175 / 235
三章〜クレール・ベルクール編〜
24 初めての喧嘩
なんだ、そんなことかと言って欲しい。
別になんだっていいじゃないかと笑ってほしい。
バース性など関係ないと励まして欲しい。
いざ打ち明けてしまうと、自分を庇護する考えばかりが浮かんでしまう。イザックはしばらく黙ってそこから動かなかった。
キツく瞑った目を少し開けてみると、イザックの手が震えているのが見えた。
「……んで……なんで、言ってくれなかったの……」
期待した言葉は見事にかき消された。
イザックの頬には涙が伝い、声は震えている。
「イザック、本当にごめん。今まで言えなかったのには訳があって……」
「訳があっても、君は笑って嘘がつける人なんだ?」
「違う、違うんだ」
「何も違わないじゃないか。僕はそんなにも頼り甲斐がないかな?」
「そんな訳ない。イザックは誰よりも頼れる存在だ」
「でもオメガだとは言わなかった。所詮ベータには関係のないことだから? アルファの弟みたいに、僕ではクレールを守ってあげたり出来ないんだ」
完全にイザックのプライドを傷つけてしまった。
イザックは教えてくれなかったことよりも、自分もノアやノランのように、いざと言う時に僕を守ってあげたいのにと言う。
友達だから、同じ目標に向かって進む同士だから、幼馴染のような関係だから。
だから例え僕がオメガであっても、教えてくれていれば周りに隠す手助けだって出来たし、突然のヒートもどうにかして助けてあげられたかもしれないと。
イザックは「自分だってクレールの力になれる一人だったと信じたかった」そう言って立ち上がった。
「帰るね」
鞄を握り、僕の隣をすり抜けようとした。
このまま帰しちゃダメだと本能が叫ぶ。今イザックが帰ってしまえば、もう僕たちの関係修復は無理だろう。なんとしてでも、引き止めなければ……。
考えながら体が動いていた。
イザックの腕を掴み、帰らないでと叫ぶ。
「もう、僕に用事なんてないだろう? 僕は君に何もしてあげられない無能なベータだ。そりゃ、公爵家の長男ともなれば色んな事情があるだろう。僕には計り知れない事情が。でも君にとっては、僕も隠さなければいけない相手の一人だった。だから、今まで言わなかった。でも何故こんなタイミングで打ち明けたんだ? それも君の都合だけなんだろう? それで僕はなんと言えば良かった? 君は僕に何と言って欲しかった?」
……僕は自分が恥ずかしい。
イザックの言う通りだ。
ヴェルジー室長にバレなければ、イザックに話しただろうか。
ヴィクトール様を目の前にしてもヒートを起こさなければ? イザックにオメガだと打ち明けただろうか。
きっと、隠し通したハズだ。
それでも僕を守ってあげるために教えて欲しかったなど、そんなセリフをイザックに言わせてしまった自分に腹が立つ。
僕はいろんな人から守られ、驕っていたんだ。
でも、こんな時になって、やはりイザックは僕にとって本当に大切な、必要な人だと確信した。
……本当に、こんな時になって……馬鹿だ。僕は大馬鹿者だ。
大切な親友を傷付けてようやく気付くなんて……。
別になんだっていいじゃないかと笑ってほしい。
バース性など関係ないと励まして欲しい。
いざ打ち明けてしまうと、自分を庇護する考えばかりが浮かんでしまう。イザックはしばらく黙ってそこから動かなかった。
キツく瞑った目を少し開けてみると、イザックの手が震えているのが見えた。
「……んで……なんで、言ってくれなかったの……」
期待した言葉は見事にかき消された。
イザックの頬には涙が伝い、声は震えている。
「イザック、本当にごめん。今まで言えなかったのには訳があって……」
「訳があっても、君は笑って嘘がつける人なんだ?」
「違う、違うんだ」
「何も違わないじゃないか。僕はそんなにも頼り甲斐がないかな?」
「そんな訳ない。イザックは誰よりも頼れる存在だ」
「でもオメガだとは言わなかった。所詮ベータには関係のないことだから? アルファの弟みたいに、僕ではクレールを守ってあげたり出来ないんだ」
完全にイザックのプライドを傷つけてしまった。
イザックは教えてくれなかったことよりも、自分もノアやノランのように、いざと言う時に僕を守ってあげたいのにと言う。
友達だから、同じ目標に向かって進む同士だから、幼馴染のような関係だから。
だから例え僕がオメガであっても、教えてくれていれば周りに隠す手助けだって出来たし、突然のヒートもどうにかして助けてあげられたかもしれないと。
イザックは「自分だってクレールの力になれる一人だったと信じたかった」そう言って立ち上がった。
「帰るね」
鞄を握り、僕の隣をすり抜けようとした。
このまま帰しちゃダメだと本能が叫ぶ。今イザックが帰ってしまえば、もう僕たちの関係修復は無理だろう。なんとしてでも、引き止めなければ……。
考えながら体が動いていた。
イザックの腕を掴み、帰らないでと叫ぶ。
「もう、僕に用事なんてないだろう? 僕は君に何もしてあげられない無能なベータだ。そりゃ、公爵家の長男ともなれば色んな事情があるだろう。僕には計り知れない事情が。でも君にとっては、僕も隠さなければいけない相手の一人だった。だから、今まで言わなかった。でも何故こんなタイミングで打ち明けたんだ? それも君の都合だけなんだろう? それで僕はなんと言えば良かった? 君は僕に何と言って欲しかった?」
……僕は自分が恥ずかしい。
イザックの言う通りだ。
