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39 黄王救出

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 直樹の持ってきた小瓶の中味を女官長カララがテアンの傷に垂らし、その小瓶の中身を見て甲高い悲鳴を上げる。
 
 テアンの傷口は出血が止まらずじゅくじゅくとしていたが、小瓶の液体を垂らすとゆっくりと出血が止まり、女官が肩から胸元の傷を合わせてくっつけるように押していて、カララがまた震えながら小瓶の液体を傾けた。

「やはり!白珠が……赤いなんてっ!レティ!黄王様を助けにいかないと駄目です!」

 同室の壁にもたれてレティと先程の宮外での話を煮詰めていたシンラは、おっとり刀だと思っていたカララの泣き声混じりの進言に驚く。

 部屋の隅でクロと黄虎と二匹の間で丸くなっていた直樹が、驚いて顔を上げた。

「カララ様?」

 レティが黄色の長髪を揺らして、カララの肩を掴まえて、動揺している涙するカララの顔を覗き見た。

「私たちの王の白珠が血に染まっているだなんて、無理をされているに違いありません。お可哀想に。許せません!レティが行かないならば、私が!」

 シンラがテアンの傷を見ると、薄い肉が膜のように患部を包み込み、急速に治癒し始めている。これが白珠の力かと驚かされた。

「カララ様、落ち着いてくださいまし。野盗は黄王様の白珠を手にして村に取引に行き、今日王宮に集まる手筈のようです。実際に宮の村から野盗が出てくるのを、武官が見ております」

 レティは宮回りの村の放火による混乱の後始末と、警備のために武官を散らばせており、今手元には両手程度しかいない。

 手練れとは聞いているが、シンラが手合わせした限り、レティの型を模している武官は、野盗の動きに打ち勝つことはできまいと、シンラは考えていた。

 だからこそ無頼の剣技を持つ赤王とその近衛レキに応援要請をしたのだが、待つことは無理そうだった。

「武官長、襲撃ならば夕刻がいい」

「夜ではなくて?」

「人の目は光に馴染む。だからこそぼんやりとしている夕刻がいい」

「わかりました。では、構成ですが……」

「僕も行きます」

「ああ、直樹もか……って、直樹は駄目だ!危険だ」

 直樹がクロの前で立ち上がると、静かにしているクロの頭に手を当て呟いた。

「僕はあの黒髪の人を助けたい」

 直樹の横にはクロがいて、クロの横には主を心配する黄虎が直樹を取り囲むようにしている。

「直樹様の後ろには、カララがおりますよ。大丈夫です。カララが後ろに控えております 。私も参ります。王を、私たちの王を取り戻さないと」

「カララ様!」

 女官長カララが、ふ……と息を床に落とした。

「若い頃、宮に支えてしばらく楽しく過ごしましたわ。好いた男との和合のため宮の村に行く時、子育てが終わったら戻っておいでと言ってくれた黄王様のお言葉。年を取ったに私に美しくなって帰ってきたと言ってくれた黄王様のお言葉。私の宝物ですわ。王を取り返しに参ります」




 広間の真ん中の黄王が、全裸のまま尻を穿たれている。乱れ金に近い黄髪を掴まれ、引き上げられた肢体には、刀傷が無数にあり、血が滲んでいた。

「はっ、はっ、はぁっ……」

 乱れた息を吐き出し、黄王がいやいやをするように首を左右に振り、尻肉を広げて犯す男の屹立から逃げる仕草をする。

「お頭、白珠が出ませんぜ」

 立ったまま交合を強いられている黄王の屹立を、握りしめ擦り上げているのは黄なびた髪の男で、多分元凶であろう。

「あ?そんなもん、無理矢理にでも出させろ」

 低い段差の向こう、王が座る椅子に座っていたザトがゆらりと立ち上がった。

 足元には黒髪の少年が転がり、血だまりが出来ている。

「黄王様よ、もったいぶるんじゃねえ……よ!」

 ザトが黄男の片足を持ち上げ、男の屹立が深々と埋め込まれている隘路に短刀を鞘ごとを押し入れたのだ。

「ぎっ…ああああっ……ああっ!」

 無理矢理押し込まれた鞘に押され、緩みなく屹立を擦り続ける男の手に、鮮血混じりの白珠が少しばかり出た。

「よーし、よし。出たじゃねえか。あんまり手間をかけさせんなよ、王様」

 鞘から短刀引き抜いたザトが、短刀を息を乱す黄王の背中に一文字に切り裂き、薄皮が裂けて血が飛び散る。

「ひっ……ぃあああっ!」

「うを!締め付けやがる!おらおら、出すぞ!」

 がしがしと腰を揺らされた黄王の尻奥にに男が飛沫し、ぬらぬらとした剛直を抜くと、黄王が意識を失ったように崩れ落ちた。

 直樹をカララと下げておいたが、角度により全てを見ているはずだ。シンラはレティと一緒にいて、レティが剣を持ち直したのを確認する。

「森の王」

 女たちの怒りを受け、シンラが呟いた。  

「ああ、行くぞ」
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