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二章~アシル・クローシャー編~
59 甘やかしたいエリアス
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今回の発情期は、ここ数年で一番酷かった。ヒートが鎮まっても、またその数時間後には欲情している。
その度に、身体が壊れてしまうほど抱かれ、数え切れないほどの熱を放ってもらった。
三日も経てば、後は部屋からは出られないものの、だいたいは穏やかに過ごせる。しかし、今回は違う。三日が過ぎても四日が過ぎても、一行に発情期が治まる気配をみせなかった。
こんなに苦しんだのは久しぶりである。
思い返してみれば、過去にエリアス様がぼくに飲ませた発情誘発剤。あの時と同じレベルのヒートを味わっている気がする。
しかしあの時は、薬が切れれば意識を失い暫く放心状態となったものの、その後体調はみるみる回復した。
ではこの度の発情期は一体どうしたというのだ。直前の強い抑制剤の反動かと思っていたが、どうやらそれが原因でもなさそうだ。
エリアス様には、発情期には毎回三日ほど仕事を休んでもらかいるのだが、今回だけは丸一週間、付き添ってもらう羽目になってしまった。
「ごめんなさい」と言うと、エリアス様は「謝る必要などない」と、微笑んでくれた。
幾度となくフェロモンを放つ、その香りが好きなのだとご満悦の表情を向けてくれた。
「もしかすると、アシル自身が妊娠したいと強く願っているのかもしれない」
「ぼく……自身が?」
「あぁ、実はクレールを身篭ったあの時も、今回ほどではないが似たような症状をみせていた。薬のせいと思っていたが、どうやらそうではないようだ。あの時、アシルは何度も妊娠してしまうと口走っていた。最初は嫌なのかと思いショックだったのだが、どうやらそうではないと気付いた」
エリアス様は当時を振り返り、今なら教えてくれるかい? と、見つめて言った。
「アシルは、私の側室の申し出を受け入れた時から、私との子を産みたいと願っていたのではないのか?」
「えっ……ぼく、そんなことを言っていたのですか?」
パーティーの日は、薬のせいで意識が朦朧としていて、行為中の全てを思い出せない。無意識で孕みたいと口走っていただなんて、ずっと秘密にしておいて欲しかったと、誤魔化そうとしても、顔は既に真っ赤に染まっていた。
エリアス様はぼくを覗き込み「どうやら的中したようだ」と確信した。
「お、思って……ました。エリアス様から運命の番だと言われた瞬間から、ぼくの夢は二人の子供を産むことでした。正妻になんてなれると思っていませんでしたし、離れの窓から姿を拝見できるだけで幸せでした」
こんな話をしたのは初めてだった。
少しでも話を止めると、羞恥心が勝ってしまうので、一思いに喋り切る。
「しかし、見ているだけでは身篭るなんて出来ないだろう? 窓越しに、私を見ているのには気付いていた。アシルはもう二十歳を迎えていたというのに、私はあれほどまでに初心な大人を見たことがない。それがヒートを起こしたベッドの上では、まるで別人のようだった」
「やっ、やめてください!!」
もう、それ以上は聞きたくない。自分の醜態を愛する人の口から聞くなど、拷問だ。
「あの時のぼくのことは、忘れてください」
そう願い出たが即答で却下された。
「今回の発情期のアシルはあの時を思い出せる。それが言いたかったのだ。もし私との子をまた産みたいと思ってくれているなら、こんなに嬉しいことはない」
エリアス様はズルい。こうやって、ぼくの本音を暴いてしまう。
「……産みたいです。赤ちゃん」
「そうか、良かった。一週間、よく頑張ったね」
頭をよしよしと撫でる。
「ぼくを子供扱いするのはやめてください」
「甘やかしたいのだ。こうして口付けて、頬を擦り合わせる。君はこうされるのが好きだろう?」
エリアス様は発情期が明けたぼくを、まるでお姫様のように扱った。
