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DNAの行方〜愛は遺伝子レベル〜
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~1~
鳥羽は激怒していた。
つい最近、鳥羽は半年満たない彼女と別れたばかりだった。
「鳥羽くん、私のこと好きじゃないだら?だから、別れるし」
そっちから付き合って欲しいと言われたから付き合って、鳥羽なりに頑張っていたつもりだった。話を合わせるために、彼女の好きなドラマや携帯小説も読んだりと。振られたのは、彼女で何人目だろうか。
そんなに造作も悪くない鳥羽は、女子から告白され、交際し、まあ、年頃だからあれやこれやとあったりし、順風満帆と思っていたところ、全て女子から振られることの繰り返し。
もう振られることにも慣れてしまい、脱力感すらあった今日この頃。父の転勤で新しい学校に転校し、私立高校ということもあり、付き合う・振られるなしのさばさばとした生活を期待していた鳥羽の目の前で起こった出来事に、鳥羽は激怒していた。
車椅子を操る男子クラスメイトが、廊下に出るのを邪魔する女子と男子クラスメイトの図式。
いじめだ。
「ぐろに寄れや」
にやにや笑うクラスメイトは五人程で、車椅子の小柄なクラスメイトは車椅子を器用に回転させると、一人の体に体当たりした。
「てめえ、友国!」
「殴んなし、友国だし」
学生服の詰襟をだらしなく外した男子が、転んだ仲間を制し車椅子のタイヤを掴んで封鎖する。
「退けし」
「友国ちゃん。ド生意気。ぜってえ、退いてやんねえ」
明らかに小さい体つきの車椅子の男子は、真っ黒な力強そうな瞳で、立ちはだかる男子をにらみ返し、
「なら、前から出るし。悪い、机づって」
一番後ろ廊下側の席から前に進む友国は、前の扉から出ようとする。
一番前の席で成り行きを眺めていた鳥羽は、引っ掛かってしまった車椅子のタイヤをずらす友国の手が震えているのを見た。
「大丈夫か?」
「心配ないし。ほな」
震えてタイヤを小刻みにしか繰り出せない友国が心配になり、鳥羽は車椅子の後を追う。
「おんし、なんか、用事なん?」
「手が震えてるし」
車椅子は渡り廊下を渡りエレベーターに乗ると、一階の職員室前に降りた。
「気にすんなし」
車椅子が職員室前の多目的トイレの自動ドアを開ける。
なんだトイレだったのかと、鳥羽が扉から離れようとしたところ、昼放課あと五分の予鈴がなり、多目的トイレから息を飲むような悲鳴が上がった。
「おい」
「来んなし……来んで!」
鳥羽が扉を開けると独特の香りが鼻をついて、車椅子からぱたぱたと滴りが落ちている。
「来んなってゆったよな。見んなし」
手が震えていたのはトイレを我慢していたからで、それを微塵も見せないクラスメイトの友国が漏らすという粗相をして、今度は泣きそうに肩を震われているのを見てしまい、鳥羽は胸が締め付けられるような気持ちになった。
「な、悪いけんど、保健の先生呼んでくれーせんか?」
「分かった」
鳥羽は意を決してトイレのバケツに水を並々と入れると、車椅子めがけてぶちまけた。
「うわっ…!」
二度目のバケツ水のぶちまけにさすがの教師も気づいて、三杯目の水はクラス担任に取り上げられる。
「鳥羽光太郎、何をやっとる!」
「ムカついたから、やった」
「鳥羽っ、友国に謝れ!」
車椅子の友国は腹から車椅子まで水浸しになり、あの独特の臭いは消えていて、鳥羽は無言のままクラスに戻った。
四月の暖かい陽射しのうららかな日だとはいえ、水をぶっかけるなんて悪かったなあと鳥羽は思っていたが、授業中のクラスに入ると担任が追いかけてきて、鳥羽に掴みかかる。
「鳥羽、廊下に出ろ!友国に謝るんだ。バケツ水をかけるなんてひどいだろう!」
鳥羽はざわつくクラスの中で口笛を吹いたクラスメイトをちらりと見た。
「口笛止めないか」
と、担任は叫ぶ。
「転校生、やるやん」
鳥羽は席を立つと担任に頭を下げて、先程最後まで友国に絡んでいた男子の前に立つと胸ぐらを掴んで引き上げた。
「あいつは俺の獲物だ。調子に乗ってるんじゃねえぞ!」
ドスを効かせて睨んでから、手を離す。男子がが椅子に座れず、床に座り込んだのを見下ろすと、驚く担任と車椅子で戻ったクラスメイトの顔を見て、鳥羽溜飲を下げた。
「別に親に謝らせんでも」
「俺の気がすまんがや」
「僕としては……ありがたかったんやけど。君さ、俺の漏らしたん隠してくれたんやろ?」
最後の方は小さい声で呟く友国が松葉杖をついていて、職員室前で迎えの車を待っていた。
上下ジャージ姿でいる友国を不審がるだろうし、なによりも鳥羽の正義感の矜持が許さないでいる。
「友国も気にしなくていいと言ったんだし、鳥羽、頑なになるな。まさか、そんな風にしといてくれたんだとは知らなんだ。しかしまあ、派手にやってくれたけんどな」
理由を知って心配した担任が鳥羽と友国の間に入って来て、上背のある鳥羽が担任と友国を見下ろす形になった。
「いえ、うちの人に謝んます」
「友国に水かけてクラスメイトに掴み掛かった奴とは思えん律儀さだな。意外にまじめか、お前」
「見てん通り真面目です。学生服首元かっちりしとりますんで」
黒い車が止まり運転席から出てきた人物に、鳥羽は平身低頭する。
「友国くんに水をかけてしまい、申し訳ありませんでしたっ!」
「鈴木さんは運転手さんなんだけど……」
鳥羽がきりっと頭を上げると、禿げ頭の老人が立っていて、
「ぼっちゃんに水を、はあ」
と呟き、携帯電話を手にした。
「母に言わなくていいですから、鈴木さん」
「いや、話しといてください、運転手さん。謝りたいんで」
押し問答の末車に乗り込むと、ほんの学校から少し先の山の下の巨大な屋敷に着く。
「なんだこれ、純和風庭園。お前、殿様か?」
「いやいや、うちが建築業だしね。ほら、着いたし」
和風の玉砂利が敷き詰められた道を、ゆっくりと友国に合わせて歩いていくと広い玄関に入った。
「おかえりなさいまし、実琴坊っちゃん」
「ただいま。加藤さん、今日、母は来ますか?」
「もうじきお戻りになられます」
お手伝いさん的な人物までいるとは、鳥羽は案内されるまま奥座敷に通された。
「ちょっと後ろ向いててくれへん」
和風造りの奥座敷部屋は、意外にも洋風のフローリングとベッドで、勉強机もモダンなアート式のものだった。
「あ、うん」
庭でも見ようと、雪見障子を半分開けると、ガラスに友国が映ってしまう。友国は上下ジャージを脱いでシャツと下着を脱ぎ、袋から成人用の紙パンツに足を入れていた。
「おまっ、なんで」
「なんで見ちゃうん?ばつ悪う。漏らして迷惑かけるからやんか」
