婚約破棄王子は魔獣の子を孕む〜愛でて愛でられ〜《完結》

クリム

文字の大きさ
17 / 54

16 マナの同調と制御

しおりを挟む
 皆から大幅に遅れて学舎の庭に歩いていくと、庭では三人がマナを制御する訓練をしていた。僕とジェスが遅いからか、クロルが門扉の前で待っている。

「殿……サリオン、顔が青いですよ」

 そんなに顔色が悪いのかな。僕はジェスと手を握ったまま、

「少し吐いただけだ。心配はいらない」

と答えた。するとクロルはターク先生に振り向いて動揺した声を上げる。

「ターク殿、サリオンには無理だと私は話しました」

 ターク先生は笑いながら、

「過保護ですよ、クロル。セシルもやり通しました。繰り返せばこなせるようになります。体力不足では万が一マナが尽きた時、体内気力のオドから賄うことが出来ません」

クロルを指差した。

「それに、セシルはハンロックにおぶられて帰りましたから、歩いて戻ったサリオンはかなり見込みがあります」

 ターク先生は僕とジェスを招き入れ、テラスに座らせる。それから僕とジェスの頭を撫でてから、お茶を出してくれた。

「薄荷茶です。口がすっきりしますよ」

 冷たいのは氷が入っているからで僕はお茶を飲みながら、ミーメたちの様子を見ていた。

「俺も訓練に入るから、サリオンは落ち着いたら来いよ」

 ジェスが薄荷茶を煽るように飲んでから、魔法制御のために庭に出て行く。一度爆発的に魔力を解放して、身に戻すのを繰り返すのだ。

 ミーメとスターは二人で両手を合わせて難なくこなしていている。

「双子はマナの質が近いので、同調し互いに調整し合うことができます」

 ターク先生がそう話してくれた。ドナムンドとザックは一人で制御をしている。うまくやっている中で、ジェスの小さな舌打ちが聞こえてジェスを見ると、可視化の陣の中で膨大な魔力を持て余しているようだった。

「ジェス」

 僕は薄荷茶を少し残して陣に入り、ジェスの前に両手を出した。

「サリオン?」

 僕はジェスの手を取り魔力を放出して、ジェスと同じだけ広げる。ジェスのマナと同じだけ出してみるとなかなかすっきりして、そのあとゆっくりとジェスが僕の手に手を合わせた。ジェスが不安そうな声を上げる。

「大丈夫だよ、同調しよう」

「待ちなさい、双子のマナとは違いーーえっ?」

 ターク先生の声が聞こえたが、僕はジェスのマナ量まで上げて、ジェスのマナを感じながらゆっくりと身に収めていく。するとジェスのマナも徐々に小さくなり、僕らはマナを制御しながら完全に身に収めることが出来た。

「ね、簡単だろ」

「え、うわ、うわーー、すげーー。婆様、俺、制御できた。サリオン、もっとマナを出していいか!」

 ジェスが僕の両手を握り締めながら、マナを一気に出し始める。僕はそのマナに引きづられてマナを放出し、可視化の陣が揺らいだ。

「防御陣展開!」

 ターク先生の声と共に金の魔法陣が展開される。僕とジェスのマナに煽られて、ミーメとスターが飛ばされそうになり、ドナムンドとザックは風圧で転がってターク先生の陣に包まれた。怪我はしていないみたいだ。

「ジェス、落ち着いて!」

 ジェスは半泣きで僕を見上げる。マナが暴走しているのか、どんどん膨れ上がっていた。僕もそれを感じる。同調連鎖だ。

「お、俺……っ!」

「大丈夫っ……だよ!」

 手だけではだめだ。僕はジェスの小さな身体を抱きしめて、僕のマナを一気に放出して、ジェスのマナを包み込むと、

「僕がマナで押すから!」

少しずつマナで圧をかけて行く。

「わ、分かった」

 ジェスは僕の肩口に額をつけて何度もしゃくり上げながら、体内へマナを戻して行く。ふと、ハンロックに言われたことを思い出した。

「ジェス、ジェス。マナを折りたたむようにして戻すんだ」

 洋服もたためば小さくなる。それを繰り返してマナを溜める第二の心臓に定着させる。すると爆発的にマナが必要になった時には数倍も膨れ上がる。

「う、うんっ!俺、やってみる」

 膨らんでいた紙袋が折りたたまれて行くように次第に抵抗がなくなって行くジェスのマナは、ふわりと消えた。僕らは抱き合いながら地面にへたり込む。僕はこんなに全力でマナを放出したことはなかったから、すごく疲れて一歩も歩けないでいた。

 ターク先生がにこにことしながら、

「治癒魔法陣、展開」

と僕とジェスに癒しを掛けてくれ、僕は駆け寄ってきたドナムンドが手を貸してくれて立ち上がった。

「ありがとう、ドナムンド」

「どういたしまして、サリオン。それにしても二人ともすごい魔力量だね。王族に匹敵するんじゃない?」

 僕は言葉を濁しながら、

「ジェスに引っ張られただけだよ。ね、ジェス」

 そう言うとジェスはまだ泣いていたから、僕は両手でジェスを抱き上げた。すごく軽いジェスの体重に驚きつつ、

「ジェス、立てる?」

そう聞くと、ジェスが僕の首にしがみついたまま、

「腰が抜けた。立てない」

と首を横に振ったから抱き上げたままターク先生のもとに集まる。ジェスは可愛い。可愛くて、胸が締め付けられる。そんな僕の後ろからドナムンドが、

「ジェスかぁ、強敵だなあ」

そんな風に呟いたが、どんな意味だろう。


ーーー

ターク先生とクロルですがいわゆる白い結婚で、しかもクロルはターク先生に全く頭が上がらない状態です。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】第三王子、ただいま輸送中。理由は多分、大臣です

ナポ
BL
ラクス王子、目覚めたら馬車の中。 理由は不明、手紙一通とパン一個。 どうやら「王宮の空気を乱したため、左遷」だそうです。 そんな理由でいいのか!? でもなぜか辺境での暮らしが思いのほか快適! 自由だし、食事は美味しいし、うるさい兄たちもいない! ……と思いきや、襲撃事件に巻き込まれたり、何かの教祖にされたり、ドタバタと騒がしい!!

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る

112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。 ★本編で出てこない世界観  男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する

スノウマン(ユッキー)
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。 そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。

処理中です...