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21 初めてのお泊まり
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夕食を軽く済ませて、部屋に入る。魔法学舎に泊まることを許されたのは、各自の部屋があるからだ。平民は毎日湯浴びをしないのだと知ったのも今日が初めてで、僕はかなり恵まれていたことを知る。今日は湯浴みはない。少し辛い感じがして身体を拭いた。
一人部屋だから部屋に鍵を掛けて月の光を浴びて魔獣化すると、森の中なら見つからないだろうと窓から音もなく飛び出した。魔法学舎の裏の森に入り込み、森の中を駆け抜ける。
気持ちいい。全力で駆け抜けると、月明かりを全身に浴びられる丘に出た。森の村レイダースが近くに見下ろすことが出来る。
『はー、久々に走ったぁーーあ、ああっ!鈍色っ!』
え、金の魔獣くん?
レイダース村の方向から一気に駆け抜てくるのは、金の魔獣くんだった。
『さが、探したんだぞっ!ずっ探していたんだぞっ!』
金の魔獣くんは低い丘に駆け上がるなり、僕の首髭に噛み付いてくる。ガウッで息を吐き鼻かがる獣声を吐きながら、何度も噛んで来た。あんまりしつこくてやめてほしくて、僕は唸りながら金の魔獣くんの首を噛んだ。
『か、か、噛んだ!首、噛んだ!』
『噛んだよ!だって君、しつこいんだもの』
僕は牙を剥いた。すると金の魔獣くんは目をまん丸にしてから、首を横に振った。
『まだ子供の牙……成人前なのか。だから、月が綺麗が伝わらないのか』
まだ成人していないのは魔獣くんも同じなくせに。僕より小さな魔獣くんは僕の横に伏せる。
『王太子って奴がレイダース村に来たから、従獣のお前がいるかもって。なあ、お前名前は?』
名前……従獣は名前で縛るから、魔獣にも名前がある。どうしよう。
『あのサ……リオン』
本名を言っ……て……
『リオンかあ!いい名前もらったな。リオンは王宮にいるのか?』
魔獣くん、聞き間違いをしてくれた。僕は胸を撫で下ろし、魔獣くんの横に座る。
『王宮はハーピィが守っているから、離宮にいるよ』
『離宮かあ。また、会いに行ってもいいか?警備の奴らに話しといてくれよ』
離宮の警備は薄いけど、金の魔獣くんが森を駆けて来て入れるのだろうか。
『でも、貴族に捕まると従獣にされてしまうよ。君はまだ小さいのだから』
小さすぎて僕の前足でいなしてしまいそうだ。
『じゃあ、お前が俺に名前をつけろ。王太子の従獣リオンのつが……いや友達なら捕まえるようなことはないだろ?』
確かにセシル兄様の従獣の友設定にしてしまえば簡単かもしれない。金の魔獣くんなら、金……
『オーロってどうだろう。単純に金色って意味なんだけど』
『オーロかあ、いいな。リオン、すごくいい。気持ちいいなあ。駆けるか!』
金の魔獣くんは僕から『オーロ』の名前を得て喜んで魔法学舎の横を駆け出した。僕は慌てて着いて行き、月夜のテラスにいるセシル兄様に見られてしまった。
「サ……」
声を掛けて来たセシル兄様に、
『従獣のリオン!です。王太子殿下!』
といつもより低い声で答える。セシル兄様は僕の意図を汲んだように微笑んで、
「そうだね、リオン。こちらの魔獣はお友達かい?」
と僕の頭を撫でながらオーロに目を向ける。
『リオンにオーロって名前をもらった。なあ、リオンは王宮で離宮の警護をしてるんだろ?たまに会いに行ってもいいか?』
「伝えておこう。僕の名前を出せば入れるよ。『セシルに呼ばれた』と言うといい」
オーロは
『やったぁ』
と小さく吠えて、セシル兄様の前で僕の顎髭を噛んでくるから、首筋を噛んで引き倒す。
『どうして噛むんだ!』
『リオンも噛んだ!』
「愛情表現だよ。オーロくんは嬉しいのじゃないかな?」
セシル兄様の声半分二人で戯れあってしまい、そのまままた野に駆け上がり月を見ていた。
『セシルは案外いい奴なんだな』
岩の上に寝転がるオーロが僕の胸髭に前足でじゃれついてくる。僕はオーロの頭を撫でる代わりに、ざりざりと舐めて岩に伏した。
すごく嬉しい。どうしよう、明日は夕方から卒業試験があるのに、このままずっとオーロと一緒にいたい。しばらく二匹でじゃれあっていた。でも魔獣の姿でいるのは月明かりのある時間だけだ。
『オーロ、僕、もう行くね』
中途半端な僕のことを話したくない。オーロの前では魔獣のリオンで居たくて、岩の上で立ち上がる。
『セシルのとこだな。また近いうちに離宮に行く。夜にな』
『うん、夜なら大丈夫』
オーロが森に走って行き、僕は魔法学舎へ戻り窓から自分の部屋に入り込む。布団に獣用のシーツが敷いてあり、僕はそこで丸くなった。もっと遊びたかったって思いながら。
でもそれはだめだ。僕は忌み実で半分魔獣のヒト族だ。魔獣のオーロを好きになってはだめだと言い聞かせた。
好き……?