ごわごわとしたおむつの上から、柔らかなタオル地のガウンを着る。
「もうじき母も帰ってくるし、お茶でも。鳥羽くん何しとん?」
鳥羽はベッドに脱ぎ散らかった、ジャージとシャツを掴んでいた。
「鳥羽でいい。いや、脱いだら、洗濯機に入れないと」
「あとでいいやん」
「まあ、そうだけど。片付かないからなあ」
すると友国が奥を指差して、
「風呂の横に洗濯機あるから」
と笑う。
その『しかたないなあ』的な笑顔が、鳥羽の胸を締め付けてきた。
「なんなん、これは」
洗濯機と風呂、手すりつきのトイレに、簡易式キッチン。
廊下で繋がっているが、まるで離れのようで、廊下には奥座敷と屋敷を切り離せる観音開きの扉すらある。
「なんだこれは。座敷部屋虐待か?」
まるで友国と家族を分断するようで、うすら寒い。
「鳥羽く……鳥羽、母来とる。はよ、おいでん」
友国の声に我に返ると、部屋に戻ると甘い香りが部屋を包んでいて、
「実琴のお友だち?」
と、声を掛けられた。
「鳥羽光太郎です!あの、友国くんに水を掛けてしまい申し訳ありませんでした!」
まるで姉と言われても納得できるほど、若々しい友国の母親は、頭を下げた鳥羽を手で制する。
ソファに座って謝るのでは納得できないのかと、鳥羽は土下座をしようと立ち上がったが、友国の母親は鳥羽ではなく、友国を見ていた。
「保健の先生から電話がありました。実琴、何度めです?学校でも紙パンツをつけなさい」
真っ赤な顔をして、友国が鳥羽をちらと恥ずかしそうに見て叫び返す。
「いやだ。生徒会長が紙パンツなんて……おかしいやん!」
柔らかいイメージのある巻き髪に、桜色のスーツを着た母親は、ピンクの唇を尖らせた。
「あなたが『友国』だから、生徒会長に祭り上げられているだけなの。厳しいようだけど、傍系の『友国』副会長の主税くんの方がずっと会長向きなのよ。あなたは主税くんに守られて、名前だけ貰っておいて病気の治療に専念しなさい」
「こんなん、直らへんやん」
「だから、人に迷惑をかけてはだめなの。排せつが苦手なら紙パンツ、当たり前でしょう。それが社会人になる第一歩なのよ。あなたのような車椅子生活者はみんなシビアに自分で自分をコントロールするの」
母親が友国を叱りつける。それから母親は鳥羽に向かって頭を下げたのだ。
「水をかけて、誤魔化してくれようとしたのね。ありがとうございます。この子は病気でああなることがあるの。以前は住み込みヘルパーを雇っていたのだけど、学校まではねえ」
どんなひどい母親だと思ったが、高校生の鳥羽に感謝の為に頭を下げるのを見て、横を向いたままの友国を鳥羽は見下ろした。
~2~
鳥羽の祖父は漁師をしていて、その跡を鳥羽の父の弟が継いでいる。どうやら網元と言うやつらしい。たまたま父の転勤先が地元になり、家族で祖父の家に転がり込んだのだが、初めての家には祖母も行き遅れた娘も叔父夫婦もいて、信じられない大人数に鳥羽の母も妹も絶賛不評中である。離婚の危機さえ感じられるほどだ。
父不在無言の気まづい食卓の後、鳥羽は祖父の網部屋を尋ねた。
「なんじゃ、漁に興味があるだかん?光太郎は」
「悪いけど、ない。じいちゃん『友国』ってさあ、なに?」
網を繕う手を止めないで、
「『友国』ってのはなあ、山や。土地やの地主や」
祖父は一度言葉を切って、焼酎を煽る。
「友国は都会に渡り、友国建設を立ち上げたんだが。おんしの学校も友国が作ったげな。国のさとやま再生事業んためにさけ。だもんで、ミスさとやまやった香代子さんが理事長での旦那が建設業傍ら学園長やっとらっせる」
なるほど、友国は理事長と学園長の息子だから、生徒会長だと言うわけだ。
網元と言うだけに祖父は情報通らしく、友国の父が青山建設社長で、母はNPOさとやま再生機構という会社を立ち上げて、市町に貢献している。たぶん、次期代表か社長は友国実琴だろう。そうなると、実琴のための会社ということになる。
「じゃあ、息子の……」
「父さん、こっちにいたん?」
実琴のことを聞こうとしていたら、スーツのままの父が網部屋入って来て、祖父に向き直った。
「父さん、俺、しばらくこっちにいるって言ったけど、出向取り止めになった。明日にでも本社に戻ることになったで」
「さようか。したら、また引っ越しだな」
祖父は明らかにほっとした顔をした。多分、祖母と折り合わない母の愚痴をちくちく言われていたのだろう。たかだか一ヶ月弱の田舎暮らしとなるわけだ。もちろん、父も、ほっとした顔をしていた。離婚の危機は回避され、住み慣れたマンションに引っ越しするのだ。
だが、鳥羽は喜べずにいた。振られ続けた自分自身を見つめ直すために、私立高に編入したのだ。それに気になる案件も出てきた。
「光太郎もいいか?お母さんたちは、引っ越しの準備を始めているぞ」
祖父も頷いた。
「じいちゃん、お願いがあるんだけど…」
鳥羽は頭を下げた。
朝は憂鬱だ。
友国は履いている紙パンツが湿っていることに気づいて、仕方なく脱いで新しい紙パンツを履き直す。そしてカッターシャツに、詰め襟学生服を着た。ベッドを汚せば、派遣されているホームヘルパーに迷惑をかける。
病状はこの一年で進み、特に下半身の筋力が落ち太股の痙攣が起こり、学校では車椅子生活が続いていた。
低カリウム周期性四肢麻痺
中学生で発症した遺伝子病だ。
子孫に遺伝する可能性のある病気のため、父は友国を建設会社後継者レースから外し、療養の為に地方に私立西尾乃高校を作り、仕事を用意してくれた。高校を卒業した後は、父の跡を継ぐだけだ。友国の人生は死ぬまで、もう、決まっている。
「おはようございます、ぼっちゃん。お友だちがいらしていますよ」
ホームヘルパーと言うより、家政婦と言う言い方のが似合う中年女性の加藤が、自分の家で作った米を炊いて、大量によそってくる。
「加藤さん、ご飯、そんなに食べられへんよ」
「でも、ぼっちゃん、たくさん食べへんと治られへんですよ」
「今日も美味しいですな、加藤さん」
「うちの父ちゃんの米は旨いだよ、旦那さん」
父はご飯好きで三杯はおかわりをする手前、友国は茶碗目一杯の飯を、辛い塩鮭で押し込む。そんな必死の朝御飯が終わった後、加藤から言われた言葉に、友国は立ち上がり松葉杖をついて玄関に行く。
「友国」
「あれ、鳥羽。どしたん?」
昨日、学校で粗相をした友国を隠蔽してくれようとした、転入生である鳥羽が玄関で頭を下げた。
「ここで働かせてください!」
「は?」
「ここで働きたいんです!」
「鳥羽、どしたん?働くて、なんなん?」
父もキッチンからやって来て、鳥羽を見た。
「昨日二年に編入した鳥羽光太郎くんだね。働きたいとは、なんだね?」
