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第三章
離れたくない
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そんなに長く過ごしたわけではないが、最後に部屋に向かって一礼をした。
私が住みやすいようにと、レオナルト公爵が改装までしてくれた、シンプルで居心地の良い部屋。
バルコニーから夜空を眺めるのが好きだった。
レオナルト公爵は、この部屋をこのまま置いておくと話してくれた。
「ここはエクラの実家だ。いつでも帰ってきなさい」
そう言ってくれたのが嬉しかった。
大広間へ降りていくと、エルネスト王子殿下が待っていてくれた。
「よく眠れた?」
「はい。お待たせしました。これから、よろしくお願いします」
「畏まらなくていい。やっと王家に連れて帰られる。この日をどれだけ夢に見ていたか」
「私もです。もう、エノ様のいない人生は考えられません」
「また長時間の移動になる。早速、出発しよう」
レオナルト公爵への挨拶もそこそこに、馬車に乗り込んだ。
二人は仕事でも会うから、特に話し込むことも必要なさそうだった。
「王都に出た時は一緒に食事に行こう、エクラ」
「はい。楽しみにしています。お父様」
「おとう……様。あ、あぁ……そうだな。エクラ、我が息子……」
ずっと呼び方に悩んでお父様と呼べずにいた。
でも、レオナルト公爵が私を息子だと言ってくれるように、私だってレオナルト公爵を父だと自慢したい。
照れくさいけれど、馬車の扉が閉まる直前に、勇気を出して呼んだ。
破顔して涙を零すレオナルト公爵が見えると共に、扉は閉まった。
馬車は走り出す。
丘を下り、領地を出るとしばらく森が続く。
辺り一面緑に囲まれ、北へと向かう。その馬車の中で私たちはキスをしていた。
一度触れ合ってしまえば我慢は効かなかった。する必要もなかった。
やっと、この日を迎えたのだ。
草原の丘で出会ったあの日がとてつもなく遠い日だったように思える。
「エノ様が諦めないでいてくれたお陰です」
「当たり前だ。エクラが誰の許へ行こうが、どんな手を使ってでも俺のものにして見せたよ。やっと見つけた運命の番なんだから」
「私は自分に自信などありませんでしたから、エノ様から好意を向けていただけるなんて夢の様です。こうして触れ合えていると、やっと自覚を持てます。私がエノ様のものだと」
「早く番になりたい。この細い首に俺の噛み痕をくっきりと刻み込みたい」
そう言いながら頸を鼻先でくすぐる。
「甘い。エクラの匂いだ」
首許で囁かれ、息がかかる。
「あっ……」甘い声が漏れ、下腹の奥が疼いた。
抑制剤は飲んでいるが強いものにはしなかった。
前回の馬車での情交を忘れられなかったのだ。
強い薬でもエルネスト王子殿下相手にはしっかりとは効かない。
それを弱い薬に変えればどうなるのか……。自分でも大胆な行動をとったと驚いている。
フィリオンとセリオは私よりも先に番になったと聞いたからかもしれない。
エルネスト王子殿下の理性を崩したかったのかもしれない。
馬車の移動中、とにかく一瞬も離れたくなかった。
私のフェロモンに当てられているのか、エルネスト王子殿下もいつになく興奮していると感じる。
以前よりもお互い抵抗もない。
それどころか、きっと次に閨を共にするときは繋がりたいと思っているだろう。そうであって欲しい。
私の孔にエルネスト王子殿下の男根が直ぐに這入るのは難しいが、彼が相手ならどんな苦痛も受け入れられる自信がある。
シャツのボタンに手がかかり、一つ一つ外れていく。
私もエルネスト王子殿下のボタンを外していった。
「積極的だね」
「時間がいくらあっても足りません。少しでもエノ様に触れていたいのです。……ダメですか?」
「嬉しいと言ってるんだ。エクラから求めてもらえるなんて、幸甚の至りだ」
「エノ様……抱きしめてください」
「いくらでも。抱きしめるだけじゃ終われない。時間はまだたっぷりとある。二人きりの時間を楽しもう」
