【完結】満月に導かれし龍の淫紋 〜運命の番は闇落ち王子〜

亜沙美多郎

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本編

オーディン城

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「汝の真なる力、目覚めよ。今ここに顕現を!! 召喚!!」

 ハワード国王の胴から、鷹、象、孔雀、蠍、虎、全てが召喚された。

「ミッチェル、白鳥を飛ばして森の様子を見てきてくれ」

「承知しました」

 ミッチェルの召喚獣である白鳥が森の上空を飛んだ。白鳥を通じて見えた景色は、毒が広がりゆく様であった。

「これは……なんということなの……」

「どうした、ミッチェル?」

「森が毒に侵食されていますわ」

「なっ!! 一体なぜこんな事態に……近国からの侵略か。とにかく私の召喚獣を森へ行かせる」

 ハワードが召喚獣を森へ放とうとした時、ベネットが走り込んできた。

「国王様!!」

「ベネット! なんだこんな時に!」

「大変でございます。森に毒が……国民が見たところ、毒蜘蛛と毒蛇によるものだと」

「何? 誰かが悪魔に身を捧げたというのか!?」

「とても危険でございます。これ以上はミッチェル王妃の白鳥を飛ばすわけには……」

 もしも蛇の粘膜を飛ばされでもすれば、召喚獣が死滅してしまう。ハワードも直ぐに白鳥を呼び戻すよう指示した。

「国王様……」

「どうした、ベネット。一刻を争う。言いたいことがあれば躊躇っていないで全て吐け」

「はい。国のアルファが集結しております。国王様のご命令次第、召喚獣を発動させると」

「国民に被害でも出れば、私の責任だ。控えるように伝えろ」

「しかし……毒の広がり方が異常です。かなり大きな毒蜘蛛かと。このペースでは毒が森中に広がるまで一晩保たない状況です」

「そんなに、酷いのか……」

 ハワードは一瞬悩んだが、アルファのうち、肉食獣、鳥類のみ森に召喚させるよう指示した。

「最悪、象の雷魔法を使う。決して無茶はするなと伝えておけ。無駄に召喚獣を死なせてはいけない」

「かしこまりました」
 

 ベネットが部屋から出ていくと、ハワードも森へと急いだ。

「ミッチェル、召喚獣を持つオメガを集めておいてくれ。怪我人が出るだろう。直ぐに治療にあたれる準備を!」

「承知いたしました」

 ハワードは象の背に立つと、国のアルファに毒蜘蛛と毒蛇について説明した。

「毒蜘蛛の糸に触れてはいけない。毒蛇は粘膜に毒を持つ。もし、危険な状況になったときは逃げることを優先してくれ!」

 国民がハワードの言葉に耳を傾ける。

 外はもう薄暗い。梟の召喚獣が皆の目となり誘導すること。

 もし怪我人が出たときはハワードの孔雀が城の離れまで連れていく。

「敵を見つけ次第報告してくれ!! 行くぞ!!」

 象が一歩森へ踏み込むと、虎がその隣を走る。鷹は空高く飛び立った。蠍は土に潜り解毒作用のある液を分泌しながら敵を探す。

 モリスたちが森に毒を放った、僅か三十分後のことだ。

 たまたま国民が森に狩りをしに来ていた。その帰りに地響きに会い、毒蜘蛛の姿を目にした。

 この偶然が功を奏したのだ。正しい情報が直ぐにハワードの元に届けられた。

 直ぐに対応できたのは良かったが、モリスの毒糸、そして綜馬の毒入りの粘膜も、猛スピードで森へ広がっていく。特に毒蜘蛛は次々に放出され、一匹一匹の小ささは大きな獣の目には入りにくい。

 召喚獣たちも、炎魔法で毒糸だけを燃やし、水魔法で粘膜を流しながら森中を走り回る。

 それでも範囲が広すぎるのと、繁殖が早すぎるのとで、とてもじゃないが対応しきれない状況に陥った。


「猫神ちゃん、召喚獣なんて言っても愚かなものだと思わない? 僕の毒に次々と倒れて行っているじゃない」

 猫神とモリスの周りで召喚獣たちの悲鳴が聞こえてくる。

『お前の父が、国を守るために戦っておるのだぞ。なんとも思わないのか?』

「なんともって……それは僕のセリフだよ。今まで散々僕を放っておいて、今更じゃない? こんな事態になるまで、僕の本音になんか触れてもくれなかった」

 猫神は口先だけでフッと息を吐き笑った。

「何が可笑しいの?」

『子供が駄々を捏ねているだけだな』

「何をっ!! この森が滅びるのなんて、一晩もあれば十分だ!! お父様の象だって、僕の毒に叶うわけがない」

『お父様に相手にして欲しくて、拗ねているのか?』

「違う!! そんなんじゃない!!」

『カマルお兄様のように、両親から溺愛して欲しかった』

「違うって言ってるでしょ!!」

『両親の視線を、独り占めしたかっただけの餓鬼ではないか』

「違うーーーーーっっ!!!!!」

 モリスの叫びと共に、毒蜘蛛から大量の毒糸が放出され、猫神が張り巡らせた蔓に絡まりついた。

 蔓がみるみる枯れていく。

 それでも猫神は強気の体制を崩さなかった。

『お前も国王の強さくらい知っておろう? ま、強がりくらい、今のうちに吐いておけ』

 思いのほか早くからハワードが出てきたのは猫神にとっても好都合だった。

 モリスは少なからず、ハワードの行動が気になっている素振りを見せている。

 猫神はモリスの気をできるだけハワードへと向けた。

 もうすぐ満月が出る。それまでは何としてでもカマルたちを思い出させないよう、会話を誘導させる。

『父の子守唄でも聴きたいか? 何なら、国王をここまで連れてきてやっても良いぞ?』

「ふんっ。僕にお父様なんてもういない。僕は悪魔に身を捧げた。これからも、一人で生きていく」

『ソウマとやらと番になったのであろう?』

「あんなの、別に利用してやっただけだよ。何も役に立たないのに、城に住まわせる義理ないでしょ? 王位継承を譲るって言っただけで、すぐ話に乗ってきた。あんな嘘、信じて疑わないんだよ?」

 モリスがケラケラと笑う。

『まるで仲間とも思っておらん言種いいぐさだな』

「仲間? バカ言わないでよ。僕は自分が国王になる未来しか信じてない」

『そうか……』

 猫神はモリスと会話をしながら森を操っていた。ハワードが此処に辿り着くように。

「お前は……まさか……モリス?」

 モリスの背後から、ハワードと召喚獣が姿を見せた。

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