ヴェルジー室長にバレなければ、イザックに話しただろうか。
ヴィクトール様を目の前にしてもヒートを起こさなければ? イザックにオメガだと打ち明けただろうか。
きっと、隠し通したハズだ。
それでも僕を守ってあげるために教えて欲しかったなど、そんなセリフをイザックに言わせてしまった自分に腹が立つ。
僕はいろんな人から守られ、驕っていたんだ。
でも、こんな時になって、やはりイザックは僕にとって本当に大切な、必要な人だと確信した。
……本当に、こんな時になって……馬鹿だ。僕は大馬鹿者だ。
大切な親友を傷付けてようやく気付くなんて……。
あなたにおすすめの小説
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
【完結】転生した悪役令息は、お望み通り近付きません
カシナシ
BL
「お前など、愛す価値もない」
ディディア・ファントム侯爵令息が階段から落ちる時見たのは、婚約者が従兄弟を抱きしめている姿。
(これって、ディディアーーBLゲームの悪役令息じゃないか!)
妹の笑顔を見るためにやりこんでいたBLゲーム。引くほどレベルを上げた主人公のスキルが、なぜかディディアに転生してそのまま引き継いでいる。
スキルなしとして家族に『失敗作』と蔑まれていたのは、そのスキルのレベルが高すぎたかららしい。
スキルと自分を取り戻したディディアは、婚約者を追いかけまわすのを辞め、自立に向けて淡々と準備をする。
もちろん元婚約者と従兄弟には近付かないので、絡んでこないでいただけます?
十万文字程度。
3/7 完結しました!
※主人公:マイペース美人受け
※女性向けHOTランキング1位、ありがとうございました。完結までの12日間に渡り、ほとんど2〜5位と食い込めた作品となりました!あああありがとうございます……!。゚(゚´Д`゚)゚。
たくさんの閲覧、イイね、エール、感想は、作者の血肉になります……!(o´ω`o)ありがとうございます!(●′ω`人′ω`●)
推しのために、モブの俺は悪役令息に成り代わることに決めました!
華抹茶
BL
ある日突然、超強火のオタクだった前世の記憶が蘇った伯爵令息のエルバート。しかも今の自分は大好きだったBLゲームのモブだと気が付いた彼は、このままだと最推しの悪役令息が不幸な未来を迎えることも思い出す。そこで最推しに代わって自分が悪役令息になるためエルバートは猛勉強してゲームの舞台となる学園に入学し、悪役令息として振舞い始める。その結果、主人公やメインキャラクター達には目の敵にされ嫌われ生活を送る彼だけど、何故か最推しだけはエルバートに接近してきて――クールビューティ公爵令息と猪突猛進モブのハイテンションコミカルBLファンタジー!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます
ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。
しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。
——このままじゃ、王太子に処刑される。
前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。
中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。
囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。
ところが動くほど状況は悪化していく。
レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、
カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、
隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。
しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。
周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり——
自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。
誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う——
ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
昨日まで塩対応だった侯爵令息様が泣きながら求婚してくる
遠間千早
BL
憧れていたけど塩対応だった侯爵令息様が、ある日突然屋敷の玄関を破壊して押し入ってきた。
「愛してる。許してくれ」と言われて呆気にとられるものの、話を聞くと彼は最悪な未来から時を巻き戻ってきたと言う。
未来で受を失ってしまった侯爵令息様(アルファ)×ずっと塩対応されていたのに突然求婚されてぽかんとする貧乏子爵の令息(オメガ)
自分のメンタルを救済するために書いた、短い話です。
ムーンライトで突発的に出した話ですが、こちらまだだったので上げておきます。
少し長いので、分割して更新します。受け視点→攻め視点になります。