33 / 78
本編
33
リアム様が部屋に帰ってくるまで随分と待った。
きっとアンジュさんとの時間を楽しんでいるんだ。俺という番がいながら、自宅に帰った瞬間もう浮気か? あれ? もしかして俺が浮気相手のパターンだったりして……。
あの時のリアム様を信じたい。
でも目の当たりにしてしまったアンジュさんとの抱擁。
この国では挨拶でハグをするのか? それにしてもあんなにもしっかりと抱き合うなんてするものか。
あの二人を見た後で、俺はどんな顔してリアム様と過ごせば良いんだ。
本当は逃げ出したいくらいだが、今日はもうここを抜け出すなんてできないし。
……早くもホテルに帰りたくなってしまった。
運命の番ともなれば、悩みなんてなくなるのかと思ってたが、そんなことはない。
実際アンジュさんと話をして、美人の上に良い人だと知っている。
俺とアンジュさん。例えばどっちと結婚する? そりゃ誰だってアンジュさんを取るだろう。
もし俺がαでもアンジュさんと結婚したいって思う。
広い部屋のどこで何をして過ごせば良いかも分からず、少しでも居心地の良い場所を探した結果、窓際のカーテンに包まってしゃがみ込んだ。
部屋のライトの灯し方すら分からず、だんだんと外と同じように暗くなっていく。
今の俺の気持ちと同じだ。月でも見えれば少しは癒されたかもしれないが、まだそんな時間ではなかった。
薄暗い部屋で、明日なんと言ってここから出ようか。そればかり考えて過ごす。
突然ドアの開く音と同時に部屋の灯りが点いた。リアム様が帰って来たのだ。
少しの間、リアム様は部屋の奥まで入らなかった。
そして歩き始めると、迷いなく窓際に近寄り、俺が隠れていたカーテンを捲った。
「ただいま。マヒロは何故こんな所に隠れているんだ?」
「…………」
リアム様に顔を覗きこまれ、顔を逸らす。
また元の服に戻っている。公私混同しないタイプだな。これが『できる男』の手本だ。
俺なんて、厨房で働いてまた自室に帰ってくるまで一度だって着替えたりしない。
なんなら、今だってホールの助っ人で借りた時の黒スーツをそのまま着ている。
やはり生きる世界が違いすぎるんだ。
「何かあったか? もしかして、誰かがここに来たとか?」
俺は何も喋らず首を横に振った。
「何故喋らない? 聞かせてくれないと分からないじゃないか」
そんなの、言えるものなら言いたいさ。
でも『夕方に綺麗な女の人と抱き合っていましたね』なんて俺の口から言えというのか?
そしてそれを言われた時、リアム様はどんな反応をするんだ?
全てが恐怖でしかない。
「———今は、誰とも喋りたくない」
「マヒロ。私にも言えないような何かがあったんだろう?」
俺に向き合ってリアム様もしゃがみ込んだ。
しまった、ここは部屋の角だ。逃げようにも逃げられない。
「そんな悲しい顔をするなんて、余程のことだろう? 無理せず話てくれないか?」
いつもは俺様なリアム様がこんな優しい口調で喋るなんて、益々怪しい。
「やっぱり……来るんじゃなかった……」
「っ!? 何故そんな……いきなり一人にしてしまったのは悪かった。どうしてもやらなきゃいけない仕事があったのだ」
そんなことを怒ってるんじゃない。
何故アンジュさんの話題をリアム様から出さないんだ?
リアム様こそ、何故隠し事をしているんだ?
