うたかた夢曲

雪原るい

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5話「幼い邪悪[後編]~復讐の終わり~」

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ゆっくりと飛ばされた剣を拾ったルフェリスはセネトの方を一切見ず、独り言のように語りはじめた。

「…昔、僕達兄妹はさ。フレネ村の近くに捨てられていたそうなんだ…親の顔は、幼すぎて覚えていない。でも…この剣を、どうやら親が僕に持たせてくれたそうでね。それを知っていたのか、調べたのか…死んだ育ての親が『大切に持っていろ』って――」


育ての親が亡くなる前に、弟妹の存在を教えられたのだ…とルフェリスは言う――その時の年齢は15歳だったそうだ。


剣をとても大切そうに眺めた後…セネトの方に目を向けると、さらに言葉を続ける。

「ようやく再会できたと思ったら、あんな事になって…肉親を失う、その辛さをわかってもらえるかな」
「…だからと言って、この方法は少し間違っていると思うぞ。正しい方法があるわけじゃないけど…だから、もうやめにしないか?」

再度、説得を試みるセネト…しかし、ルフェリスは首を横にふった。

「それはできないよ…僕らには、んだ。やっておかないと、最期の時に必ず後悔する…止めるなら、君達が全力で来たらいい」

剣を構えたルフェリスは哀しそうな…そして、辛そうな笑みを浮かべながらセネトへ斬り込む。

武器の類を持っていないセネトは密かにクレリアから何か借りればよかった…と後悔したが――もう、どうにもならないので魔法で結界をはって攻撃を防いだ。
そして、どうにかしてルフェリスに攻撃できないものか…と考えるセネトに、ため息をついたウィルネスが声をかけた。
――それと同時に、セネトの足元にナイフが転がってくる。

「…まったく、最近の新入りは…わしのを貸してやる、それを使え」
「助かった…ウィルネスのじいさん、サンキュー!だけど、相手は剣だから長さが――あぁ、そうだ!」

ナイフを拾うとウィルネスに礼を言ったセネトは少し思案し、ナイフに向けて術式をひとつ描きだした。
すると、術式から冷気が発生し…ナイフの刃を包み込むと氷の刃が伸びる。

それを満足そうに見たセネトは、次の攻撃が繰り出される前に結界を解いて迎え撃つように斬り込んだ。


***


「事情はどうあれ、少しお仕置きとお説教が必要なんだろうな。まだまだ幼いお嬢さん達には……」

ポケットから煙草を一本出して口にくわえると、自ら魔法で火を点けたイアンが2人の少女――ユミリィとミリスの前に立つ。
そして、くわえていた煙草を手に持つとゆっくり息をついた。

「何事にも、限度というものがある。お前達は少しやり過ぎたんだ。どんな理由があろうと、な」
「それじゃ、どうする事が一番だったの?誰も、助けてはくれなかった…今まで、ずっと」

ユミリィは、苛立った様子で言う――どんなに訴えても、誰も何もしてくれなかった…救おうとしてくれなかった、と。
ゆっくりと、その事実を認めるように頷いたイアンが優しく言った。

「そうだな…それに気づいた時点で、フレネ村の凶行を止めるべきだったんだろう。これ以上、奴らの好きにはさせない…だから、俺達はお前達の成そうとしている事も止めさせてもらう」
「ふ、ふん…できるなら、やってみなさいよ!!」

ユミリィが隣にいるミリスと目配せしあった後、2人の少女は手を合わせて術式を描きはじめた。
小さな声で、詠唱をしながら……

その様子を見たイアンは、仕方ない…と深いため息をつくとホルダーから銃を出し――弾を確認する。

(まぁ…ならば、あのお嬢さん2人にダメージをあまり与えず驚かせるくらいはできるか…)

2人の少女を、これ以上傷つけたくなかったイアンは今回持ってきた弾が夢魔には効かないもので良かった…と密かに安堵した。
驚かせて戦意を失わせる事ができれば、ミリスの兄であるルフェリスとヴァリスを止められるのではないか…と考えたイアンが協力魔法を唱えている少女2人に銃を向ける。


***


ヴァリスと同じく、セネトが暴走せぬよう願いつつ…クリストフはヴァリスに訊ねた。

「方法や…何か解決法を、あなたならば考えついたはずです。思いとどまる事だって…」

少しの間であったが――共に行動した中で、ヴァリスが頭のきれる人物なのではないかとクリストフは思っていた。
そもそも、あの村の人々に気づかれず行動を起こせていたのだから……

ヴァリスは少し困惑した表情で、顎に手をあてると答える。

「そうかもしれません…でも、私はどうしても赦せなかった。大切な肉親を失う気持ち…クリストフさま――貴方ならば、わかってくださりますよね?」
「誰が話したのかは、だいたい予想できますが…気持ちはわかりますよ、僕も似たような境遇ですから。ですが、この復讐は新たな哀しみの連鎖を生み出す事になるんですよ」

おそらく…今もミカサとクレリアと共にいるであろう子供達の事を指して、クリストフは言う――成長した時、ヴァリス達がした事を知ったら…同じように復讐を決意するかもしれない、と。
それを聞いたヴァリスは、小さく笑みを浮かべる。

「そうですね、彼らに私達と同じ苦しみを背負わせてはならない…彼ら自身に罪はない。それは、わかっているんです。でも、もうが近づいているんです…約束の時が。止めるなら、クリストフさま…止めてください、私達を――」

ヴァリスの浮かべる笑みの中に深い哀しみがあるのに気づいたクリストフだったが、ヴァリスが術式を描き詠唱をはじめたのを見て自身も術式を描きだす。

――ヴァリス達の言うが、何を意味するのかはわからない…だが、何か嫌な予感がしているクリストフは彼らを止める為にはこうするしかないのだろうと小さく息をついた。


***
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