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spin-offージェイクと騎士ー
3
騎士団員はとにかくパーティーが好きだ。
十日毎くらいのペースでダンスパーティーを開く。
そのお蔭で、ルイさんともよく顔を合わせるようになっていた。
初めてパーティーへ来た日から、ほぼ毎回ベルガルドさんに連れられてきているのに、未だに華やかな場所に慣れる気配はなかった。
それどころか、ますます緊張と周りへの警戒心が強まっている気さえする。
俺にはようやく少し心を開いてくれていそうな感触はあるが、ここでグイグイ迫ればまた扉を閉められそうだ。慎重に接しなければならない。
しかし嬉しいことにパーティー会場でいつもベルガルドさんの背後に隠れているが、俺を見るや否や、子犬のように走り寄ってくる。
その度、抱き止めたくなるのを必死に我慢していると彼は知らない。
とはいえ走り寄った後は俺の陰に身を潜め、パーティーを抜け出すタイミングを見計らっているだけなのだけど……。
「まだ、このような雰囲気には慣れませんか?」
俺の腕から少し顔を出し、会場を見ているルイさんが頷く。
ホテルの従業員からすると、折角来てくれたのだから楽しんでほしい。
「今日、よければ少し踊ってみませんか? もちろん私と」
思い切って誘ってみると、目を見開き勢いよく首を横に振った。
俺の腕を掴む手に力が入る。
そんなに嫌がらなくても……と思いながら、その怯えた子犬のような彼を構いたくて仕方がない。
パーティーでこんなにも怯えている彼が、騎士団員として働いている姿を想像しようとしてもまるで思い描けない。
ベルガルドさんが剣の腕はいいと言っていた。
その様子を見る機会があればいいのに……。と横目で眺めながら考えていた。
「そうだ。ガーデンを散歩しませんか?」
「……外?」
会場の熱気で殆ど聞こえないルイさんの声を、なんとか逃さず聞くことができた。
「そうです。ルイさん、人の熱気に酔ってきたんじゃないですか?」
「い、行きます!!」
思ったよりも良い反応が返ってきた。
よっぽど会場から出たいのか、俺の腕をぐいっと引っ張り顔を寄せた。
「あっ……。すみま……せん」
「くすくす……、いえ、嬉しいですよ。では、こちらからどうぞ」
ダンスをしている輪とは反対の方向へ歩き出す。
ホテルの中庭は程よい広さのガーデンがあり、ここでティータイムを取ることもできる。宿泊中の楽しみの一つにして頂けることが多い。
「わぁ……綺麗……」
ルイさんもガーデンを気に入ってくれたようだ。緑豊かなのが良いのかもしれない。
ライトアップされた木々が、神秘的な光を放っている。
「こちらに座りましょう」
ベンチに誘導して並んで腰を下ろす。
ルイさんが座った途端、ため息を吐いた。
「ルイさんの出身はどこです?」
「えっ、あっ、あの……田舎者って分かります……よね? やっぱり……」
会場にいる時より、随分しっかりと返事をしてくれる。
二人きりの方が緊張しないのだろうか。
「ルイさんの見た目で言ってるんじゃありません。この街の方がダンスパーティーが生きがいのような方ばかりなので」
「そうですね……僕は農業が盛んな田舎から出てきました」
「それは凄い! 剣が得意だと仰っていましたが、田舎から騎士団に入るのは難しいでしょう?」
しかもルイさんが在籍する騎士団はリアム様が騎士団長を務める、もっとも人気の騎士団だ。
「運が良かっただけです……」
なんて誤魔化すように言うけれど、運だけで入れるような騎士団じゃない。
「剣はいつから習っているのですか?」
「……習ったことない」
「本当に?」
話せば話すほど興味が湧いてくる。小柄で童顔、それでいて騎士団に入れるほどの剣術を身につけているのに、剣を習ったことがないなんて……。
いつもなら、そろそろ会場を抜け出して帰っている時間なのだが……本当は帰したくない。
「そろそろ、出られますか?」
「あ、はい。もう帰りたいです」
やはり、無理矢理はいけないか……。
「会場に戻らずに帰れますので、こちらからどうぞ」
エントランスに直接つながっているドアを案内した。
チラチラと俺を見上げる視線を感じている。きっと俺からも見てしまえば、また俯いてしまうだろう。
軽く会釈をしただけで飛び出すようにホテルを後にした。
