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三章〜クレール・ベルクール編〜
35 和解
マルティネス王子とクララ様は夕方になり、訪ねてくれた。
ヴィクトール様の手紙によれば、流産を何年も引きずっていたとのことだったので、心配していたが、昔の記憶よりは痩せている印象を受けたものの、元気そうで安心した。
マルティネス王子は僕たちの顔を見るなり頭を深く下げた。
「我が子が多大なる迷惑をかけてしまい、本当に申し訳なかった。もっと早くに謝罪をするべきなのに、一年も経ってしまい今更とは思われるだろうが、どうしてもこうしなければ、今後ベルクール家に合わせる顔がない」
「マルティネス王子、顔をあげてください。僕は全然大丈夫ですし、手紙でも謝罪をして頂いてます。ヴィクトール様とも和解していますし、良好な関係が続いています。マルティネス王子が謝罪をする必要はありません」
慌てて止めに入ったが、隣でクララ様も一緒に頭を下げる。
「まだ弟さんは十一歳だったと伺い、怪我をさせてしまったのではないかとずっと気にかけておりました。本人から謝罪させるべきなのでしょうが、またクレールさんと会うとどうなるか分からないので間接的で申し訳ありません」
「クレール君、本当にすまなかった。そしてノア君にノラン君。どうか息子の過ちを許してあげて欲しい」
ノアとノランは、顔を合わせた途端に頭を下げられ驚きすぎて固まってしまっていた。
二人で顔を見合わせている。
「あの……私たちは最初からヴィクトール様を憎んではいません。クレールお兄様の匂いが、ヴィクトール様にしか届かなかったのはショックでしたが、顔合わせた瞬間から、二人が惹かれあったのは一目瞭然でした。悔しいですけど、私たちはクレールお兄様の番にはなれませんし」
ノランは悔しいと繰り返し口にした。
「自分はクレールお兄様に相応しい人間として、誰にも負けない自信があった」と話した。
「ノランは、気持ちを整理するまで時間がかかったんだよね。あの後、しばらくは思い出さないように勉強に没頭してたけど、少しずつヴィクトール様とお兄ちゃまのことも許せるようになってきて……」
ノアが隣からフォローを入れる。
ノランが僕を想う気持ちを知っていたからこそ、この一年寄り添ってくれていたのだ。
一人じゃないのは心強かっただろうと思われた。
ノランはマルティネス王子とクララ様にはまだ会いたくなかったかもしれない。でも、しっかりと自分の言葉で和解する意向を示してくれた。
「勿論、私たちが一生クレールお兄様を守っていきたいと思っていました。私たちだってアルファですし。でも、ようやくヴィクトール様ならクレールお兄様を任せられると、自分を宥めることが出来ました。だから、やっとこの屋敷にも赴くことが出来ました。今後は、クレールお兄様たちを応援したいと思っています」
「ノアも、ノランと同じ気持ちだよ、ね?」
マルティネス王子は、二人から直接話が聞けて良かったと、再び頭を下げた。
クララ様は、ノアとノランの優しさに感謝しますと涙を拭った。
「では、今日はせっかくの家族団欒にお邪魔して申し訳なかった。クララ、帰ろうか」
マルティネス王子とクララ様は、謝罪するためだけに訪問したと言う。
「せっかくなので、夕食もご一緒に如何ですか? 実は、僕がみんなにサプライズで焼き菓子を作ったのです。その……ヴィクトール様の好みか審査してくださると嬉しいのですが……」
恥ずかしながらも、こんなチャンスはなかなかないので思い切ってヴィクトール様の好きな食べ物も沢山教えてもらおうと思った。
「お兄ちゃまのお菓子? ノアも食べたい!! ね、クララ様もご一緒しましょう。だって、ノアとノランは、もう弟も同然でしょう? ノランもそう思うよね?」
「え、あ……そう、だね」
「ほら、マルティネス王子もお兄ちゃまのお菓子なんて子供の頃ぶりだよ」
ノアの人懐っこさに救われた。
屋敷内にほっこりした空気が流れる。
ノアは特にクララ様と馬が合うらしく、あっという間に仲良くなった。
のんびりした雰囲気が確かによく似ているようにも感じられる。