僕は、いや違う、リオンはオーロが好きなんだ。どうしよう。僕は魔獣ではないのに。
僕はヒト族のサリオンと魔獣のリオンの狭間で悩みながら、寝落ちてしまった。
一人部屋だから部屋に鍵を掛けて月の光を浴びて魔獣化すると、森の中なら見つからないだろうと窓から音もなく飛び出した。魔法学舎の裏の森に入り込み、森の中を駆け抜ける。
気持ちいい。全力で駆け抜けると、月明かりを全身に浴びられる丘に出た。森の村レイダースが近くに見下ろすことが出来る。
『はー、久々に走ったぁーーあ、ああっ!鈍色っ!』
え、金の魔獣くん?
レイダース村の方向から一気に駆け抜てくるのは、金の魔獣くんだった。
『さが、探したんだぞっ!ずっ探していたんだぞっ!』
金の魔獣くんは低い丘に駆け上がるなり、僕の首髭に噛み付いてくる。ガウッで息を吐き鼻かがる獣声を吐きながら、何度も噛んで来た。あんまりしつこくてやめてほしくて、僕は唸りながら金の魔獣くんの首を噛んだ。
『か、か、噛んだ!首、噛んだ!』
『噛んだよ!だって君、しつこいんだもの』
僕は牙を剥いた。すると金の魔獣くんは目をまん丸にしてから、首を横に振った。
『まだ子供の牙……成人前なのか。だから、月が綺麗が伝わらないのか』
まだ成人していないのは魔獣くんも同じなくせに。僕より小さな魔獣くんは僕の横に伏せる。
『王太子って奴がレイダース村に来たから、従獣のお前がいるかもって。なあ、お前名前は?』
名前……従獣は名前で縛るから、魔獣にも名前がある。どうしよう。
『あのサ……リオン』
本名を言っ……て……
『リオンかあ!いい名前もらったな。リオンは王宮にいるのか?』
魔獣くん、聞き間違いをしてくれた。僕は胸を撫で下ろし、魔獣くんの横に座る。
『王宮はハーピィが守っているから、離宮にいるよ』
『離宮かあ。また、会いに行ってもいいか?警備の奴らに話しといてくれよ』
離宮の警備は薄いけど、金の魔獣くんが森を駆けて来て入れるのだろうか。
『でも、貴族に捕まると従獣にされてしまうよ。君はまだ小さいのだから』
小さすぎて僕の前足でいなしてしまいそうだ。
『じゃあ、お前が俺に名前をつけろ。王太子の従獣リオンのつが……いや友達なら捕まえるようなことはないだろ?』
確かにセシル兄様の従獣の友設定にしてしまえば簡単かもしれない。金の魔獣くんなら、金……
『オーロってどうだろう。単純に金色って意味なんだけど』
『オーロかあ、いいな。リオン、すごくいい。気持ちいいなあ。駆けるか!』
金の魔獣くんは僕から『オーロ』の名前を得て喜んで魔法学舎の横を駆け出した。僕は慌てて着いて行き、月夜のテラスにいるセシル兄様に見られてしまった。
「サ……」
声を掛けて来たセシル兄様に、
『従獣のリオン!です。王太子殿下!』
といつもより低い声で答える。セシル兄様は僕の意図を汲んだように微笑んで、
「そうだね、リオン。こちらの魔獣はお友達かい?」
と僕の頭を撫でながらオーロに目を向ける。
『リオンにオーロって名前をもらった。なあ、リオンは王宮で離宮の警護をしてるんだろ?たまに会いに行ってもいいか?』
「伝えておこう。僕の名前を出せば入れるよ。『セシルに呼ばれた』と言うといい」
オーロは
『やったぁ』
と小さく吠えて、セシル兄様の前で僕の顎髭を噛んでくるから、首筋を噛んで引き倒す。
『どうして噛むんだ!』
『リオンも噛んだ!』
「愛情表現だよ。オーロくんは嬉しいのじゃないかな?」
セシル兄様の声半分二人で戯れあってしまい、そのまままた野に駆け上がり月を見ていた。
『セシルは案外いい奴なんだな』
岩の上に寝転がるオーロが僕の胸髭に前足でじゃれついてくる。僕はオーロの頭を撫でる代わりに、ざりざりと舐めて岩に伏した。
すごく嬉しい。どうしよう、明日は夕方から卒業試験があるのに、このままずっとオーロと一緒にいたい。しばらく二匹でじゃれあっていた。でも魔獣の姿でいるのは月明かりのある時間だけだ。
『オーロ、僕、もう行くね』
中途半端な僕のことを話したくない。オーロの前では魔獣のリオンで居たくて、岩の上で立ち上がる。
『セシルのとこだな。また近いうちに離宮に行く。夜にな』
『うん、夜なら大丈夫』
オーロが森に走って行き、僕は魔法学舎へ戻り窓から自分の部屋に入り込む。布団に獣用のシーツが敷いてあり、僕はそこで丸くなった。もっと遊びたかったって思いながら。
でもそれはだめだ。僕は忌み実で半分魔獣のヒト族だ。魔獣のオーロを好きになってはだめだと言い聞かせた。
好き……?
僕は、いや違う、リオンはオーロが好きなんだ。どうしよう。僕は魔獣ではないのに。
僕はヒト族のサリオンと魔獣のリオンの狭間で悩みながら、寝落ちてしまった。
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