友国は鳥羽の顔を見つめた。左目元に小さなほくろがある。綺麗な顔をしていた。田舎くさくないと言ったら失礼かも知れないが、すっきりした面立ちで、背も高く大人っぽいと思った。
友国は病気になってからあまり背も伸びていないし、車椅子、松葉杖、なるべく安静の繰り返しで、空腹すらも感じないでいるから、小さくて痩せてきていて、それだから加藤に食べさせられていた。
「友国くんのヘルパーとして住み込みで働かせてください。学校でも対応出来ますし、空手を習っていますから、ボディーガードにもなります」
真剣な表情だった。
「うーん。学校、それは嬉しいが、ご両親は、納得していますか?」
父が静かに言う。
「了承済みです。父の再転勤で家族はいないです。しかし、俺はこちらに残りたいのです。祖父の五一の家は大人数で俺はいられません。お願いいたします、こちらで住み込みで働かせてください!」
「海の鳥羽のご家系ですか。実琴はどうしたい?」
「え、こっちに振る?鳥羽が、困ってるなら……まあ……あいつらを追っ払ってくれたら……」
実際、クラスメイト達には困っているのだ。正直、面倒くさい。
鳥羽があしらってくれるなら、それはそれで助かってしまうのだ。
「うん、じゃあ、いいね。お父さんもいいと思うよ。友達は多いほうがいい」
意外にも、父は鳥羽に深々と頭を下げたのだ。
鳥羽の働きぶりは目覚ましいもので、クラス内でも友国がちょっかいを出される前に動きだし、友国は粗相することなく平和に学校生活を送っている。しかも、家事都合で退学した会計にかわり、生徒会長にも入ってくれ、有能な一面を見せた。
「別に無理してるわけでもないか……性格か?」
実にまめで器用な鳥羽の働きぶりに、友国は風呂で椅子に座って体を洗いながら呟いた。浴槽にお湯が張ってある。昔は数ヵ月前には入ることが出来たが、今は入ると出られなくなるから、入ることが出来ないでいるのにともったいない思っていると、鳥羽が風呂に入ってきた。
「鳥羽?」
全裸の鳥羽が恥ずかしげもなく入ってきて、
「入浴補助。ついでに俺も入るし」
と告げる。
「ええっ」
バスブラシを取り上げられ、柔らか目のスポンジで泡立てた泡をゆっくりと撫でるようにつけて、その気持ちよさに驚いた。
「バスブラシも良いけど、皮膚を痛めるからなあ。ほら、前も」
背中から優しく洗われて、そのまま前も洗われてしまい、ぞくと震えが来る。
「ついでに、俺も洗うから」
横で床に座り込み体を洗う鳥羽が、シャワーノズルを渡してきて、友国は泡を自分で流していく。
「お湯張ったん、鳥羽?」
「おう。筋肉ほぐすのにいいから」
と、ひょいと抱き上げられ湯船につけられ、鳥羽のあぐらの中で支えられるように背後から抱き締められた。
「なんか、鳥羽馴れてるし」
「いや、ネットで見ただけだし。筋肉は動かさないと固まるからな」
腕が伸びて、ふくらはぎからゆっくりと揉みほぐされ、痩せた太股の内側を揉まれると、ぞくぞくと震えて、信じられないことに勃起してしまう。
「と、鳥羽。手、やばいて」
鳥羽は平然と、
「ん、ああ。出す?」
と言い放ち、股間に手を伸ばして、屹立を包み込んできた。
「ちょ……まっ……こゆのは、自分でっ」
湯が波立ち気持ちよさに鳥羽の手を離せないでいる。一年以上兆したことがないのに鳥羽に触られて快感が太股を震わせたが、放出が出来ない。
「も……手、手ぇ……離して。なんか……出えへん」
もう一歩排出の決め手が薄いのは、下肢の感覚が弱いからかもしれない。
「うーん、ちょっと待て」
鳥羽が友国ごと少しだけ腰を浮かし、トリートメントを指につけると、信じられない箇所に塗りつけて来た。
「やだっ」
尻の襞から違和感を感じその襞をくすぐるように中へ入り、指が下腹の一点を押してきた。かっ……と熱くなるような刺激に、友国は「ひっ…」と息を止める。
切ないような辛いような感覚が一気に競り上がり、鳥羽の手の動きに合わせて飛沫した。
「あっ……んんっ……」
息を詰めて何度も鳥羽の手の中に排出し、その白濁は湯の中に消える。
「はっ……はあっ……鳥羽、ごめんて」
「うん、俺もちょっと」
鳥羽が屹立した自分の切っ先を尻の方から太股の間に擦り付けて来て、まだ排出快楽に震える友国の性器をつかんで、擦り上げてきた。
「あ、あ、あっ」
放出後の淡い快楽が尾を引くように、切っ先をくすぐり鳥羽の排出する体液を見て、肌が粟立つような感覚を覚えて消える。
「鳥羽……疲れた。あれ、なんなん?」
「前立腺マッサージ。多分なんとかなると思って。あと、定期的に出さないと、中で精子腐るぞ」
「え、まじ?」
「四日にいっぺんくらいはな」
「無理だし……疲れた……」
体力を使い果たしたような脱力間に、立つことも座ることも出来なくて、鳥羽にバスローブを被せてもらい、抱き上げられてベッドに運ばれると、ボクサーパンツを渡されて、友国は驚いた。
「なんで…僕、漏らすやん」
屈辱感があるが事実なのだ。
「ベッドに防水性シーツをひいた。まあ、お前のトイレパターンもだいたい掴めたから安心しろ」
客間から入れたベッドに座ると、持ち込んだパソコンを見ている鳥羽は、パジャマがわりのシャツに短パンのままあぐらをかいている。
『友国、お願いがあるんだが……』
何人もと付き合って全ての女子に振られ続けたという鳥羽が、友国にどこが悪かったのか教えて欲しいと言うのである。
今日一日鳥羽といて、薄々分かってしまった。だが、それを言い出すタイミングも、信じられない程の眠気に苛まれ意識が落ちた。
朝は憂鬱だ。
しかし、今日の友国は良い香りで目が覚める。
この離れのキッチンからだ。
「下着……濡れてない」
ほっとしたのもつかの間、急に尿意が込み上げて、しかも、下腹を圧迫し立ち上がれない。
「あっ……と…」
鳥羽を呼ぼうとした時に、
「おはよう」
と鳥羽が来て抱えてトイレに連れていってくれ、友国は粗相しないですんだ。
「飯を変更した。調べたら、お前の病気には低インスリン型の食事が良いらしい。加藤さんのご飯中心メニューだと、悪化する。だいたい、加藤さんがホームヘルパーになってからだろ、酷くなったのは。食生活を改善して、病状落ち着かせりゃ車椅子要らなくなる」
鳥羽が夜中までパソコンに向かっていたのは、そのためかと友国は食卓に着く。
「炭水化物控えめの、野菜中心メニューな。よく噛んで食べろよ。あ、温野菜サラダからな」
飯は見たことのない茶色っぽい色だし、今までの半分位の量で、何だか手間隙がかかっている感じがして、ちらりと鳥羽を見つめる。
「別に無理はしていない。第一、仕事だし」
「あ、そう……そうだね……そうだもんね…」
友国は漠然としたもやもやに包まれ、何度も頷いた。