膝を抱え込んで顔を埋めた。
「一人になりたい……」
きっとアンジュさんとの時間を楽しんでいるんだ。俺という番がいながら、自宅に帰った瞬間もう浮気か? あれ? もしかして俺が浮気相手のパターンだったりして……。
あの時のリアム様を信じたい。
でも目の当たりにしてしまったアンジュさんとの抱擁。
この国では挨拶でハグをするのか? それにしてもあんなにもしっかりと抱き合うなんてするものか。
あの二人を見た後で、俺はどんな顔してリアム様と過ごせば良いんだ。
本当は逃げ出したいくらいだが、今日はもうここを抜け出すなんてできないし。
……早くもホテルに帰りたくなってしまった。
運命の番ともなれば、悩みなんてなくなるのかと思ってたが、そんなことはない。
実際アンジュさんと話をして、美人の上に良い人だと知っている。
俺とアンジュさん。例えばどっちと結婚する? そりゃ誰だってアンジュさんを取るだろう。
もし俺がαでもアンジュさんと結婚したいって思う。
広い部屋のどこで何をして過ごせば良いかも分からず、少しでも居心地の良い場所を探した結果、窓際のカーテンに包まってしゃがみ込んだ。
部屋のライトの灯し方すら分からず、だんだんと外と同じように暗くなっていく。
今の俺の気持ちと同じだ。月でも見えれば少しは癒されたかもしれないが、まだそんな時間ではなかった。
薄暗い部屋で、明日なんと言ってここから出ようか。そればかり考えて過ごす。
突然ドアの開く音と同時に部屋の灯りが点いた。リアム様が帰って来たのだ。
少しの間、リアム様は部屋の奥まで入らなかった。
そして歩き始めると、迷いなく窓際に近寄り、俺が隠れていたカーテンを捲った。
「ただいま。マヒロは何故こんな所に隠れているんだ?」
「…………」
リアム様に顔を覗きこまれ、顔を逸らす。
また元の服に戻っている。公私混同しないタイプだな。これが『できる男』の手本だ。
俺なんて、厨房で働いてまた自室に帰ってくるまで一度だって着替えたりしない。
なんなら、今だってホールの助っ人で借りた時の黒スーツをそのまま着ている。
やはり生きる世界が違いすぎるんだ。
「何かあったか? もしかして、誰かがここに来たとか?」
俺は何も喋らず首を横に振った。
「何故喋らない? 聞かせてくれないと分からないじゃないか」
そんなの、言えるものなら言いたいさ。
でも『夕方に綺麗な女の人と抱き合っていましたね』なんて俺の口から言えというのか?
そしてそれを言われた時、リアム様はどんな反応をするんだ?
全てが恐怖でしかない。
「———今は、誰とも喋りたくない」
「マヒロ。私にも言えないような何かがあったんだろう?」
俺に向き合ってリアム様もしゃがみ込んだ。
しまった、ここは部屋の角だ。逃げようにも逃げられない。
「そんな悲しい顔をするなんて、余程のことだろう? 無理せず話てくれないか?」
いつもは俺様なリアム様がこんな優しい口調で喋るなんて、益々怪しい。
「やっぱり……来るんじゃなかった……」
「っ!? 何故そんな……いきなり一人にしてしまったのは悪かった。どうしてもやらなきゃいけない仕事があったのだ」
そんなことを怒ってるんじゃない。
何故アンジュさんの話題をリアム様から出さないんだ?
リアム様こそ、何故隠し事をしているんだ?
膝を抱え込んで顔を埋めた。
「一人になりたい……」
あなたにおすすめの小説
魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!
松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。
15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。
その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。
そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。
だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。
そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。
「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。
前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。
だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!?
「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」
初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!?
銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。
不憫王子に転生したら、獣人王太子の番になりました
織緒こん
BL
日本の大学生だった前世の記憶を持つクラフトクリフは異世界の王子に転生したものの、母親の身分が低く、同母の姉と共に継母である王妃に虐げられていた。そんなある日、父王が獣人族の国へ戦争を仕掛け、あっという間に負けてしまう。戦勝国の代表として乗り込んできたのは、なんと獅子獣人の王太子のリカルデロ! 彼は臣下にクラフトクリフを戦利品として側妃にしたらどうかとすすめられるが、王子があまりに痩せて見すぼらしいせいか、きっぱり「いらない」と断る。それでもクラフトクリフの処遇を決めかねた臣下たちは、彼をリカルデロの後宮に入れた。そこで、しばらく世話をされたクラフトクリフはやがて健康を取り戻し、再び、リカルデロと会う。すると、何故か、リカルデロは突然、クラフトクリフを溺愛し始めた。リカルデロの態度に心当たりのないクラフトクリフは情熱的な彼に戸惑うばかりで――!?
