32 / 38
失踪事件
しおりを挟む
翌日もetherとの訓練に励む。
はじめは集中して気を貯めるコツが掴めなかったが、今は結構惜しいところまでできた。
デミゴットの姿になれそうな瞬間が何度かあり、後何度か挑戦すれば成功しそうな感触を得られている。
『リアン様、少シ休憩シマショウ』
etherが促してくれたが、もう少し頑張りたいと断った。
そういえば日本にいた時も自分が納得するまで没頭していたな。
異世界に来ても、元々の性格からはさほど変わらないようだ。
ジェネシスさんが忙しくて夜中まで帰ってこないから、何かに夢中になっているほうが時間を忘れられる。
そうして夕刻までほとんど休まず訓練を続けた結果、最後の最後でデミゴットの姿になれたのだった。
「成功した!」
体の奥でマグマが沸く感じは、覚醒した時と同じだ。
その感覚を再現してみた。
それは瞑想に近いように思った。自分自身と向き合い、“無”になることで熱を生み出す。
熱が塊となり、膨張した時、俺は人間からデミゴットになるのだ。
etherが言うには、慣れればもっと簡単に変身できるようになるのだとか。
早くその境地に立ちたいと気持ちがはやる。
もっと訓練したいが、今日のところはetherに止められて終了した。
体力的には疲れているが、モチベーションは高まっている。上達が目に見えて実感できるのは気分がいい。
ジェネシスさんはまだ帰ってこないが、etherがいてくれて良かった。
食事の時も話し相手になってくれるから、寂しさを感じつつも、退屈はしないで済んでいる。
早めにベッドに入ろうとリビングを出た時、玄関のドアが開いた。
「ジェネシスさん?」
「Lien、良かった。もう寝ているかもしれないと思っていた」
「いえ、今ちょうど寝室に行こうとしていたところです。でもジェネシスさんが帰ってきたから、リビングで待ってます」
共にリビングに入るなり、抱きしめられた。
まだ家に帰ってきて二日しか経っていないのに、一人の時間が長すぎて五日ぶりくらいの抱擁のように感じる。
背中にまわした腕に力を込めた。
ジェネシスさんの温もりに包まれると寂しさもすぐに消えてしまう。
「今日も、大変だったんですか?」
仕事の話をどこまで聞いていいのかは分からないから、世間話くらいの気持ちで尋ねた。
だから、ジェネシスさんの言葉に驚愕してしまった。
「あぁ、それが……グルニスランの国王がいなくなってたんだ」
「えっ!? いないって、どういうことですか?」
「ヴァシリカの国王がグルニスランを訪問してやっと発覚した。どうやら穢れを恐れて逃げたようだ。執事には、数日屋敷を空けるとしか伝えていなかった。そして幼い子も残して、王妃と自分だけが逃げていた」
「子供を置いて行ったんですか!?」
「あぁ、きっと逃亡するのに邪魔だったんだろう。まだ十歳の女の子だ。それで緊急に会合が開かれた。明日はグルニスランへ行ってくるよ」
「俺も行きたい」という言葉は飲み込んだ。行ったところで役に立たない。
「グルニスランは、どうなるんでしょうか……」
「まだ、どうとも言いようがない」
ジェネシスさんも頭を抱えている。
せっかく穢れを浄化しているというのに、国王はその前から逃げていたんだ。
パロミデルを信頼して国の警護を任していると思い込んでいた。
状況はずっと残酷だった。
ジェネシスさんが不意に頭を撫でた。落ち込んでいる俺を心配してくれたようだ。
「明日、ジョシュアが遊びに来ると言っていたよ」
「ジョシュアが!? 楽しみです! 早く会いたい」
そういえばグルニスランで別れた後、会わずに帰ってきてしまっていた。
サミュエルさんがついていてくれたから、安心はしてるけど……。
「今は、サミュエルと一緒に住んでいるよ」
「サミュエルさんと!?」
今日は驚いてばかりいる。
「二人は恋人になったんですか?」
随分雰囲気の違う二人だが、ジョシュアは陽気で茶目っ気もある。
楽しいのが好きなサミュエルさんとは気は合いそうだ。
「そこまでは……明日聞いてみるといい」
「そうします」
ジェネシスさんは俺の反応が面白いらしく、ふふっと笑った。
「Lienの笑顔は俺を癒してくれる」と、また抱きしめられた。
グルニスランのことは、俺が心配したところで仕方ない。
どうにかいい方向に話が進みますように、と祈るしかできない。
今はジョシュアとの再会を楽しもうと思った。
