【完結】ハズレ召喚と言われたSubの俺。実はデミゴッド 〜優美な騎士団長から溺愛される〜

亜沙美多郎

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失踪事件

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 翌日もetherとの訓練に励む。

 はじめは集中して気を貯めるコツが掴めなかったが、今は結構惜しいところまでできた。

 デミゴットの姿になれそうな瞬間が何度かあり、後何度か挑戦すれば成功しそうな感触を得られている。

『リアン様、少シ休憩シマショウ』

 etherが促してくれたが、もう少し頑張りたいと断った。

 そういえば日本にいた時も自分が納得するまで没頭していたな。

 異世界に来ても、元々の性格からはさほど変わらないようだ。

 ジェネシスさんが忙しくて夜中まで帰ってこないから、何かに夢中になっているほうが時間を忘れられる。

 そうして夕刻までほとんど休まず訓練を続けた結果、最後の最後でデミゴットの姿になれたのだった。

「成功した!」

 体の奥でマグマが沸く感じは、覚醒した時と同じだ。

 その感覚を再現してみた。

 それは瞑想に近いように思った。自分自身と向き合い、“無”になることで熱を生み出す。

 熱が塊となり、膨張した時、俺は人間からデミゴットになるのだ。

 etherが言うには、慣れればもっと簡単に変身できるようになるのだとか。

 早くその境地に立ちたいと気持ちがはやる。

 もっと訓練したいが、今日のところはetherに止められて終了した。


 体力的には疲れているが、モチベーションは高まっている。上達が目に見えて実感できるのは気分がいい。

 
 ジェネシスさんはまだ帰ってこないが、etherがいてくれて良かった。

 食事の時も話し相手になってくれるから、寂しさを感じつつも、退屈はしないで済んでいる。


 早めにベッドに入ろうとリビングを出た時、玄関のドアが開いた。

「ジェネシスさん?」

「Lien、良かった。もう寝ているかもしれないと思っていた」

「いえ、今ちょうど寝室に行こうとしていたところです。でもジェネシスさんが帰ってきたから、リビングで待ってます」

 共にリビングに入るなり、抱きしめられた。

 まだ家に帰ってきて二日しか経っていないのに、一人の時間が長すぎて五日ぶりくらいの抱擁のように感じる。

 背中にまわした腕に力を込めた。

 ジェネシスさんの温もりに包まれると寂しさもすぐに消えてしまう。

「今日も、大変だったんですか?」

 仕事の話をどこまで聞いていいのかは分からないから、世間話くらいの気持ちで尋ねた。

    だから、ジェネシスさんの言葉に驚愕してしまった。

「あぁ、それが……グルニスランの国王がいなくなってたんだ」

「えっ!? いないって、どういうことですか?」

「ヴァシリカの国王がグルニスランを訪問してやっと発覚した。どうやら穢れを恐れて逃げたようだ。執事には、数日屋敷を空けるとしか伝えていなかった。そして幼い子も残して、王妃と自分だけが逃げていた」

「子供を置いて行ったんですか!?」

「あぁ、きっと逃亡するのに邪魔だったんだろう。まだ十歳の女の子だ。それで緊急に会合が開かれた。明日はグルニスランへ行ってくるよ」

「俺も行きたい」という言葉は飲み込んだ。行ったところで役に立たない。

「グルニスランは、どうなるんでしょうか……」

「まだ、どうとも言いようがない」

 ジェネシスさんも頭を抱えている。

 せっかく穢れを浄化しているというのに、国王はその前から逃げていたんだ。

 パロミデルを信頼して国の警護を任していると思い込んでいた。

 状況はずっと残酷だった。

 
 ジェネシスさんが不意に頭を撫でた。落ち込んでいる俺を心配してくれたようだ。

「明日、ジョシュアが遊びに来ると言っていたよ」

「ジョシュアが!? 楽しみです! 早く会いたい」

 そういえばグルニスランで別れた後、会わずに帰ってきてしまっていた。

 サミュエルさんがついていてくれたから、安心はしてるけど……。

「今は、サミュエルと一緒に住んでいるよ」

「サミュエルさんと!?」

 今日は驚いてばかりいる。

「二人は恋人になったんですか?」

 随分雰囲気の違う二人だが、ジョシュアは陽気で茶目っ気もある。

 楽しいのが好きなサミュエルさんとは気は合いそうだ。

「そこまでは……明日聞いてみるといい」

「そうします」

    ジェネシスさんは俺の反応が面白いらしく、ふふっと笑った。

「Lienの笑顔は俺を癒してくれる」と、また抱きしめられた。

 グルニスランのことは、俺が心配したところで仕方ない。

 どうにかいい方向に話が進みますように、と祈るしかできない。

 
 今はジョシュアとの再会を楽しもうと思った。

 

 

 
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