ゴールデンウィークも過ぎ、授業が本格化してきた中で、事案をプリントアウトし、各執行部員の前に鳥羽は置いた。
「さとやま再生プロジェクト杯の案はありませんか?」
友国が執行部の役員を見つめた。
「ちなみに、新しい会計の鳥羽のために言うとね、国のさとやま再生基金から助成金降りてる学生主体コンペなんだ。企画審査が通った三校が、夏休みに企画を行うわけ。一位にはさらに賞金が出る」
副会長の主税が鳥羽に告げてくる。
「はあ」
鳥羽は頷くが、それほど興味がなかった。
それよりもここ最近の友国の態度の方が、気になって仕方がない。
「他の二校は、もう、連絡が来ている。ポップンタウンという、職業体験だ。ポップンコインで物も買える。あとは、こども学校。こちらは自然体験とハンドメイド」
副会長の主税は、さらに力強く話してきて、執行部員も力強く頷いていた。
「はあ」
ちらりと友国を見るが、友国は鳥羽から目をそらし続けている。
「各クラス学級代表に、議題として挙げてもらい選びましょう。開催地はうちの高校裏の『さとやまの国』です」
友国が話を切った。
「鳥羽、こないだのアンケートの」
片付けていると、執行部のメンバーが声を掛けてくる。
「あ、ああ。まとめておいた」
「サンキュー、助かるし」
「あとさ、アンケートの第二段の内容の打ち出し…あ、友国?」
「先、行くし」
「鳥羽、実琴となんかあったん?」
「こっちが聞きたい」
主税が鳥羽にひそりと聞いて来る。
友国は自分一人で車椅子を押して、出ていってしまった。
友国の不機嫌は夜まで続いた。食欲もない。
「友国、風呂に入ろう」
食生活改善で部屋の中では松葉杖を使わなくても、鳥羽の支えがあれば自由に歩けるようになっていた友国が、手を取った鳥羽の手を払いのけた。
「友国?」
友国が下から睨んでくる。
「なんで鳥羽がもてへんかすっごい分かったし。僕に優しいて思ったら、みんなにも優しいやん!僕だけ特別って思っとったのに、馬鹿馬鹿しくなる!自己嫌悪するし!だから、鳥羽のまめで優しいとこが、もてへんわけ!」
友国の剣幕に驚き、鳥羽は友国の座っているソファの前にひざまづいて、友国を見上げた。
泣きそうなのに、絶対に泣かない友国。
「友国は俺のこと、好きなんだ?」
友国が鳥羽のポロシャツの胸ぐらを両手で掴んで前後に揺らす。
「あんなことされて、僕のことばっか見とって、好きにならんわけないやん!好きだし、好きだし、あほんだら鳥羽」
鳥羽は友国を抱き締めた。
「鳥羽?」
「友国は特別だ。そうじゃなくゃ、あんなことはしない」
「鳥羽は誰にでもするにきまっとる!僕の世話だって、介護程度に考えとるだら!」
「だったら、本当のセックスをする。そうしたら、誠意がわかるだろ」
「え?なんで?そうなるん?僕の話はっ」
「なんでもやんか。俺ら我慢のきかん高校生やん」
友国は薄明かりにして机からローションを持ってきた鳥羽に抱き上げられ、ベッドに座らされた。
「と、鳥羽。あのさあ、僕も言い過ぎ……うあ!」
下着とズボンを剥ぎ取られ、逃げるようにベッドの端に寄る。
「逃げたら、俺の誠意とか分からないだろうが」
「だって、怖いんだもん」
友国は鳥羽に向き直ると、鳥羽の顔を見上げた。
「友国」
「なに?」
「勃ってる」
友国は自分の高ぶりを指摘されて、真っ赤になる。しばらく鳥羽に冷たく当たっていたし、触られたくなかったから仕方がないのだが、今、鳥羽の目前で屹立しているのが恥ずかしい。
「不可抗力だし!」
手で押さえようとした友国の腰を掴むと、鳥羽が少し引き寄せてきて屹立をくわえられた。
温かく湿った咥内が気持ちよくて、ざらつく舌で裏筋を撫でられ息が止まりそうになる。
「んっ……んんっ……やっ……っ……だっ!どーして咥えるわけっ!」
「ネットに書いてあったから」
「そーゆーの調べなっ……うわっ」
腰を浮かすと尻の狭間に指が入り、友国の気持ちいい箇所を的確に突いてきた。足先から電気が走るような感覚が下腹に競り上がり、じわじわと排出に向けて快楽の震えがやって来る。切っ先を舐められ、割れ目に舌先をなぞられながら擦られて、飛沫しようとした友国の屹立から唇を離した。
「えっ……」
鳥羽が自分の屹立を取り出してローションを塗ると、友国の狭間にひた…とつけてきた。
「鳥羽っ……待って……あっ……あ……あああっ」
「待たん」
たっぷりと時間をかけて解された襞は、違和感があるものの痛みはなく鳥羽を受け入れてしまう。
「ふーっ」
開いた足の間に鳥羽がいて、体内に密着し、鳥羽の早い鼓動を感じた。
「なんで……」
友国は生真面目な顔をしている鳥羽を見る。
「好きだから、出来るんだ。こんなこと、好きじゃないとしないだろうが」
ぞく……と下腹が震えた。
「鳥羽……」
鳥羽の存在をありありと感じて、友国は鳥羽の首にしがみつく。屹立を挿入出され、襞が気持ちいい。一番気持ちいいのは、内壁越しに前立腺を刺激されること。
「あっ……あっ……ああっ!」
深く浅く押し込まれ、泣きそう切なさの中で、内壁が快楽痙攣を起こし襞がすぼまった。
「く…出る…」
そのきつい締め付けに鳥羽が、思わずといった風に友国の内壁に放ち、友国はその排出を襞に伝わる裏筋の律動で理解した。
「わ……悪い。今……」
「あっ!」
鳥羽の手が萎えた性器を撫でてしごいてきて、友国は腰が浮く。
「やっ……あっ……」
内壁の感じる部分を屹立した鳥羽の屹立で擦られ、鳥羽の手で屹立を刺激され、友国は弓なりになり背をそらせて吐飛させた。
「うっ……んっーーっ」
屹立の角度が悪かったのか、白濁は鳥羽の顔面に散り、友国は真っ赤になり、顔を手で覆う。
「ご……ごめん……鳥羽!」
友国の白濁を浴びて、鳥羽が呟いた。
「水鉄砲…スプラッシュ…ウォーターガンなんて、どうかな?さとやま再生」
友国は真っ赤になる。
「こんなときに!もう、こんなときにっ!」
「友国っ……締めるなって……いてて」
裸のまま疲れ果ててとろとろと眠たくなっていると、鳥羽がベッドに持ち込んだパソコンの画面を見せてきた。
「なあ、見てみろって」
「な……なんなん?」
「マイクロキメリズムっての。人間は体内に他の人のDNAを定着させるんだって。俺の遺伝子も今、友国の中に定着した」
だからなんだと、気だるく友国は腕を上げる。
「だからさ、きっと、いつかさ、病状も回復する……とか」
ああ……無意識なんだ。友国は苦笑した。無意識で無自覚な善意。それが唯一無二の鳥羽の気持ち。人のために尽くすことを当たり前とする鳥羽を理解できる人は少ないかもしれない。
「鳥羽の世話好きが遺伝子に入るのはやだけど……。うん。じゃあ、たっぷり時間をかけて、注ぎんよ。僕が治るかもしれへんし」
