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三章〜クレール・ベルクール編〜
59 溺愛ヴィクトール
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これまでも惜しみなく愛を注いでくれていたヴィクトール様であったが、僕の妊娠発覚後、益々ボディタッチが増え、心配症になった。
「今日も仕事に行って大丈夫なのか?」
「悪阻もまだないですし、研究室に行ってもそんなに激しく動いたりしないので……薬品の匂いに囲まれているのも好きなんです」
「まだ妊娠が分かった直ぐだから、決して無理しないで。もしクレールになにかあれば……」
「本当に元気ですよ。妊婦になったのに無理をすれば、ヴィクトール様よりもアシルお母様の方が怖いですから」
万が一、頑張り過ぎて倒れたなんて事態になれば、隣国から馬車を飛ばして夜中だろうが叱りに来るだろう。そうなればエリアスお父様よりも迫力がある。
もう僕がいた頃のか弱いアシルではないのだ。僕のこととなると更に神経質になる気がする。
正直、ヴィクトール様だけになら、少しくらい平気な振りをしてでも仕事をしたかもしれないが、僕にはアシルお母様とエリアスお父様がバックにいる。無事に出産しなければ……という気持ちの方が強くある。
「だから、心配ありません」
アシルお母様の話に、ヴィクトール様も苦笑いをしながら「それもそうだな」と言って、見送ってくれた。
アシルお母様たちには、そろそろ手紙が届く頃だろう。
ノアとノランには昨日あたりに着いたはずだ。どんな返事がくるか、楽しみにしている。
ヴィクトール様は、仕事終わりに研究室まで迎えに来てくれるようになった。これは僕の働きすぎを阻止する為である。
ひとたび没頭すれば、ご飯を食べるのも忘れて研究を続けてしまう。
なので強制的に帰宅させられるのは、有難いと思っている。
ヴィクトール様はまだ変化のないお腹を撫でるのが癖になっていった。
「本当に、こんな華奢な腹の中に赤ちゃんが……」
「オメガですから。皮膚が伸びるように作られてます」
「生態系の話よりも神秘的に触れてくれないか……」
「あ……」
そうだ、これは神秘の世界だ。
二人が愛し合い、新しい命を宿す。こんなにも美しい世界。僕はそれを現実に引き戻してしまった。
ヴィクトール様は、そんな所もクレールらしくて良いと言ってくれる。
もっとロマンを重んじる人になれるといいのに……。
これじゃあヴィクトール様のほうが夢がある。これが僕に足りない色気にも繋がっているようにも思う。
子供が出来ても、ヴィクトール様に愛想つかされないように頑張らければ……と考えていると、馬車で隣に座るヴィクトール様から「疲れているだろう? 屋敷に着くまで凭れてて」と、肩を抱き寄せられたのだった。
「今日も仕事に行って大丈夫なのか?」
「悪阻もまだないですし、研究室に行ってもそんなに激しく動いたりしないので……薬品の匂いに囲まれているのも好きなんです」
「まだ妊娠が分かった直ぐだから、決して無理しないで。もしクレールになにかあれば……」
「本当に元気ですよ。妊婦になったのに無理をすれば、ヴィクトール様よりもアシルお母様の方が怖いですから」
万が一、頑張り過ぎて倒れたなんて事態になれば、隣国から馬車を飛ばして夜中だろうが叱りに来るだろう。そうなればエリアスお父様よりも迫力がある。
もう僕がいた頃のか弱いアシルではないのだ。僕のこととなると更に神経質になる気がする。
正直、ヴィクトール様だけになら、少しくらい平気な振りをしてでも仕事をしたかもしれないが、僕にはアシルお母様とエリアスお父様がバックにいる。無事に出産しなければ……という気持ちの方が強くある。
「だから、心配ありません」
アシルお母様の話に、ヴィクトール様も苦笑いをしながら「それもそうだな」と言って、見送ってくれた。
アシルお母様たちには、そろそろ手紙が届く頃だろう。
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ヴィクトール様は、仕事終わりに研究室まで迎えに来てくれるようになった。これは僕の働きすぎを阻止する為である。
ひとたび没頭すれば、ご飯を食べるのも忘れて研究を続けてしまう。
なので強制的に帰宅させられるのは、有難いと思っている。
ヴィクトール様はまだ変化のないお腹を撫でるのが癖になっていった。
「本当に、こんな華奢な腹の中に赤ちゃんが……」
「オメガですから。皮膚が伸びるように作られてます」
「生態系の話よりも神秘的に触れてくれないか……」
「あ……」
そうだ、これは神秘の世界だ。
二人が愛し合い、新しい命を宿す。こんなにも美しい世界。僕はそれを現実に引き戻してしまった。
ヴィクトール様は、そんな所もクレールらしくて良いと言ってくれる。
もっとロマンを重んじる人になれるといいのに……。
これじゃあヴィクトール様のほうが夢がある。これが僕に足りない色気にも繋がっているようにも思う。
子供が出来ても、ヴィクトール様に愛想つかされないように頑張らければ……と考えていると、馬車で隣に座るヴィクトール様から「疲れているだろう? 屋敷に着くまで凭れてて」と、肩を抱き寄せられたのだった。
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