足早に帰るルイさんの背中を見送った。
十日毎くらいのペースでダンスパーティーを開く。
そのお蔭で、ルイさんともよく顔を合わせるようになっていた。
初めてパーティーへ来た日から、ほぼ毎回ベルガルドさんに連れられてきているのに、未だに華やかな場所に慣れる気配はなかった。
それどころか、ますます緊張と周りへの警戒心が強まっている気さえする。
俺にはようやく少し心を開いてくれていそうな感触はあるが、ここでグイグイ迫ればまた扉を閉められそうだ。慎重に接しなければならない。
しかし嬉しいことにパーティー会場でいつもベルガルドさんの背後に隠れているが、俺を見るや否や、子犬のように走り寄ってくる。
その度、抱き止めたくなるのを必死に我慢していると彼は知らない。
とはいえ走り寄った後は俺の陰に身を潜め、パーティーを抜け出すタイミングを見計らっているだけなのだけど……。
「まだ、このような雰囲気には慣れませんか?」
俺の腕から少し顔を出し、会場を見ているルイさんが頷く。
ホテルの従業員からすると、折角来てくれたのだから楽しんでほしい。
「今日、よければ少し踊ってみませんか? もちろん私と」
思い切って誘ってみると、目を見開き勢いよく首を横に振った。
俺の腕を掴む手に力が入る。
そんなに嫌がらなくても……と思いながら、その怯えた子犬のような彼を構いたくて仕方がない。
パーティーでこんなにも怯えている彼が、騎士団員として働いている姿を想像しようとしてもまるで思い描けない。
ベルガルドさんが剣の腕はいいと言っていた。
その様子を見る機会があればいいのに……。と横目で眺めながら考えていた。
「そうだ。ガーデンを散歩しませんか?」
「……外?」
会場の熱気で殆ど聞こえないルイさんの声を、なんとか逃さず聞くことができた。
「そうです。ルイさん、人の熱気に酔ってきたんじゃないですか?」
「い、行きます!!」
思ったよりも良い反応が返ってきた。
よっぽど会場から出たいのか、俺の腕をぐいっと引っ張り顔を寄せた。
「あっ……。すみま……せん」
「くすくす……、いえ、嬉しいですよ。では、こちらからどうぞ」
ダンスをしている輪とは反対の方向へ歩き出す。
ホテルの中庭は程よい広さのガーデンがあり、ここでティータイムを取ることもできる。宿泊中の楽しみの一つにして頂けることが多い。
「わぁ……綺麗……」
ルイさんもガーデンを気に入ってくれたようだ。緑豊かなのが良いのかもしれない。
ライトアップされた木々が、神秘的な光を放っている。
「こちらに座りましょう」
ベンチに誘導して並んで腰を下ろす。
ルイさんが座った途端、ため息を吐いた。
「ルイさんの出身はどこです?」
「えっ、あっ、あの……田舎者って分かります……よね? やっぱり……」
会場にいる時より、随分しっかりと返事をしてくれる。
二人きりの方が緊張しないのだろうか。
「ルイさんの見た目で言ってるんじゃありません。この街の方がダンスパーティーが生きがいのような方ばかりなので」
「そうですね……僕は農業が盛んな田舎から出てきました」
「それは凄い! 剣が得意だと仰っていましたが、田舎から騎士団に入るのは難しいでしょう?」
しかもルイさんが在籍する騎士団はリアム様が騎士団長を務める、もっとも人気の騎士団だ。
「運が良かっただけです……」
なんて誤魔化すように言うけれど、運だけで入れるような騎士団じゃない。
「剣はいつから習っているのですか?」
「……習ったことない」
「本当に?」
話せば話すほど興味が湧いてくる。小柄で童顔、それでいて騎士団に入れるほどの剣術を身につけているのに、剣を習ったことがないなんて……。
いつもなら、そろそろ会場を抜け出して帰っている時間なのだが……本当は帰したくない。
「そろそろ、出られますか?」
「あ、はい。もう帰りたいです」
やはり、無理矢理はいけないか……。
「会場に戻らずに帰れますので、こちらからどうぞ」
エントランスに直接つながっているドアを案内した。
チラチラと俺を見上げる視線を感じている。きっと俺からも見てしまえば、また俯いてしまうだろう。
軽く会釈をしただけで飛び出すようにホテルを後にした。
足早に帰るルイさんの背中を見送った。
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