エルネスト王子殿下に吸い込まれるように、体を密着させた。
私が住みやすいようにと、レオナルト公爵が改装までしてくれた、シンプルで居心地の良い部屋。
バルコニーから夜空を眺めるのが好きだった。
レオナルト公爵は、この部屋をこのまま置いておくと話してくれた。
「ここはエクラの実家だ。いつでも帰ってきなさい」
そう言ってくれたのが嬉しかった。
大広間へ降りていくと、エルネスト王子殿下が待っていてくれた。
「よく眠れた?」
「はい。お待たせしました。これから、よろしくお願いします」
「畏まらなくていい。やっと王家に連れて帰られる。この日をどれだけ夢に見ていたか」
「私もです。もう、エノ様のいない人生は考えられません」
「また長時間の移動になる。早速、出発しよう」
レオナルト公爵への挨拶もそこそこに、馬車に乗り込んだ。
二人は仕事でも会うから、特に話し込むことも必要なさそうだった。
「王都に出た時は一緒に食事に行こう、エクラ」
「はい。楽しみにしています。お父様」
「おとう……様。あ、あぁ……そうだな。エクラ、我が息子……」
ずっと呼び方に悩んでお父様と呼べずにいた。
でも、レオナルト公爵が私を息子だと言ってくれるように、私だってレオナルト公爵を父だと自慢したい。
照れくさいけれど、馬車の扉が閉まる直前に、勇気を出して呼んだ。
破顔して涙を零すレオナルト公爵が見えると共に、扉は閉まった。
馬車は走り出す。
丘を下り、領地を出るとしばらく森が続く。
辺り一面緑に囲まれ、北へと向かう。その馬車の中で私たちはキスをしていた。
一度触れ合ってしまえば我慢は効かなかった。する必要もなかった。
やっと、この日を迎えたのだ。
草原の丘で出会ったあの日がとてつもなく遠い日だったように思える。
「エノ様が諦めないでいてくれたお陰です」
「当たり前だ。エクラが誰の許へ行こうが、どんな手を使ってでも俺のものにして見せたよ。やっと見つけた運命の番なんだから」
「私は自分に自信などありませんでしたから、エノ様から好意を向けていただけるなんて夢の様です。こうして触れ合えていると、やっと自覚を持てます。私がエノ様のものだと」
「早く番になりたい。この細い首に俺の噛み痕をくっきりと刻み込みたい」
そう言いながら頸を鼻先でくすぐる。
「甘い。エクラの匂いだ」
首許で囁かれ、息がかかる。
「あっ……」甘い声が漏れ、下腹の奥が疼いた。
抑制剤は飲んでいるが強いものにはしなかった。
前回の馬車での情交を忘れられなかったのだ。
強い薬でもエルネスト王子殿下相手にはしっかりとは効かない。
それを弱い薬に変えればどうなるのか……。自分でも大胆な行動をとったと驚いている。
フィリオンとセリオは私よりも先に番になったと聞いたからかもしれない。
エルネスト王子殿下の理性を崩したかったのかもしれない。
馬車の移動中、とにかく一瞬も離れたくなかった。
私のフェロモンに当てられているのか、エルネスト王子殿下もいつになく興奮していると感じる。
以前よりもお互い抵抗もない。
それどころか、きっと次に閨を共にするときは繋がりたいと思っているだろう。そうであって欲しい。
私の孔にエルネスト王子殿下の男根が直ぐに這入るのは難しいが、彼が相手ならどんな苦痛も受け入れられる自信がある。
シャツのボタンに手がかかり、一つ一つ外れていく。
私もエルネスト王子殿下のボタンを外していった。
「積極的だね」
「時間がいくらあっても足りません。少しでもエノ様に触れていたいのです。……ダメですか?」
「嬉しいと言ってるんだ。エクラから求めてもらえるなんて、幸甚の至りだ」
「エノ様……抱きしめてください」
「いくらでも。抱きしめるだけじゃ終われない。時間はまだたっぷりとある。二人きりの時間を楽しもう」
エルネスト王子殿下に吸い込まれるように、体を密着させた。
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