【完結】ダンスパーティーで騎士様と。〜インテリ俺様騎士団長α×ポンコツ元ヤン転生Ω〜

亜沙美多郎

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本編

19

 途中からは意識を失っていた。

 リアム様はベッドに俺を寝かせて以来、一度たりとも触れてこなかった。

 俺を探していたと言っておきながら、ヒートで苦しんでいるΩを目の前に触れもしないなんて……。



 どうやらあのまま朝までぐっすりと眠っていたらしく、目が覚めると、窓から朝日が差し込んでいた。

「目が覚めたようだな。気分は?」

「えっ? リ、リアム様? なんで?」

 ベッドに腰を下ろして俺の寝顔を眺めている。

 いつからそうしてたんだろう。

「昨夜は先生が強めの抑制剤を注射してくれた。今日一日くらいは保つみたいだが……」

「あの。なんでリアム様が俺をこんなところに連れてきた……ましたか?」

 訳がわからない。

 選ばれる理由がない。

 厨房の下っ端の下っ端である俺が。しかもΩの俺が。

「ずっと君を探していたんだ。あの日、私と目が合ったのを忘れたとは言わせないよ? 強く惹きつけられたはずなのだから」

「どうして、そんなの言いきれますのか? 俺が覚えてないって言ってしまうと、どうなることですの?」

「……無理して敬語を使わなくていい。あの従業員には親しく喋っていただろう?」

「ジェイクは……。同志みたいなものですのに……」

 リアム様は声を出して笑った。

 笑顔は意外にも無邪気で驚いた。

 (こんな顔で笑うんだ)

「わ、笑っても!! リアム様が偉い人だってくらいは分かりますから!!」

「じゃあ、お願いするとしよう。普通に喋ってくれ。昨日の従業員とのように」

 そんな簡単に言われても、直ぐにできるもんじゃない。


「聞いても良いのですか?」

「なんだ?」

「なんで俺を探してたの? ……でしょう、か?」

「君が、私の運命の番だからだよ」

「はぁぁあああっっ??? なんで? そんなの一回会っただけで分かるわけない!! ……ですけども」

 つい、リアム様に向かってガンを飛ばしてしまった。

 でも今のはリアム様が悪い。突然『運命の番』なんて言われて驚かないヤツなんていない。

 それにしても、思わず若かりし頃の癖が出ちゃうとは、俺もまだまだ……

「なんだ? 誘っているのか?」

 睨んでるんだよ!! なんでこの顔が誘ってる顔に映るんだ? 

 ベッドのクッションを一つ掴み、勢いつけて顔を埋めた。

「そんな上目遣いで頬を膨らますなんて、直ぐにでも私を欲しているのかと思うじゃないか。しかし、たった一目で運命を感じたのは、私だけではないだろう?」

 枕の上から指を突っ込み覗き込む。

「何よりの証拠が、君のそのヒートだ。一回目では確信が持てなかった。だからどうしても、もう一度会いたかったのだ」

「で、まんまと俺がヒートを起こした……」

「そうだ」

 俺は枕から目だけを出し、それでも視線は外して尋ねた。

「それだけで運命の番なんて決めつけていい……大丈夫なの? ですかな?」

「今は抑制剤が効いているから平気だろうが、それが切れたら……。次こそは自覚する他ないと思うよ」

 リアム様は至って穏やかなままだ。

 きっと俺がどんなに言い返しても、上手く丸め込まれるんだ。

「……じゃあ、なんで昨日、少しも触れなかったの?」

「君は触れてほしかった?」

「ちがっ!! そんなんじゃなくて!!」

「……やっと私の顔を見たね」

 吸い込まれそうな瞳はグリーン掛かっていて、一度目が合ってしまえば逸らせなくなる。

「昨日の状態で私が君に触れてしまえば、もう君が会ってくれなくなることくらい分かる」

「じゃあ、俺とリアム様には次もあるってこと?」

「ある」

「なんで言い切れますのですか?」

「君は私のことが好きだよ。本能でね」

 リアム様は満足そうに微笑んで、「朝食を食べよう」と言って立ち上がった。



 
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