もし今回で孕めば、次はいつこうさせて貰えるか分からないから……なんて笑っている。
甘えるのは苦手だけれど、たまには良いかと思い、たっぷりと甘えさせてもらったのだった。
その度に、身体が壊れてしまうほど抱かれ、数え切れないほどの熱を放ってもらった。
三日も経てば、後は部屋からは出られないものの、だいたいは穏やかに過ごせる。しかし、今回は違う。三日が過ぎても四日が過ぎても、一行に発情期が治まる気配をみせなかった。
こんなに苦しんだのは久しぶりである。
思い返してみれば、過去にエリアス様がぼくに飲ませた発情誘発剤。あの時と同じレベルのヒートを味わっている気がする。
しかしあの時は、薬が切れれば意識を失い暫く放心状態となったものの、その後体調はみるみる回復した。
ではこの度の発情期は一体どうしたというのだ。直前の強い抑制剤の反動かと思っていたが、どうやらそれが原因でもなさそうだ。
エリアス様には、発情期には毎回三日ほど仕事を休んでもらかいるのだが、今回だけは丸一週間、付き添ってもらう羽目になってしまった。
「ごめんなさい」と言うと、エリアス様は「謝る必要などない」と、微笑んでくれた。
幾度となくフェロモンを放つ、その香りが好きなのだとご満悦の表情を向けてくれた。
「もしかすると、アシル自身が妊娠したいと強く願っているのかもしれない」
「ぼく……自身が?」
「あぁ、実はクレールを身篭ったあの時も、今回ほどではないが似たような症状をみせていた。薬のせいと思っていたが、どうやらそうではないようだ。あの時、アシルは何度も妊娠してしまうと口走っていた。最初は嫌なのかと思いショックだったのだが、どうやらそうではないと気付いた」
エリアス様は当時を振り返り、今なら教えてくれるかい? と、見つめて言った。
「アシルは、私の側室の申し出を受け入れた時から、私との子を産みたいと願っていたのではないのか?」
「えっ……ぼく、そんなことを言っていたのですか?」
パーティーの日は、薬のせいで意識が朦朧としていて、行為中の全てを思い出せない。無意識で孕みたいと口走っていただなんて、ずっと秘密にしておいて欲しかったと、誤魔化そうとしても、顔は既に真っ赤に染まっていた。
エリアス様はぼくを覗き込み「どうやら的中したようだ」と確信した。
「お、思って……ました。エリアス様から運命の番だと言われた瞬間から、ぼくの夢は二人の子供を産むことでした。正妻になんてなれると思っていませんでしたし、離れの窓から姿を拝見できるだけで幸せでした」
こんな話をしたのは初めてだった。
少しでも話を止めると、羞恥心が勝ってしまうので、一思いに喋り切る。
「しかし、見ているだけでは身篭るなんて出来ないだろう? 窓越しに、私を見ているのには気付いていた。アシルはもう二十歳を迎えていたというのに、私はあれほどまでに初心な大人を見たことがない。それがヒートを起こしたベッドの上では、まるで別人のようだった」
「やっ、やめてください!!」
もう、それ以上は聞きたくない。自分の醜態を愛する人の口から聞くなど、拷問だ。
「あの時のぼくのことは、忘れてください」
そう願い出たが即答で却下された。
「今回の発情期のアシルはあの時を思い出せる。それが言いたかったのだ。もし私との子をまた産みたいと思ってくれているなら、こんなに嬉しいことはない」
エリアス様はズルい。こうやって、ぼくの本音を暴いてしまう。
「……産みたいです。赤ちゃん」
「そうか、良かった。一週間、よく頑張ったね」
頭をよしよしと撫でる。
「ぼくを子供扱いするのはやめてください」
「甘やかしたいのだ。こうして口付けて、頬を擦り合わせる。君はこうされるのが好きだろう?」
エリアス様は発情期が明けたぼくを、まるでお姫様のように扱った。
もし今回で孕めば、次はいつこうさせて貰えるか分からないから……なんて笑っている。
甘えるのは苦手だけれど、たまには良いかと思い、たっぷりと甘えさせてもらったのだった。
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