鳥羽が真っ赤になる。多分、これが正解だ。友国は笑った。
鳥羽は激怒していた。
つい最近、鳥羽は半年満たない彼女と別れたばかりだった。
「鳥羽くん、私のこと好きじゃないだら?だから、別れるし」
そっちから付き合って欲しいと言われたから付き合って、鳥羽なりに頑張っていたつもりだった。話を合わせるために、彼女の好きなドラマや携帯小説も読んだりと。振られたのは、彼女で何人目だろうか。
そんなに造作も悪くない鳥羽は、女子から告白され、交際し、まあ、年頃だからあれやこれやとあったりし、順風満帆と思っていたところ、全て女子から振られることの繰り返し。
もう振られることにも慣れてしまい、脱力感すらあった今日この頃。父の転勤で新しい学校に転校し、私立高校ということもあり、付き合う・振られるなしのさばさばとした生活を期待していた鳥羽の目の前で起こった出来事に、鳥羽は激怒していた。
車椅子を操る男子クラスメイトが、廊下に出るのを邪魔する女子と男子クラスメイトの図式。
いじめだ。
「ぐろに寄れや」
にやにや笑うクラスメイトは五人程で、車椅子の小柄なクラスメイトは車椅子を器用に回転させると、一人の体に体当たりした。
「てめえ、友国!」
「殴んなし、友国だし」
学生服の詰襟をだらしなく外した男子が、転んだ仲間を制し車椅子のタイヤを掴んで封鎖する。
「退けし」
「友国ちゃん。ド生意気。ぜってえ、退いてやんねえ」
明らかに小さい体つきの車椅子の男子は、真っ黒な力強そうな瞳で、立ちはだかる男子をにらみ返し、
「なら、前から出るし。悪い、机づって」
一番後ろ廊下側の席から前に進む友国は、前の扉から出ようとする。
一番前の席で成り行きを眺めていた鳥羽は、引っ掛かってしまった車椅子のタイヤをずらす友国の手が震えているのを見た。
「大丈夫か?」
「心配ないし。ほな」
震えてタイヤを小刻みにしか繰り出せない友国が心配になり、鳥羽は車椅子の後を追う。
「おんし、なんか、用事なん?」
「手が震えてるし」
車椅子は渡り廊下を渡りエレベーターに乗ると、一階の職員室前に降りた。
「気にすんなし」
車椅子が職員室前の多目的トイレの自動ドアを開ける。
なんだトイレだったのかと、鳥羽が扉から離れようとしたところ、昼放課あと五分の予鈴がなり、多目的トイレから息を飲むような悲鳴が上がった。
「おい」
「来んなし……来んで!」
鳥羽が扉を開けると独特の香りが鼻をついて、車椅子からぱたぱたと滴りが落ちている。
「来んなってゆったよな。見んなし」
手が震えていたのはトイレを我慢していたからで、それを微塵も見せないクラスメイトの友国が漏らすという粗相をして、今度は泣きそうに肩を震われているのを見てしまい、鳥羽は胸が締め付けられるような気持ちになった。
「な、悪いけんど、保健の先生呼んでくれーせんか?」
「分かった」
鳥羽は意を決してトイレのバケツに水を並々と入れると、車椅子めがけてぶちまけた。
「うわっ…!」
二度目のバケツ水のぶちまけにさすがの教師も気づいて、三杯目の水はクラス担任に取り上げられる。
「鳥羽光太郎、何をやっとる!」
「ムカついたから、やった」
「鳥羽っ、友国に謝れ!」
車椅子の友国は腹から車椅子まで水浸しになり、あの独特の臭いは消えていて、鳥羽は無言のままクラスに戻った。
四月の暖かい陽射しのうららかな日だとはいえ、水をぶっかけるなんて悪かったなあと鳥羽は思っていたが、授業中のクラスに入ると担任が追いかけてきて、鳥羽に掴みかかる。
「鳥羽、廊下に出ろ!友国に謝るんだ。バケツ水をかけるなんてひどいだろう!」
鳥羽はざわつくクラスの中で口笛を吹いたクラスメイトをちらりと見た。
「口笛止めないか」
と、担任は叫ぶ。
「転校生、やるやん」
鳥羽は席を立つと担任に頭を下げて、先程最後まで友国に絡んでいた男子の前に立つと胸ぐらを掴んで引き上げた。
「あいつは俺の獲物だ。調子に乗ってるんじゃねえぞ!」
ドスを効かせて睨んでから、手を離す。男子がが椅子に座れず、床に座り込んだのを見下ろすと、驚く担任と車椅子で戻ったクラスメイトの顔を見て、鳥羽溜飲を下げた。
「別に親に謝らせんでも」
「俺の気がすまんがや」
「僕としては……ありがたかったんやけど。君さ、俺の漏らしたん隠してくれたんやろ?」
最後の方は小さい声で呟く友国が松葉杖をついていて、職員室前で迎えの車を待っていた。
上下ジャージ姿でいる友国を不審がるだろうし、なによりも鳥羽の正義感の矜持が許さないでいる。
「友国も気にしなくていいと言ったんだし、鳥羽、頑なになるな。まさか、そんな風にしといてくれたんだとは知らなんだ。しかしまあ、派手にやってくれたけんどな」
理由を知って心配した担任が鳥羽と友国の間に入って来て、上背のある鳥羽が担任と友国を見下ろす形になった。
「いえ、うちの人に謝んます」
「友国に水かけてクラスメイトに掴み掛かった奴とは思えん律儀さだな。意外にまじめか、お前」
「見てん通り真面目です。学生服首元かっちりしとりますんで」
黒い車が止まり運転席から出てきた人物に、鳥羽は平身低頭する。
「友国くんに水をかけてしまい、申し訳ありませんでしたっ!」
「鈴木さんは運転手さんなんだけど……」
鳥羽がきりっと頭を上げると、禿げ頭の老人が立っていて、
「ぼっちゃんに水を、はあ」
と呟き、携帯電話を手にした。
「母に言わなくていいですから、鈴木さん」
「いや、話しといてください、運転手さん。謝りたいんで」
押し問答の末車に乗り込むと、ほんの学校から少し先の山の下の巨大な屋敷に着く。
「なんだこれ、純和風庭園。お前、殿様か?」
「いやいや、うちが建築業だしね。ほら、着いたし」
和風の玉砂利が敷き詰められた道を、ゆっくりと友国に合わせて歩いていくと広い玄関に入った。
「おかえりなさいまし、実琴坊っちゃん」
「ただいま。加藤さん、今日、母は来ますか?」
「もうじきお戻りになられます」
お手伝いさん的な人物までいるとは、鳥羽は案内されるまま奥座敷に通された。
「ちょっと後ろ向いててくれへん」
和風造りの奥座敷部屋は、意外にも洋風のフローリングとベッドで、勉強机もモダンなアート式のものだった。
「あ、うん」
庭でも見ようと、雪見障子を半分開けると、ガラスに友国が映ってしまう。友国は上下ジャージを脱いでシャツと下着を脱ぎ、袋から成人用の紙パンツに足を入れていた。
「おまっ、なんで」
「なんで見ちゃうん?ばつ悪う。漏らして迷惑かけるからやんか」
ごわごわとしたおむつの上から、柔らかなタオル地のガウンを着る。
「もうじき母も帰ってくるし、お茶でも。鳥羽くん何しとん?」
鳥羽はベッドに脱ぎ散らかった、ジャージとシャツを掴んでいた。
