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1話「嘆きの墓標」
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――その頃……
カトリの体術でネーメットは勢いよく壁に叩きつけられ、背中を強く打ちつけたせいで咳き込みながら床に座り込んだ。
「っ…剣で斬っても、魔法で攻撃しても…傷一つつける事ができぬとは、のぅ。ごほっ…これは困ったわい」
「…そんなに深い傷ではないようだけど、後で医者に診てもらった方がいいよ…念の為に」
ネーメットに駆け寄ったハミルトの治癒魔法で、痛みの和らいだネーメットは小さく息をつく。
「すまんのぅ…だいぶ楽になったわい。しかし、お前さんも…かなりダメージを受けておるじゃろ?」
「まぁ、大丈夫だと思うよ…これくらいは」
満身創痍のハミルトは首を横にふると、表情のないカトリに目を向けながら答えた。
そして、腕をおさえながら立ち上がり術式を描きはじめる。
「彼女は、もういない…と、頭ではわかっていたんだけどね」
ハミルトが術式に魔力を込めるとカトリの周囲の空気が凍てつきはじめ、一瞬にして彼女を氷柱へと閉じ込めた。
しかし、カトリを捕らえていた氷柱は瞬時に砕け散り…自由となったカトリは人間離れした速さと動きで、術者であるハミルトに殴りかかる。
それを紙一重で交わしたハミルトは、苦笑混じりに呟いた。
「カトリ…昔から運動神経は良かったけど、まさか…これほどとは思ってなかったな」
「生きる屍、じゃからのぅ…痛みを感じぬ分、多少の無茶もできるのじゃろうて」
そう語ったネーメットはカトリに斬り込むが、あまりダメージにならなかったようで彼女は意に介さず蹴り攻撃を仕掛けてくる。
それを左腕で受け止めたネーメットが再び斬り込もうとするも、カトリが大きく跳び下がられてかわされた。
舌打ちをしたネーメットと、新たに術式を描きだそうとしているハミルトを交互に見つめたカトリが両手を高く掲げると術式を描きはじめる。
その術式を確認したネーメットとハミルトは、ゆっくりと息を飲んだ。
「あれは…少々まずいのぅ」
「こんな狭い場所であの術は…軽く、この一帯が吹き飛ぶだろうね。でも…――」
彼女が使おうとしている魔法はこの地下研究室どころか、墓地一帯をぶっ飛ばすくらいの威力があるだろう……
それと、もう一つ…ある事に気づいたハミルトは唇を噛みしめて言葉を続ける。
「…カトリの魔力では、あんな大規模な魔法は使えないはず。まさか、あいつら…私がいない間に――」
カトリの魔力は元来少なく、初級レベルの魔法がせいぜいであるのを知るハミルトは複雑な面持ちで彼女を見つめた。
ハミルトの肩をたたいたネーメットは、剣を持ち直しながら声をかける。
「…我ら2人で、術の発動を阻止するしかないのぅ――あのバカが戻ってくるまで」
『あのバカ』が誰の事か、何となくわかってしまったハミルトは目を丸くさせ苦笑した。
「…カトリにあんな事をさせているあいつは近くに潜んで、この様子を楽しんでいると思う」
「これだけ死者の気配が色濃いと、どこにいるかがまったくわからんからのぅ…」
気配を探っていたネーメットはハミルトと目の動きだけで打ち合わせると、タイミングを合わせてハミルトが術式を描き魔力を込める。
ハミルトの術式から生みだされた霧は、カトリの動きと視界を奪った。
そして、隙のできた彼女の胴を斬ろうとネーメットが動く。
よろけて座り込んだカトリの描いていた術式が消え、ネーメットとハミルトは安堵のため息をついた。
***
カトリの体術でネーメットは勢いよく壁に叩きつけられ、背中を強く打ちつけたせいで咳き込みながら床に座り込んだ。
「っ…剣で斬っても、魔法で攻撃しても…傷一つつける事ができぬとは、のぅ。ごほっ…これは困ったわい」
「…そんなに深い傷ではないようだけど、後で医者に診てもらった方がいいよ…念の為に」
ネーメットに駆け寄ったハミルトの治癒魔法で、痛みの和らいだネーメットは小さく息をつく。
「すまんのぅ…だいぶ楽になったわい。しかし、お前さんも…かなりダメージを受けておるじゃろ?」
「まぁ、大丈夫だと思うよ…これくらいは」
満身創痍のハミルトは首を横にふると、表情のないカトリに目を向けながら答えた。
そして、腕をおさえながら立ち上がり術式を描きはじめる。
「彼女は、もういない…と、頭ではわかっていたんだけどね」
ハミルトが術式に魔力を込めるとカトリの周囲の空気が凍てつきはじめ、一瞬にして彼女を氷柱へと閉じ込めた。
しかし、カトリを捕らえていた氷柱は瞬時に砕け散り…自由となったカトリは人間離れした速さと動きで、術者であるハミルトに殴りかかる。
それを紙一重で交わしたハミルトは、苦笑混じりに呟いた。
「カトリ…昔から運動神経は良かったけど、まさか…これほどとは思ってなかったな」
「生きる屍、じゃからのぅ…痛みを感じぬ分、多少の無茶もできるのじゃろうて」
そう語ったネーメットはカトリに斬り込むが、あまりダメージにならなかったようで彼女は意に介さず蹴り攻撃を仕掛けてくる。
それを左腕で受け止めたネーメットが再び斬り込もうとするも、カトリが大きく跳び下がられてかわされた。
舌打ちをしたネーメットと、新たに術式を描きだそうとしているハミルトを交互に見つめたカトリが両手を高く掲げると術式を描きはじめる。
その術式を確認したネーメットとハミルトは、ゆっくりと息を飲んだ。
「あれは…少々まずいのぅ」
「こんな狭い場所であの術は…軽く、この一帯が吹き飛ぶだろうね。でも…――」
彼女が使おうとしている魔法はこの地下研究室どころか、墓地一帯をぶっ飛ばすくらいの威力があるだろう……
それと、もう一つ…ある事に気づいたハミルトは唇を噛みしめて言葉を続ける。
「…カトリの魔力では、あんな大規模な魔法は使えないはず。まさか、あいつら…私がいない間に――」
カトリの魔力は元来少なく、初級レベルの魔法がせいぜいであるのを知るハミルトは複雑な面持ちで彼女を見つめた。
ハミルトの肩をたたいたネーメットは、剣を持ち直しながら声をかける。
「…我ら2人で、術の発動を阻止するしかないのぅ――あのバカが戻ってくるまで」
『あのバカ』が誰の事か、何となくわかってしまったハミルトは目を丸くさせ苦笑した。
「…カトリにあんな事をさせているあいつは近くに潜んで、この様子を楽しんでいると思う」
「これだけ死者の気配が色濃いと、どこにいるかがまったくわからんからのぅ…」
気配を探っていたネーメットはハミルトと目の動きだけで打ち合わせると、タイミングを合わせてハミルトが術式を描き魔力を込める。
ハミルトの術式から生みだされた霧は、カトリの動きと視界を奪った。
そして、隙のできた彼女の胴を斬ろうとネーメットが動く。
よろけて座り込んだカトリの描いていた術式が消え、ネーメットとハミルトは安堵のため息をついた。
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