五国王伝〜醜男は美神王に転生し愛でられる〜〈完結〉

クリム

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外伝1 会議は回る

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 直樹とシンラが二人して赤国の赤の別宮に行ってしまい、ヤガーはティーの手伝いをしていた。

「別宮は僕も行ったことがありますよ。『釣り』を教えて頂きまして、なかなか面白かったです。赤王様が温泉を掘り当て、露天風呂を作られて」

「お湯のことですか?俺はあまり好きではありません」

 ヤガーは稲酒の樽をかき混ぜながら、ティーに話す。

「そうなのですか。それは勿体ないことですが、実は、森王様も苦手なようですよ。さあ、終わりました。会議をするから部屋に戻りましょう」

 ティーはいつも左半分の顔を隠しており、片目を野盗に切られ『欠けて』いる。それ以外には申し分なく、整った容貌なだけに、ヤガーは気の毒にと思っていた。

 野盗に小指を切断され犯されたヤガーはその日は泣き続けていたが、ティーに風呂へ入れてもらい、

「一度や2度くらい、大したことはありません」

と冷静に言われこの人でなしと心中思ったが、武官長のルカに言われた言葉に驚き、泣き止むと同時に気持ちを入れ替えたのだ。

「ティーは五年近く森で生きてきたっすよ。その意味、分かるっす?」

 この学びの館の稲酒蔵には『欠けたる者』が多く、生来の者から野盗に斬られた者まで様々だった。  

「ティーさん、あの木は何ですか?」

「あれ、知らなかったのですか?直樹様とシンラ様の和木ですよ」

「和木?宮の中に大切にされてるって、親父が……」

「普通はそうですね。でも、直樹様は外に置かれました。雨ざらしにも暑さにもなりますが、民と共にありたいと。だから取引に来て、和木に平伏する村人も多いのですよ」

 黒く艶やかな和木は、不思議に発光し輝いており、拳くらいある実は震えているようだ。

「はじめは掌に乗るくらい小さかったのに、今では宮の背くらいになって、実も立派になりました」

 木枠に薄く張られた玻璃から、黒国和木が見える部屋には、二人の男が待っていて、稲酒を杯に注ぎながら手を上げる。

「カナメ様、お待たせ致しました」

 文官長カナメと武官長ルカの二人に、ヤガーは慌てて平伏しようとするが、ティーに止められ席についた。

「では、会議を始める」

 杯に注がれた稲酒をカチンと互いの杯に当てると、ヤガーも一口口に含む。

「これが稲酒……甘いですね」

 カナメが咳払いをして、

「さて、最近の直樹様ですが、ヤガーどうかな?」

とヤガーに聞いてきた。

「紐の結びが苦手ですね」

 それにティーが吹き出す。

「あと、お髪を整えるのも苦手ですね」

 他にはと聞かれて、ふと、先日取引小屋を視察した時のことを思い出した。

「腐りかけの林檎からお酒の匂いがすると……」

「葡萄酒と同じような、林檎酒か。林檎はティーの村から?」

「はい」

「しかし、葡萄酒と同じような酒ではな……」

 ヤガーは自分の村の薬の水を思い出した。

「俺の村には、泡が浮かぶ水が湧く泉がありまして、それを飲むと気分が軽くなります。村長は薬の水と呼んでいました。玻璃の杯に入れると、とても綺麗です。それと混ぜるのはどうですか?」

「それはいいですね。直樹様は明日もいないから、ヤガー、村に案内してください」

 いつも冷静沈着なティーがとても嬉しそうで、ヤガーは嬉しくなった。

「はい。それからお食事ですが、シンラ様が召し上がる時、直樹様にも少しだけ召し上がって頂きたくて、果物や果実絞りなどお出ししてもよろしいですか?」

 いつも一人で食べているシンラが、直樹と酒を嗜む時は楽しそうなのだ。

「それはいい。ヤガーや、お前の料理の腕をシンラ様も誉めていらした」

 隣のルカが片手を上げた。

「はい、俺からもっす。直樹様は御酒を嗜まれての和合の声が艶かしく、宮の見回りをする俺には耳得ですが……」

「うむ……声か。和合は大切な王の責務だが、声はいかんともしがたないな。木の扉ではなく、玻璃に替えてみるか」

「ティーもあれくらい声を上げてくれてもいっす。噛み殺す風情もいいが……いたっ……たたた」

 ティーが真っ赤になって、ルカの耳を引っ張り上げる。

「お、とうとうか?」

「そうっす、苦節三年、ようやく交合にこぎつけましたっす。あとは、魂の和合……いててっ……耳千切れるっす、欠けちゃうっすよ、ティー」

「欠けてしまえ!直樹様の可愛がられておられる声を盗み聞きしているなんて!」

「たまたまっす!盗み聞きじゃ…いてて」

 どうやら、交合以上和合未満の、恋人同士の痴話喧嘩に発展しているようで、ヤガーはカナメに訪ねる。

「カナメ様、俺はいつまで直樹様の側仕えでいられますか?」

「お前が宮でやりたいことが見つかるまでだ。武官でも文官でも、稲酒でも、下働きでも何でも構わないぞ」

 ヤガーは数日間考えていたことを、しっかりと口にした。

「俺、飯炊きになりたいです。シンラ様やマナ様が楽しく召し上がられる食事、皆様が食べる食事を作りたいです」

 カナメはうんうんと頷き、

「良いと思うが、しばらくは兼ねてくれると助かる。直樹様はどうにも生活に不器用でな」

と飲みながら笑う。

「和木が輝いてるっす、いいっすねえ……和合中ですか?黒国に杯を」

 会議

それは愛すべき黒王様を肴にした、ただの飲み会だった。
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