はじめは集中して気を貯めるコツが掴めなかったが、今は結構惜しいところまでできた。
デミゴットの姿になれそうな瞬間が何度かあり、後何度か挑戦すれば成功しそうな感触を得られている。
『リアン様、少シ休憩シマショウ』
etherが促してくれたが、もう少し頑張りたいと断った。
そういえば日本にいた時も自分が納得するまで没頭していたな。
異世界に来ても、元々の性格からはさほど変わらないようだ。
ジェネシスさんが忙しくて夜中まで帰ってこないから、何かに夢中になっているほうが時間を忘れられる。
そうして夕刻までほとんど休まず訓練を続けた結果、最後の最後でデミゴットの姿になれたのだった。
「成功した!」
体の奥でマグマが沸く感じは、覚醒した時と同じだ。
その感覚を再現してみた。
それは瞑想に近いように思った。自分自身と向き合い、“無”になることで熱を生み出す。
熱が塊となり、膨張した時、俺は人間からデミゴットになるのだ。
etherが言うには、慣れればもっと簡単に変身できるようになるのだとか。
早くその境地に立ちたいと気持ちがはやる。
もっと訓練したいが、今日のところはetherに止められて終了した。
体力的には疲れているが、モチベーションは高まっている。上達が目に見えて実感できるのは気分がいい。
ジェネシスさんはまだ帰ってこないが、etherがいてくれて良かった。
食事の時も話し相手になってくれるから、寂しさを感じつつも、退屈はしないで済んでいる。
早めにベッドに入ろうとリビングを出た時、玄関のドアが開いた。
「ジェネシスさん?」
「Lien、良かった。もう寝ているかもしれないと思っていた」
「いえ、今ちょうど寝室に行こうとしていたところです。でもジェネシスさんが帰ってきたから、リビングで待ってます」
共にリビングに入るなり、抱きしめられた。
まだ家に帰ってきて二日しか経っていないのに、一人の時間が長すぎて五日ぶりくらいの抱擁のように感じる。
背中にまわした腕に力を込めた。
ジェネシスさんの温もりに包まれると寂しさもすぐに消えてしまう。
「今日も、大変だったんですか?」
仕事の話をどこまで聞いていいのかは分からないから、世間話くらいの気持ちで尋ねた。
だから、ジェネシスさんの言葉に驚愕してしまった。
「あぁ、それが……グルニスランの国王がいなくなってたんだ」
「えっ!? いないって、どういうことですか?」
「ヴァシリカの国王がグルニスランを訪問してやっと発覚した。どうやら穢れを恐れて逃げたようだ。執事には、数日屋敷を空けるとしか伝えていなかった。そして幼い子も残して、王妃と自分だけが逃げていた」
「子供を置いて行ったんですか!?」
「あぁ、きっと逃亡するのに邪魔だったんだろう。まだ十歳の女の子だ。それで緊急に会合が開かれた。明日はグルニスランへ行ってくるよ」
「俺も行きたい」という言葉は飲み込んだ。行ったところで役に立たない。
「グルニスランは、どうなるんでしょうか……」
「まだ、どうとも言いようがない」
ジェネシスさんも頭を抱えている。
せっかく穢れを浄化しているというのに、国王はその前から逃げていたんだ。
パロミデルを信頼して国の警護を任していると思い込んでいた。
状況はずっと残酷だった。
ジェネシスさんが不意に頭を撫でた。落ち込んでいる俺を心配してくれたようだ。
「明日、ジョシュアが遊びに来ると言っていたよ」
「ジョシュアが!? 楽しみです! 早く会いたい」
そういえばグルニスランで別れた後、会わずに帰ってきてしまっていた。
サミュエルさんがついていてくれたから、安心はしてるけど……。
「今は、サミュエルと一緒に住んでいるよ」
「サミュエルさんと!?」
今日は驚いてばかりいる。
「二人は恋人になったんですか?」
随分雰囲気の違う二人だが、ジョシュアは陽気で茶目っ気もある。
楽しいのが好きなサミュエルさんとは気は合いそうだ。
「そこまでは……明日聞いてみるといい」
「そうします」
ジェネシスさんは俺の反応が面白いらしく、ふふっと笑った。
「Lienの笑顔は俺を癒してくれる」と、また抱きしめられた。
グルニスランのことは、俺が心配したところで仕方ない。
どうにかいい方向に話が進みますように、と祈るしかできない。
今はジョシュアとの再会を楽しもうと思った。
17
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる