【完結】公爵様を寝取った悪役令息に転生しましたが、子供が産まれるので幸せになるために、この事件解決させていただきます。

亜沙美多郎

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三章〜クレール・ベルクール編〜

24 初めての喧嘩

 なんだ、そんなことかと言って欲しい。
 別になんだっていいじゃないかと笑ってほしい。
 バース性など関係ないと励まして欲しい。

 いざ打ち明けてしまうと、自分を庇護する考えばかりが浮かんでしまう。イザックはしばらく黙ってそこから動かなかった。
 キツく瞑った目を少し開けてみると、イザックの手が震えているのが見えた。

「……んで……なんで、言ってくれなかったの……」
 期待した言葉は見事にかき消された。
 イザックの頬には涙が伝い、声は震えている。
 
「イザック、本当にごめん。今まで言えなかったのには訳があって……」
「訳があっても、君は笑って嘘がつける人なんだ?」
「違う、違うんだ」
「何も違わないじゃないか。僕はそんなにも頼り甲斐がないかな?」
「そんな訳ない。イザックは誰よりも頼れる存在だ」
「でもオメガだとは言わなかった。所詮ベータには関係のないことだから? アルファの弟みたいに、僕ではクレールを守ってあげたり出来ないんだ」

 完全にイザックのプライドを傷つけてしまった。
 イザックは教えてくれなかったことよりも、自分もノアやノランのように、いざと言う時に僕を守ってあげたいのにと言う。
 友達だから、同じ目標に向かって進む同士だから、幼馴染のような関係だから。
 だから例え僕がオメガであっても、教えてくれていれば周りに隠す手助けだって出来たし、突然のヒートもどうにかして助けてあげられたかもしれないと。
 イザックは「自分だってクレールの力になれる一人だったと信じたかった」そう言って立ち上がった。

「帰るね」
 鞄を握り、僕の隣をすり抜けようとした。

 このまま帰しちゃダメだと本能が叫ぶ。今イザックが帰ってしまえば、もう僕たちの関係修復は無理だろう。なんとしてでも、引き止めなければ……。

 考えながら体が動いていた。
 イザックの腕を掴み、帰らないでと叫ぶ。

「もう、僕に用事なんてないだろう? 僕は君に何もしてあげられない無能なベータだ。そりゃ、公爵家の長男ともなれば色んな事情があるだろう。僕には計り知れない事情が。でも君にとっては、僕も隠さなければいけない相手の一人だった。だから、今まで言わなかった。でも何故こんなタイミングで打ち明けたんだ? それも君の都合だけなんだろう? それで僕はなんと言えば良かった? 君は僕に何と言って欲しかった?」

 ……僕は自分が恥ずかしい。
 イザックの言う通りだ。
 ヴェルジー室長にバレなければ、イザックに話しただろうか。
 ヴィクトール様を目の前にしてもヒートを起こさなければ? イザックにオメガだと打ち明けただろうか。

 きっと、隠し通したハズだ。
 それでも僕を守ってあげるために教えて欲しかったなど、そんなセリフをイザックに言わせてしまった自分に腹が立つ。
 僕はいろんな人から守られ、驕っていたんだ。
 
 でも、こんな時になって、やはりイザックは僕にとって本当に大切な、必要な人だと確信した。
 ……本当に、こんな時になって……馬鹿だ。僕は大馬鹿者だ。
 大切な親友を傷付けてようやく気付くなんて……。
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