を伝えるよう指示した。
ルガイドはきっと俺が召喚されたあの部屋にいるだろう。二階から暗黒の空気が漂っている。
緩いカーブを描いた階段を駆け上がると、廊下に並ぶドアの中から迷わず一つのドアノブを握った。
『行こう!』
三人と目配せで合図し、そのドアを開け放った。
久しぶりに見たルガイドは特に変わり無い様子であった。そしてその隣にはマウルもいる。
三人で虎視眈々とこの計画を練っていたのだろう。
「誰だ!?」
招かざる客の登場にオーバーに驚いたルガイド。俺の姿にデミゴットだとすぐに分かったようだ。
そして初めて見るジェネシスさんに警戒している様子を見せた。
「裏切り者のジャックスめ! 部外者を入れやがって、無事でここから出られると思うなよ!!」
パロミデルが怒りのグレアをジャックスさんに放つ。
「Stop!!」
それをジェネシスさんが跳ね返した。
「何度も同じ手が通用すると思うな!! パロミデル!!」
初めて自分のグレアが効かなかったパロミデルは急に焦り始めた。
今のでジェネシスさんのDom性の方が強いと証明されてしまった。
パロミデルはルガイドの胸ぐらを掴み、「早く例のものを出せ!!」と怒鳴っている。
さっき圷から聞いた魔法薬なら、飲む前に止めなければいけない。
これが最後の戦いになると、誰もが息を呑んだ。
圷の話によれば、ルガイドは屋敷に籠ってずっと研究に没頭していたらしい。
それがパロミデルを大魔王にする魔法薬を作ることだった。
今、パロミデルがルガイドの屋敷に入っていったと言うことは、その薬が完成したのだろうと言った。
「なんてことを……」
国がこんな状況になっても平然としていた理由はこれだったのか。
自分はいずれ大魔王になる。そうなれば穢れも何も関係ない。どの道国民は殺される運命だったと、パロミデルだけは知っていたんだ。
「パロミデルがもし本当に大魔王になれば、お前たちだって危機に立たされるだろう。なぜそんな風に笑って言える?」
「そりゃ、約束しているからさ」
「何を?」
「パロミデル様が大魔王になった暁には、俺たちにもそのパワーを与えてくれるってな」
自分達にグレアを放った男の言うことを信じているのか? なんとも哀れだ。
俺からはこれ以上話しても無駄だと思ったが、ジェネシスさんが口を開いた。
「二人とも。あの団長が本当に約束を守る人ならば、お前たちにグレアを放ったりしない」
圷と桐生の顔が青ざめた。
「だって……本当にそう言ったんだ。聖女では穢れを浄化できないって情報を仕入れてきたパロミデル様が、『それならば大魔王になってでも生き延びてやる。そしたらお前たちを遣いの者にしてやる』って」
やはり、ジェネシスさんの予想が当たっていた。会合には出ずとも情報を流してくれる人はいるのだ。そして俺は邪魔だから追放した。
「ジェネシスさん、とにかく急いで行きましょう」
こいつらのお蔭でパロミデルの思惑を知ることはできた。
本当にルガイドが大魔王の魔法薬を完成させていれば大変な事態になる。
遣い獣の白い鳥の背中に乗りこもうとした時、ジェネシスさんに腕を掴まれた。
「どうしたんですか?」
「Lien、これだけ約束してくれ。絶対に一人で解決しようとしないで欲しい」
「大丈夫ですよ。俺が助けなければデミゴットになった意味がありません。なんとしてでもパロミデルを倒して見せます!」
「そうではない! Lien、俺の目を見て?」
ジェネシスさんとまともに視線を合わせると、興奮しすぎていた自分に歯止めがかかった。
「君は一人じゃない。俺も付いている。サミュエルや、ジャックスさんもいる。この意味が分かるかい?」
「俺は今まで助けられてばかりいました。だから今度は俺がみんなを救いたいんです! この気持ちが間違っているとでも?」
ジェネシスさんは寂しそうな表情を見せた。
「どんなに強くても、一人で戦ってはいけない。騎士団長の俺も一人で戦うことはない。仲間がいるからだ。仲間を信じる者こそ、本当の強さを手に入れられるんだよ。そして君は半分人間で、そして俺の恋人だ。君は一人じゃない。約束だ。これが全て解決したら、二人だけの時間を作ると」
手を取り、甲にキスを落とす。
「ジェネシスさん……」
俺は一人で立ち向かおうとしていた。祈るだけでどんな困難にも勝てる。みんなを危ない目に合わせたくないし、何より自分の手でパロミデルを倒したかった。
ジェネシスさんの強さは一人のものではないと言う。信頼出来る仲間がいるから、戦う勇気が出るのだと。
だから俺にも仲間を信じて欲しいと。
「ジェネシスさん、間違いに気付かせてくれて、ありがとうございます。俺と共に戦ってください」
「勿論だよ。Lien」
手を握りお互いを高め合う。
「よし! 行こう!!」
真実はこの目で見るまで分からない。その時の最善を尽くすのみだ。
「待ってくれ!」と力なく叫ぶ二人を無視して、ルガイドの屋敷へと急いだ。
屋敷の外から、様子を伺ってくれているジャックスさんと落ち合う。
パロミデルたちの計画を簡潔に説明すると、ジャックスさんは俺たちと一緒に、他の騎士団員は街まで移動し、巡回中のヴァシリカの騎士団員に状況を伝えるよう指示した。
ルガイドはきっと俺が召喚されたあの部屋にいるだろう。二階から暗黒の空気が漂っている。
緩いカーブを描いた階段を駆け上がると、廊下に並ぶドアの中から迷わず一つのドアノブを握った。
『行こう!』
三人と目配せで合図し、そのドアを開け放った。
久しぶりに見たルガイドは特に変わり無い様子であった。そしてその隣にはマウルもいる。
三人で虎視眈々とこの計画を練っていたのだろう。
「誰だ!?」
招かざる客の登場にオーバーに驚いたルガイド。俺の姿にデミゴットだとすぐに分かったようだ。
そして初めて見るジェネシスさんに警戒している様子を見せた。
「裏切り者のジャックスめ! 部外者を入れやがって、無事でここから出られると思うなよ!!」
パロミデルが怒りのグレアをジャックスさんに放つ。
「Stop!!」
それをジェネシスさんが跳ね返した。
「何度も同じ手が通用すると思うな!! パロミデル!!」
初めて自分のグレアが効かなかったパロミデルは急に焦り始めた。
今のでジェネシスさんのDom性の方が強いと証明されてしまった。
パロミデルはルガイドの胸ぐらを掴み、「早く例のものを出せ!!」と怒鳴っている。
さっき圷から聞いた魔法薬なら、飲む前に止めなければいけない。
これが最後の戦いになると、誰もが息を呑んだ。
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