ソラと星と足跡と

あるいろい

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5day

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学校に今日は行けた。
と思ったら、相変わらず恋人は不機嫌そうだった。
また当たられると今荒れている僕としてはたまらないので、休憩時間もずっと勉強していた。
気がつくと自習ではなく、授業に変わっていった。
予習をしながら聞くのであまり関係ないものの、前でいつもの様に語る先生の雑談に耳を傾けてしまう。
「デートDVってみんな知ってる?」
「何それー」
誰ともなくクラスメイト達がその話題に乗って教室が賑やかになっていった。
「相手の顔色を窺うようになって、相手の気持ちに振り回されるんだってー」
「え、もしかしてうちデートDVしてた⁈え、やだ彼氏に謝んないと!」
「あんたのそれはただの甘えでしょ!」
「んー、この問題は結構難しいよね。
時と場合に寄ることもあるからねー
ま、あれかな。自分の意見を言いずらくなってたら支配されてるのかもね。
相手にその気がなくても、いつの間にかそうなってたりもするだろうし」
あまりにも自分と恋人の関係に当てはまっていて、逆に笑いそうになった。
興味がなさそうに予習に集中しているフリをしながら恋人が居る方向に一瞬だけ注意を向ける。
「私よく恋人にメッセ連投する側だからな~」
どうやら友達と話をしているらしい。
流石に聞くに耐えなかったのですぐに予習に集中する。
この後、恋人にこの話題を振られるんだろうなと思うと、心なしかシャーペンを持つ手が重くなった気がした。


放課後になり、帰宅する前に和菓子屋さんでスイートポテトを買ってから塾で自習をした。
すっかり夜も更けて一息ついた頃に僕は楽しみにしていたスイートポテトをちまちま食べ、
片手で日記を書きながら今日のことを思い出す。
案の定、恋人と途中まで一緒に帰ることになってデートDVの話になった。
正直に言おう。ストレスしか溜まらなかった。
“ぼくデートDVしてた?”
予測してた言葉と一語一句全く同じあの言葉。
『んー、考えたこと無いかなぁ』
“それはそれで私に興味ないの?”と頭の中で記憶が再生される。
いつものことで、自分も悪いところがあるから仕方ないと耐えていたのに、
こうしていざ伝えられる状況になっても『してたよ』なんて言えるわけでも無かった。
そんなことを思い出しながら日記を書いて、単語帳に手を伸ばす。
勉強する度に恋人の姿が頭の中でチラつく。
恋人に勉強道具を貸してもらっているが、叔母に昔から他人から物をもらってはいけない。借りない。
と教えられてきたので、いまだにこの状況に気が引けてストレスが溜まる。
恋人はその方が尽くせてる実感があるらしいが、そうして刷り込まれたものには逆らえず、
罪悪感が纏わりついている感じがずっと抜けないでいた。
『ああ、別れたい。明日も学校に行きたくない。』
そう思いながら何かをするのが最近続いている。
雑念を忘れようと次は本に手を伸ばした。
こうして逃げる僕も嫌いだ。と思いながら。
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