「鳥羽でいい。いや、脱いだら、洗濯機に入れないと」
「あとでいいやん」
「まあ、そうだけど。片付かないからなあ」
すると友国が奥を指差して、
「風呂の横に洗濯機あるから」
と笑う。
その『しかたないなあ』的な笑顔が、鳥羽の胸を締め付けてきた。
「なんなん、これは」
洗濯機と風呂、手すりつきのトイレに、簡易式キッチン。
廊下で繋がっているが、まるで離れのようで、廊下には奥座敷と屋敷を切り離せる観音開きの扉すらある。
「なんだこれは。座敷部屋虐待か?」
まるで友国と家族を分断するようで、うすら寒い。
「鳥羽く……鳥羽、母来とる。はよ、おいでん」
友国の声に我に返ると、部屋に戻ると甘い香りが部屋を包んでいて、
「実琴のお友だち?」
と、声を掛けられた。
「鳥羽光太郎です!あの、友国くんに水を掛けてしまい申し訳ありませんでした!」
まるで姉と言われても納得できるほど、若々しい友国の母親は、頭を下げた鳥羽を手で制する。
ソファに座って謝るのでは納得できないのかと、鳥羽は土下座をしようと立ち上がったが、友国の母親は鳥羽ではなく、友国を見ていた。
「保健の先生から電話がありました。実琴、何度めです?学校でも紙パンツをつけなさい」
真っ赤な顔をして、友国が鳥羽をちらと恥ずかしそうに見て叫び返す。
「いやだ。生徒会長が紙パンツなんて……おかしいやん!」
柔らかいイメージのある巻き髪に、桜色のスーツを着た母親は、ピンクの唇を尖らせた。
「あなたが『友国』だから、生徒会長に祭り上げられているだけなの。厳しいようだけど、傍系の『友国』副会長の主税くんの方がずっと会長向きなのよ。あなたは主税くんに守られて、名前だけ貰っておいて病気の治療に専念しなさい」
「こんなん、直らへんやん」
「だから、人に迷惑をかけてはだめなの。排せつが苦手なら紙パンツ、当たり前でしょう。それが社会人になる第一歩なのよ。あなたのような車椅子生活者はみんなシビアに自分で自分をコントロールするの」
母親が友国を叱りつける。それから母親は鳥羽に向かって頭を下げたのだ。
「水をかけて、誤魔化してくれようとしたのね。ありがとうございます。この子は病気でああなることがあるの。以前は住み込みヘルパーを雇っていたのだけど、学校まではねえ」
どんなひどい母親だと思ったが、高校生の鳥羽に感謝の為に頭を下げるのを見て、横を向いたままの友国を鳥羽は見下ろした。
~2~
鳥羽の祖父は漁師をしていて、その跡を鳥羽の父の弟が継いでいる。どうやら網元と言うやつらしい。たまたま父の転勤先が地元になり、家族で祖父の家に転がり込んだのだが、初めての家には祖母も行き遅れた娘も叔父夫婦もいて、信じられない大人数に鳥羽の母も妹も絶賛不評中である。離婚の危機さえ感じられるほどだ。
父不在無言の気まづい食卓の後、鳥羽は祖父の網部屋を尋ねた。
「なんじゃ、漁に興味があるだかん?光太郎は」
「悪いけど、ない。じいちゃん『友国』ってさあ、なに?」
網を繕う手を止めないで、
「『友国』ってのはなあ、山や。土地やの地主や」
祖父は一度言葉を切って、焼酎を煽る。
「友国は都会に渡り、友国建設を立ち上げたんだが。おんしの学校も友国が作ったげな。国のさとやま再生事業んためにさけ。だもんで、ミスさとやまやった香代子さんが理事長での旦那が建設業傍ら学園長やっとらっせる」
なるほど、友国は理事長と学園長の息子だから、生徒会長だと言うわけだ。
網元と言うだけに祖父は情報通らしく、友国の父が青山建設社長で、母はNPOさとやま再生機構という会社を立ち上げて、市町に貢献している。たぶん、次期代表か社長は友国実琴だろう。そうなると、実琴のための会社ということになる。
「じゃあ、息子の……」
「父さん、こっちにいたん?」
実琴のことを聞こうとしていたら、スーツのままの父が網部屋入って来て、祖父に向き直った。
「父さん、俺、しばらくこっちにいるって言ったけど、出向取り止めになった。明日にでも本社に戻ることになったで」
「さようか。したら、また引っ越しだな」
祖父は明らかにほっとした顔をした。多分、祖母と折り合わない母の愚痴をちくちく言われていたのだろう。たかだか一ヶ月弱の田舎暮らしとなるわけだ。もちろん、父も、ほっとした顔をしていた。離婚の危機は回避され、住み慣れたマンションに引っ越しするのだ。
だが、鳥羽は喜べずにいた。振られ続けた自分自身を見つめ直すために、私立高に編入したのだ。それに気になる案件も出てきた。
「光太郎もいいか?お母さんたちは、引っ越しの準備を始めているぞ」
祖父も頷いた。
「じいちゃん、お願いがあるんだけど…」
鳥羽は頭を下げた。
朝は憂鬱だ。
友国は履いている紙パンツが湿っていることに気づいて、仕方なく脱いで新しい紙パンツを履き直す。そしてカッターシャツに、詰め襟学生服を着た。ベッドを汚せば、派遣されているホームヘルパーに迷惑をかける。
病状はこの一年で進み、特に下半身の筋力が落ち太股の痙攣が起こり、学校では車椅子生活が続いていた。
低カリウム周期性四肢麻痺
中学生で発症した遺伝子病だ。
子孫に遺伝する可能性のある病気のため、父は友国を建設会社後継者レースから外し、療養の為に地方に私立西尾乃高校を作り、仕事を用意してくれた。高校を卒業した後は、父の跡を継ぐだけだ。友国の人生は死ぬまで、もう、決まっている。
「おはようございます、ぼっちゃん。お友だちがいらしていますよ」
ホームヘルパーと言うより、家政婦と言う言い方のが似合う中年女性の加藤が、自分の家で作った米を炊いて、大量によそってくる。
「加藤さん、ご飯、そんなに食べられへんよ」
「でも、ぼっちゃん、たくさん食べへんと治られへんですよ」
「今日も美味しいですな、加藤さん」
「うちの父ちゃんの米は旨いだよ、旦那さん」
父はご飯好きで三杯はおかわりをする手前、友国は茶碗目一杯の飯を、辛い塩鮭で押し込む。そんな必死の朝御飯が終わった後、加藤から言われた言葉に、友国は立ち上がり松葉杖をついて玄関に行く。
「友国」
「あれ、鳥羽。どしたん?」
昨日、学校で粗相をした友国を隠蔽してくれようとした、転入生である鳥羽が玄関で頭を下げた。
「ここで働かせてください!」
「は?」
「ここで働きたいんです!」
「鳥羽、どしたん?働くて、なんなん?」
父もキッチンからやって来て、鳥羽を見た。
「昨日二年に編入した鳥羽光太郎くんだね。働きたいとは、なんだね?」
友国は鳥羽の顔を見つめた。左目元に小さなほくろがある。綺麗な顔をしていた。田舎くさくないと言ったら失礼かも知れないが、すっきりした面立ちで、背も高く大人っぽいと思った。
