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本編
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突然の月詠からの申し出に、驚きを隠せない。
「でも、そんなの僕たちが勝手に決めていいことじゃないし……」
可能であれば代わってあげたい……? いや、僕はずっと憧れていた光の神・輝惺様に仕えるんだ。例え先生から交代を命じられても、応じられない。
輝惺様は、常に後光が差していて、とても美しいその銀白の毛がより一層輝ているそうだ。
微笑む表情には見惚れてしまい、我も忘れると聞く。
これは番になれなかった巫子が地上界で話していたのが天界まで届いたものだ。
この目でその姿を拝みたい。そして、その神様に仕えられるこのチャンスを逃すわけにはいかない。
月詠には悪いけど……。
「みんながそれぞれ頑張るしかないよ……」
「如月……。そりゃ、分かってるんだ。ちょっと弱音を吐いただけだよ」
二人で慰めるように抱きしめあった。
「大丈夫だよ、月詠。闇の神とは言え、銀狼七柱大神α様なんだから」
励まし合って家路に着く。
βの神様なら、悪さをする者もいる。そんな時は火の神様からの体裁を受ける。
それは人族も神様も変わらない。
でも僕達が相手にするのは、なんと言っても最上級の狼神様なんだ。噂では怖いとは言え、思い込みで嫌厭するのは良くない。
……と思う。
明日はいよいよ神界へと旅立つ。
それまでに各々の決意が固まっていればいいなと願う。
尻尾を抱え込んで横になると、明日への期待に胸を膨らませて眠りについた。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
そして翌日、早朝。
朝日と共に七人で神楽を舞う。
先生が本殿で大祓詞を読み上げる。
神界から光が降りてくると、僕達はその光に吸い込まれるように包み込まれた。
(さあ、これから僕達の巫子としてのお勤めが始まる!!)
神楽を舞い続けながらも、全員が同じ思いでいるのは確かだ。
息のあった神楽は光の中へと完全に吸収されるまで続けられた。
そして舞い終えた時、見上げる程大きな神殿の前に僕達は立っていた。
向かい合わせるように、銀狼七柱大神α様が並んでいる。
全員体が大きく、ピンと立った銀白の耳は凛々しい。
真っ白な衣に裳、腰には淡い青色の倭文布の帯。肩からは領布を掛けていて、手首には大きな勾玉の付いた手結を付けている。
真ん中にいるのが輝惺様だと直ぐに理解した。
銀狼でも輝惺様はスラリとしていて、白銀の髪は腰まである。手首の勾玉は太陽のような色をしていて、手には大きな八角の鏡を持っている。
(美しい……)
輝惺様の噂は本当だ。輝いて見えるのは、決して後光のせいだけではない。
凪が一歩前に出て、代表の挨拶をする。
「本日から、お仕えいたします。八乙女でございます。どうぞ宜しくお願い申し上げます」
全員揃って挨拶をすませると、それぞれの神様のところへと移動した。
近づくだけでも緊張する。
何か失礼なことをしでかしそうで怖い。
「光の神、輝惺様。私は如月と申します。どうぞ宜しくお願い申し上げます」
上擦る声で挨拶をすると、輝惺様が僕の顔を覗き込んだ。
「ふーん、お前ねぇ……。気に入らん。他の者に変えろ」
「えっ……?!」
顔を見ただけで拒否されてしまった。まさか、こんな事態を誰が予想していただろうか……。
他の神様からも注目が集まった。
「でも、そんなの僕たちが勝手に決めていいことじゃないし……」
可能であれば代わってあげたい……? いや、僕はずっと憧れていた光の神・輝惺様に仕えるんだ。例え先生から交代を命じられても、応じられない。
輝惺様は、常に後光が差していて、とても美しいその銀白の毛がより一層輝ているそうだ。
微笑む表情には見惚れてしまい、我も忘れると聞く。
これは番になれなかった巫子が地上界で話していたのが天界まで届いたものだ。
この目でその姿を拝みたい。そして、その神様に仕えられるこのチャンスを逃すわけにはいかない。
月詠には悪いけど……。
「みんながそれぞれ頑張るしかないよ……」
「如月……。そりゃ、分かってるんだ。ちょっと弱音を吐いただけだよ」
二人で慰めるように抱きしめあった。
「大丈夫だよ、月詠。闇の神とは言え、銀狼七柱大神α様なんだから」
励まし合って家路に着く。
βの神様なら、悪さをする者もいる。そんな時は火の神様からの体裁を受ける。
それは人族も神様も変わらない。
でも僕達が相手にするのは、なんと言っても最上級の狼神様なんだ。噂では怖いとは言え、思い込みで嫌厭するのは良くない。
……と思う。
明日はいよいよ神界へと旅立つ。
それまでに各々の決意が固まっていればいいなと願う。
尻尾を抱え込んで横になると、明日への期待に胸を膨らませて眠りについた。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
そして翌日、早朝。
朝日と共に七人で神楽を舞う。
先生が本殿で大祓詞を読み上げる。
神界から光が降りてくると、僕達はその光に吸い込まれるように包み込まれた。
(さあ、これから僕達の巫子としてのお勤めが始まる!!)
神楽を舞い続けながらも、全員が同じ思いでいるのは確かだ。
息のあった神楽は光の中へと完全に吸収されるまで続けられた。
そして舞い終えた時、見上げる程大きな神殿の前に僕達は立っていた。
向かい合わせるように、銀狼七柱大神α様が並んでいる。
全員体が大きく、ピンと立った銀白の耳は凛々しい。
真っ白な衣に裳、腰には淡い青色の倭文布の帯。肩からは領布を掛けていて、手首には大きな勾玉の付いた手結を付けている。
真ん中にいるのが輝惺様だと直ぐに理解した。
銀狼でも輝惺様はスラリとしていて、白銀の髪は腰まである。手首の勾玉は太陽のような色をしていて、手には大きな八角の鏡を持っている。
(美しい……)
輝惺様の噂は本当だ。輝いて見えるのは、決して後光のせいだけではない。
凪が一歩前に出て、代表の挨拶をする。
「本日から、お仕えいたします。八乙女でございます。どうぞ宜しくお願い申し上げます」
全員揃って挨拶をすませると、それぞれの神様のところへと移動した。
近づくだけでも緊張する。
何か失礼なことをしでかしそうで怖い。
「光の神、輝惺様。私は如月と申します。どうぞ宜しくお願い申し上げます」
上擦る声で挨拶をすると、輝惺様が僕の顔を覗き込んだ。
「ふーん、お前ねぇ……。気に入らん。他の者に変えろ」
「えっ……?!」
顔を見ただけで拒否されてしまった。まさか、こんな事態を誰が予想していただろうか……。
他の神様からも注目が集まった。
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