僕はアシルお母様と視線を合わせ、二人同時に安堵して胸を撫で下ろした。
ヴィクトール様の手紙によれば、流産を何年も引きずっていたとのことだったので、心配していたが、昔の記憶よりは痩せている印象を受けたものの、元気そうで安心した。
マルティネス王子は僕たちの顔を見るなり頭を深く下げた。
「我が子が多大なる迷惑をかけてしまい、本当に申し訳なかった。もっと早くに謝罪をするべきなのに、一年も経ってしまい今更とは思われるだろうが、どうしてもこうしなければ、今後ベルクール家に合わせる顔がない」
「マルティネス王子、顔をあげてください。僕は全然大丈夫ですし、手紙でも謝罪をして頂いてます。ヴィクトール様とも和解していますし、良好な関係が続いています。マルティネス王子が謝罪をする必要はありません」
慌てて止めに入ったが、隣でクララ様も一緒に頭を下げる。
「まだ弟さんは十一歳だったと伺い、怪我をさせてしまったのではないかとずっと気にかけておりました。本人から謝罪させるべきなのでしょうが、またクレールさんと会うとどうなるか分からないので間接的で申し訳ありません」
「クレール君、本当にすまなかった。そしてノア君にノラン君。どうか息子の過ちを許してあげて欲しい」
ノアとノランは、顔を合わせた途端に頭を下げられ驚きすぎて固まってしまっていた。
二人で顔を見合わせている。
「あの……私たちは最初からヴィクトール様を憎んではいません。クレールお兄様の匂いが、ヴィクトール様にしか届かなかったのはショックでしたが、顔合わせた瞬間から、二人が惹かれあったのは一目瞭然でした。悔しいですけど、私たちはクレールお兄様の番にはなれませんし」
ノランは悔しいと繰り返し口にした。
「自分はクレールお兄様に相応しい人間として、誰にも負けない自信があった」と話した。
「ノランは、気持ちを整理するまで時間がかかったんだよね。あの後、しばらくは思い出さないように勉強に没頭してたけど、少しずつヴィクトール様とお兄ちゃまのことも許せるようになってきて……」
ノアが隣からフォローを入れる。
ノランが僕を想う気持ちを知っていたからこそ、この一年寄り添ってくれていたのだ。
一人じゃないのは心強かっただろうと思われた。
ノランはマルティネス王子とクララ様にはまだ会いたくなかったかもしれない。でも、しっかりと自分の言葉で和解する意向を示してくれた。
「勿論、私たちが一生クレールお兄様を守っていきたいと思っていました。私たちだってアルファですし。でも、ようやくヴィクトール様ならクレールお兄様を任せられると、自分を宥めることが出来ました。だから、やっとこの屋敷にも赴くことが出来ました。今後は、クレールお兄様たちを応援したいと思っています」
「ノアも、ノランと同じ気持ちだよ、ね?」
マルティネス王子は、二人から直接話が聞けて良かったと、再び頭を下げた。
クララ様は、ノアとノランの優しさに感謝しますと涙を拭った。
「では、今日はせっかくの家族団欒にお邪魔して申し訳なかった。クララ、帰ろうか」
マルティネス王子とクララ様は、謝罪するためだけに訪問したと言う。
「せっかくなので、夕食もご一緒に如何ですか? 実は、僕がみんなにサプライズで焼き菓子を作ったのです。その……ヴィクトール様の好みか審査してくださると嬉しいのですが……」
恥ずかしながらも、こんなチャンスはなかなかないので思い切ってヴィクトール様の好きな食べ物も沢山教えてもらおうと思った。
「お兄ちゃまのお菓子? ノアも食べたい!! ね、クララ様もご一緒しましょう。だって、ノアとノランは、もう弟も同然でしょう? ノランもそう思うよね?」
「え、あ……そう、だね」
「ほら、マルティネス王子もお兄ちゃまのお菓子なんて子供の頃ぶりだよ」
ノアの人懐っこさに救われた。
屋敷内にほっこりした空気が流れる。
ノアは特にクララ様と馬が合うらしく、あっという間に仲良くなった。
のんびりした雰囲気が確かによく似ているようにも感じられる。
僕はアシルお母様と視線を合わせ、二人同時に安堵して胸を撫で下ろした。
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