友国は病気になってからあまり背も伸びていないし、車椅子、松葉杖、なるべく安静の繰り返しで、空腹すらも感じないでいるから、小さくて痩せてきていて、それだから加藤に食べさせられていた。
「友国くんのヘルパーとして住み込みで働かせてください。学校でも対応出来ますし、空手を習っていますから、ボディーガードにもなります」
真剣な表情だった。
「うーん。学校、それは嬉しいが、ご両親は、納得していますか?」
父が静かに言う。
「了承済みです。父の再転勤で家族はいないです。しかし、俺はこちらに残りたいのです。祖父の五一の家は大人数で俺はいられません。お願いいたします、こちらで住み込みで働かせてください!」
「海の鳥羽のご家系ですか。実琴はどうしたい?」
「え、こっちに振る?鳥羽が、困ってるなら……まあ……あいつらを追っ払ってくれたら……」
実際、クラスメイト達には困っているのだ。正直、面倒くさい。
鳥羽があしらってくれるなら、それはそれで助かってしまうのだ。
「うん、じゃあ、いいね。お父さんもいいと思うよ。友達は多いほうがいい」
意外にも、父は鳥羽に深々と頭を下げたのだ。
鳥羽の働きぶりは目覚ましいもので、クラス内でも友国がちょっかいを出される前に動きだし、友国は粗相することなく平和に学校生活を送っている。しかも、家事都合で退学した会計にかわり、生徒会長にも入ってくれ、有能な一面を見せた。
「別に無理してるわけでもないか……性格か?」
実にまめで器用な鳥羽の働きぶりに、友国は風呂で椅子に座って体を洗いながら呟いた。浴槽にお湯が張ってある。昔は数ヵ月前には入ることが出来たが、今は入ると出られなくなるから、入ることが出来ないでいるのにともったいない思っていると、鳥羽が風呂に入ってきた。
「鳥羽?」
全裸の鳥羽が恥ずかしげもなく入ってきて、
「入浴補助。ついでに俺も入るし」
と告げる。
「ええっ」
バスブラシを取り上げられ、柔らか目のスポンジで泡立てた泡をゆっくりと撫でるようにつけて、その気持ちよさに驚いた。
「バスブラシも良いけど、皮膚を痛めるからなあ。ほら、前も」
背中から優しく洗われて、そのまま前も洗われてしまい、ぞくと震えが来る。
「ついでに、俺も洗うから」
横で床に座り込み体を洗う鳥羽が、シャワーノズルを渡してきて、友国は泡を自分で流していく。
「お湯張ったん、鳥羽?」
「おう。筋肉ほぐすのにいいから」
と、ひょいと抱き上げられ湯船につけられ、鳥羽のあぐらの中で支えられるように背後から抱き締められた。
「なんか、鳥羽馴れてるし」
「いや、ネットで見ただけだし。筋肉は動かさないと固まるからな」
腕が伸びて、ふくらはぎからゆっくりと揉みほぐされ、痩せた太股の内側を揉まれると、ぞくぞくと震えて、信じられないことに勃起してしまう。
「と、鳥羽。手、やばいて」
鳥羽は平然と、
「ん、ああ。出す?」
と言い放ち、股間に手を伸ばして、屹立を包み込んできた。
「ちょ……まっ……こゆのは、自分でっ」
湯が波立ち気持ちよさに鳥羽の手を離せないでいる。一年以上兆したことがないのに鳥羽に触られて快感が太股を震わせたが、放出が出来ない。
「も……手、手ぇ……離して。なんか……出えへん」
もう一歩排出の決め手が薄いのは、下肢の感覚が弱いからかもしれない。
「うーん、ちょっと待て」
鳥羽が友国ごと少しだけ腰を浮かし、トリートメントを指につけると、信じられない箇所に塗りつけて来た。
「やだっ」
尻の襞から違和感を感じその襞をくすぐるように中へ入り、指が下腹の一点を押してきた。かっ……と熱くなるような刺激に、友国は「ひっ…」と息を止める。
切ないような辛いような感覚が一気に競り上がり、鳥羽の手の動きに合わせて飛沫した。
「あっ……んんっ……」
息を詰めて何度も鳥羽の手の中に排出し、その白濁は湯の中に消える。
「はっ……はあっ……鳥羽、ごめんて」
「うん、俺もちょっと」
鳥羽が屹立した自分の切っ先を尻の方から太股の間に擦り付けて来て、まだ排出快楽に震える友国の性器をつかんで、擦り上げてきた。
「あ、あ、あっ」
放出後の淡い快楽が尾を引くように、切っ先をくすぐり鳥羽の排出する体液を見て、肌が粟立つような感覚を覚えて消える。
「鳥羽……疲れた。あれ、なんなん?」
「前立腺マッサージ。多分なんとかなると思って。あと、定期的に出さないと、中で精子腐るぞ」
「え、まじ?」
「四日にいっぺんくらいはな」
「無理だし……疲れた……」
体力を使い果たしたような脱力間に、立つことも座ることも出来なくて、鳥羽にバスローブを被せてもらい、抱き上げられてベッドに運ばれると、ボクサーパンツを渡されて、友国は驚いた。
「なんで…僕、漏らすやん」
屈辱感があるが事実なのだ。
「ベッドに防水性シーツをひいた。まあ、お前のトイレパターンもだいたい掴めたから安心しろ」
客間から入れたベッドに座ると、持ち込んだパソコンを見ている鳥羽は、パジャマがわりのシャツに短パンのままあぐらをかいている。
『友国、お願いがあるんだが……』
何人もと付き合って全ての女子に振られ続けたという鳥羽が、友国にどこが悪かったのか教えて欲しいと言うのである。
今日一日鳥羽といて、薄々分かってしまった。だが、それを言い出すタイミングも、信じられない程の眠気に苛まれ意識が落ちた。
朝は憂鬱だ。
しかし、今日の友国は良い香りで目が覚める。
この離れのキッチンからだ。
「下着……濡れてない」
ほっとしたのもつかの間、急に尿意が込み上げて、しかも、下腹を圧迫し立ち上がれない。
「あっ……と…」
鳥羽を呼ぼうとした時に、
「おはよう」
と鳥羽が来て抱えてトイレに連れていってくれ、友国は粗相しないですんだ。
「飯を変更した。調べたら、お前の病気には低インスリン型の食事が良いらしい。加藤さんのご飯中心メニューだと、悪化する。だいたい、加藤さんがホームヘルパーになってからだろ、酷くなったのは。食生活を改善して、病状落ち着かせりゃ車椅子要らなくなる」
鳥羽が夜中までパソコンに向かっていたのは、そのためかと友国は食卓に着く。
「炭水化物控えめの、野菜中心メニューな。よく噛んで食べろよ。あ、温野菜サラダからな」
飯は見たことのない茶色っぽい色だし、今までの半分位の量で、何だか手間隙がかかっている感じがして、ちらりと鳥羽を見つめる。
「別に無理はしていない。第一、仕事だし」
「あ、そう……そうだね……そうだもんね…」
友国は漠然としたもやもやに包まれ、何度も頷いた。
ゴールデンウィークも過ぎ、授業が本格化してきた中で、事案をプリントアウトし、各執行部員の前に鳥羽は置いた。
「さとやま再生プロジェクト杯の案はありませんか?」