魔王様は俺のクラスメートでした
棚から現ナマ
BL
前世を憶えている主人公ミルは、チートもなくラノベのような世界で、ごく平凡に庭師見習いとして働いて暮らしていた。 ある日、なぜか魔王様に踏まれてしまったミルは、魔王様が前世のクラスメートだったことに気が付き、おもわず名前を呼んでしまう。 呼ばれた魔王様はミルを自分の王宮に連れ込んで……。 逃げたいミルと、どうしても手放せない魔王様の話し。もちろんハッピーエンド。
悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――
ロ
BL
「ずっと前から、おまえが好きなんだ」
と、俺を容赦なく犯している男は、互いに互いを嫌い合っている(筈の)騎士様で――――。
「悪役令嬢」に仕えている性悪で悪辣な従者が、「没落エンド」とやらを回避しようと、裏で暗躍していたら、大嫌いな騎士様に見つかってしまった。双方の利益のために手を組んだものの、嫌いなことに変わりはないので、うっかり煽ってやったら、何故かがっつり喰われてしまった話。
※ムーンライトノベルズでも公開しています(https://novel18.syosetu.com/n4448gl/)
氷の支配者と偽りのベータ。過労で倒れたら冷徹上司(銀狼)に拾われ、極上の溺愛生活が始まりました。
水凪しおん
BL
※この作品には、性的描写の表現が含まれています。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
オメガであることを隠し、メガバンクで身を粉にして働く、水瀬湊。
過労と理不尽な扱いで、心身ともに限界を迎えた夜、彼を救ったのは、冷徹で知られる超エリートα、橘蓮だった。
「君はもう、頑張らなくていい」
――それは、運命の番との出会い。
圧倒的な庇護と、独占欲に戸惑いながらも、湊の凍てついた心は、次第に溶かされていく。
理不尽な会社への華麗なる逆転劇と、極上に甘いオメガバース・オフィスラブ!
救世の神子として異世界に召喚されたと思ったら呪い解除の回復アイテムだった上にイケメン竜騎士のツガイにされてしまいました。
篠崎笙
BL
剣崎勝利の家は古武道で名を馳せていた。ある日突然異世界に召喚される。勇者としてではなく、竜騎士たちの呪いを解く道具として。竜騎士ゲオルギオスは、勝利をツガイにして、その体液で呪いを解いた。勝利と竜騎士たちは悪神討伐の旅へ向かったが……。
りんご成金のご令息
けい
BL
ノアには前世の記憶はあったがあまり役には立っていなかった。そもそもあまりにもあいまい過ぎた。魔力も身体能力も平凡で何か才能があるわけでもない。幸いにも裕福な商家の末っ子に生まれた彼は、真面目に学んで身を立てようとコツコツと勉強する。おかげで王都の学園で教育を受けられるようになったが、在学中に両親と兄が死に、店も乗っ取られ、残された姉と彼女の息子を育てるために学園を出て冒険者として生きていくことになる。
それから二年がたち、冒険者としていろいろあった後、ノアは学園の寮で同室だった同級生、ロイと再会する。彼が手を貸してくれたおかげで、生活に余裕が出て、目標に向けて頑張る時間もとれて、このまま姉と甥っ子と静かに暮らしていければいいと思っていたところ、姉が再婚して家を出て、ノアは一人になってしまう。新しい住処を探そうとするノアに、ロイは同居を持ち掛ける。ロイ×ノア。ふんわりした異世界転生もの。
他サイトにも投稿しています。
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!