友国が執行部の役員を見つめた。
「ちなみに、新しい会計の鳥羽のために言うとね、国のさとやま再生基金から助成金降りてる学生主体コンペなんだ。企画審査が通った三校が、夏休みに企画を行うわけ。一位にはさらに賞金が出る」
副会長の主税が鳥羽に告げてくる。
「はあ」
鳥羽は頷くが、それほど興味がなかった。
それよりもここ最近の友国の態度の方が、気になって仕方がない。
「他の二校は、もう、連絡が来ている。ポップンタウンという、職業体験だ。ポップンコインで物も買える。あとは、こども学校。こちらは自然体験とハンドメイド」
副会長の主税は、さらに力強く話してきて、執行部員も力強く頷いていた。
「はあ」
ちらりと友国を見るが、友国は鳥羽から目をそらし続けている。
「各クラス学級代表に、議題として挙げてもらい選びましょう。開催地はうちの高校裏の『さとやまの国』です」
友国が話を切った。
「鳥羽、こないだのアンケートの」
片付けていると、執行部のメンバーが声を掛けてくる。
「あ、ああ。まとめておいた」
「サンキュー、助かるし」
「あとさ、アンケートの第二段の内容の打ち出し…あ、友国?」
「先、行くし」
「鳥羽、実琴となんかあったん?」
「こっちが聞きたい」
主税が鳥羽にひそりと聞いて来る。
友国は自分一人で車椅子を押して、出ていってしまった。
友国の不機嫌は夜まで続いた。食欲もない。
「友国、風呂に入ろう」
食生活改善で部屋の中では松葉杖を使わなくても、鳥羽の支えがあれば自由に歩けるようになっていた友国が、手を取った鳥羽の手を払いのけた。
「友国?」
友国が下から睨んでくる。
「なんで鳥羽がもてへんかすっごい分かったし。僕に優しいて思ったら、みんなにも優しいやん!僕だけ特別って思っとったのに、馬鹿馬鹿しくなる!自己嫌悪するし!だから、鳥羽のまめで優しいとこが、もてへんわけ!」
友国の剣幕に驚き、鳥羽は友国の座っているソファの前にひざまづいて、友国を見上げた。
泣きそうなのに、絶対に泣かない友国。
「友国は俺のこと、好きなんだ?」
友国が鳥羽のポロシャツの胸ぐらを両手で掴んで前後に揺らす。
「あんなことされて、僕のことばっか見とって、好きにならんわけないやん!好きだし、好きだし、あほんだら鳥羽」
鳥羽は友国を抱き締めた。
「鳥羽?」
「友国は特別だ。そうじゃなくゃ、あんなことはしない」
「鳥羽は誰にでもするにきまっとる!僕の世話だって、介護程度に考えとるだら!」
「だったら、本当のセックスをする。そうしたら、誠意がわかるだろ」
「え?なんで?そうなるん?僕の話はっ」
「なんでもやんか。俺ら我慢のきかん高校生やん」
友国は薄明かりにして机からローションを持ってきた鳥羽に抱き上げられ、ベッドに座らされた。
「と、鳥羽。あのさあ、僕も言い過ぎ……うあ!」
下着とズボンを剥ぎ取られ、逃げるようにベッドの端に寄る。
「逃げたら、俺の誠意とか分からないだろうが」
「だって、怖いんだもん」
友国は鳥羽に向き直ると、鳥羽の顔を見上げた。
「友国」
「なに?」
「勃ってる」
友国は自分の高ぶりを指摘されて、真っ赤になる。しばらく鳥羽に冷たく当たっていたし、触られたくなかったから仕方がないのだが、今、鳥羽の目前で屹立しているのが恥ずかしい。
「不可抗力だし!」
手で押さえようとした友国の腰を掴むと、鳥羽が少し引き寄せてきて屹立をくわえられた。
温かく湿った咥内が気持ちよくて、ざらつく舌で裏筋を撫でられ息が止まりそうになる。
「んっ……んんっ……やっ……っ……だっ!どーして咥えるわけっ!」
「ネットに書いてあったから」
「そーゆーの調べなっ……うわっ」
腰を浮かすと尻の狭間に指が入り、友国の気持ちいい箇所を的確に突いてきた。足先から電気が走るような感覚が下腹に競り上がり、じわじわと排出に向けて快楽の震えがやって来る。切っ先を舐められ、割れ目に舌先をなぞられながら擦られて、飛沫しようとした友国の屹立から唇を離した。
「えっ……」
鳥羽が自分の屹立を取り出してローションを塗ると、友国の狭間にひた…とつけてきた。
「鳥羽っ……待って……あっ……あ……あああっ」
「待たん」
たっぷりと時間をかけて解された襞は、違和感があるものの痛みはなく鳥羽を受け入れてしまう。
「ふーっ」
開いた足の間に鳥羽がいて、体内に密着し、鳥羽の早い鼓動を感じた。
「なんで……」
友国は生真面目な顔をしている鳥羽を見る。
「好きだから、出来るんだ。こんなこと、好きじゃないとしないだろうが」
ぞく……と下腹が震えた。
「鳥羽……」
鳥羽の存在をありありと感じて、友国は鳥羽の首にしがみつく。屹立を挿入出され、襞が気持ちいい。一番気持ちいいのは、内壁越しに前立腺を刺激されること。
「あっ……あっ……ああっ!」
深く浅く押し込まれ、泣きそう切なさの中で、内壁が快楽痙攣を起こし襞がすぼまった。
「く…出る…」
そのきつい締め付けに鳥羽が、思わずといった風に友国の内壁に放ち、友国はその排出を襞に伝わる裏筋の律動で理解した。
「わ……悪い。今……」
「あっ!」
鳥羽の手が萎えた性器を撫でてしごいてきて、友国は腰が浮く。
「やっ……あっ……」
内壁の感じる部分を屹立した鳥羽の屹立で擦られ、鳥羽の手で屹立を刺激され、友国は弓なりになり背をそらせて吐飛させた。
「うっ……んっーーっ」
屹立の角度が悪かったのか、白濁は鳥羽の顔面に散り、友国は真っ赤になり、顔を手で覆う。
「ご……ごめん……鳥羽!」
友国の白濁を浴びて、鳥羽が呟いた。
「水鉄砲…スプラッシュ…ウォーターガンなんて、どうかな?さとやま再生」
友国は真っ赤になる。
「こんなときに!もう、こんなときにっ!」
「友国っ……締めるなって……いてて」
裸のまま疲れ果ててとろとろと眠たくなっていると、鳥羽がベッドに持ち込んだパソコンの画面を見せてきた。
「なあ、見てみろって」
「な……なんなん?」
「マイクロキメリズムっての。人間は体内に他の人のDNAを定着させるんだって。俺の遺伝子も今、友国の中に定着した」
だからなんだと、気だるく友国は腕を上げる。
「だからさ、きっと、いつかさ、病状も回復する……とか」
ああ……無意識なんだ。友国は苦笑した。無意識で無自覚な善意。それが唯一無二の鳥羽の気持ち。人のために尽くすことを当たり前とする鳥羽を理解できる人は少ないかもしれない。
「鳥羽の世話好きが遺伝子に入るのはやだけど……。うん。じゃあ、たっぷり時間をかけて、注ぎんよ。僕が治るかもしれへんし」
鳥羽が真っ赤になる。多分、これが正解だ。友国は笑った。
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