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6話「王女と従者と変わり者と…」
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(えーっと…こっちだったよな、クリストフの部屋は――)
水竜の少年・ユハは、協会本部の階段を上って4階に辿り着いた。
その廊下で立ち止まり、首にかけているペンダントを右手で握り締めて独り愚痴る。
「…よし、ちゃんと約束を守らないとだよな。大切なコレを――って、そういえばどこだっけ?」
目的のクリストフの部屋を目指して4階まで来たまではよかったが、部屋が何部屋かあるのでどこが何の部屋なのか外部の者であるユハにはわからなかった。
扉には番号が1から5まで付けられ、突き当りは渡り廊下となっており…おそらく向こうも今いるところと同じ構造なのだろう。
最初から受付でクリストフの部屋を訊ねるなり、呼び出してもらうなりすればよかったなと考えたユハだが…急いでいた上に、記録が残る事で目的達成の妨げになるかもしれないと首を横にふった。
仕方がないので扉に耳をあてて様子を窺い、目的の部屋を探る事にしたユハは近くにある『1号室』と書かれた扉に耳をあてる。
(…何か、刃物を研いでるような音がする…怖っ)
静かに扉から離れ、次に『2号室』と書かれた扉に耳をあてて様子を窺った。
微かだが、話し声が聞こえてきたので好奇心から集中して聞き耳をたてる。
聞こえてきたのは、どうやら若い男性の声のようだ。
――…それが、一体何だというんだ?
――…知っていて隠していたという事ですか、キリル叔従父?
(キリルって言ったら…確か、今はクリストフの手伝いをしてる奴だったよな?)
知った名が聞こえたのでここが目的の部屋か、と考えたユハだったが肝心のクリストフの声が聞こえてこない。
首をかしげながら、更に聞き耳をたてた。
――…理由は、何となく分かりますが…俺やヴェンデルにだけは知らせて欲しかったですよ、キリル殿。
会話の感じからして、どうやらキリルの他に2人いる事は分かった…が、それしかわからない状態だ。
もう少し聞き耳をたててみようとするが、何故かキリル達の声は聞こえなくなり…ユハはもどがしげに眉を顰めた。
…その瞬間、急に扉が――どうやら内開きタイプだったらしく、開いた瞬間ユハの身体は前のめりに倒れそうになる。
姿勢を崩したユハの襟首を誰かが掴むと、強引に部屋へ引き入れた。
「へっ…うわっ!?」
床に、転がされるように倒れたユハは突っ伏したまま息をつく。
「…はぁ、やっぱりバレてたか」
「当たり前だ…確か、水竜のユハだったな。ここで何をしていた?何を聞いた?」
突っ伏したままのユハに声をかけたのは、呆れた様子のキリルだ。
残りの2人は静かにキリルとユハを、無表情で窺っていた。
起き上がったユハは、肩を回しながら答える。
「何を、って…クリストフの部屋を探して盗み聞ぎ。で、何を聞いたかだっけ…キリルが何か隠してて、この2人が知りたかったのに教えてくれないからショックだったぁ~までしか聞いてない」
「…俺、そんな風に言ったか?」
思わず呟いたのは紫色の髪をした青年で、自分の言葉がそんな風に聞こえていた事にショックを受けたらしい。
何とも言えない表情を浮かべた黒髪の青年が、隣にいる紫色の髪をした青年の肩に手を静かに置いた。
ユハの話から重要な部分は聞かれていないと判断したキリルは、安心したように息をつく。
「ならいい…我が主の部屋は『5号室』だ。そうだな…もう用は済んだので、私が案内しよう」
「それは助かるけど…2人と話し中じゃなかったっけ?」
部屋が何処か分かったので一人で行けるし、キリルはゆっくり話をすればいいのに…とユハは言った。
…だが、キリルは首を横にふるとユハの腕を引いて部屋を出ようとする。
ちなみに、キリルとユハの身長差は数センチしかないので腕を引っぱられても引きずられずに済んでいた。
「キリル叔従父、まだ話は終わっていない――」
「その話は後日する…私が勝手に話したと知られれば、お前らもあの方に仕置きされるかもしれんぞ?それと、わかっているだろうが」
尚も引き止めようとする2人に、キリルは声を潜めて脅すように続ける。
「その件を他言すれば、ただで済むと思うなよ…ヴェンデル、テルエル」
「…わかりました」
キリルの言葉が本気であると理解した黒髪の青年・ヴェンデルと、紫色の髪をした青年・テルエルは小さく頷いた。
2人の返事を聞いたキリルは、ユハの腕を引くと部屋を出ていった……
キリルの後ろ姿を見送ったヴェンデルとテルエルは、深くため息をつく。
(…やはり、だったな。しかし、どうしたものか…だ。下手な動きをすれば、あいつらに気づかれかねん)
(あー…それもだが、あの方の仕置きもな。運良くあいつらに気づかれず済んだとしても、間違いなくイオン殿とは別の恐怖が待っている)
確認だけはできたので、今は大人しくしておこう…と、2人の意見が一致したのでそのまま仕事に戻っていった。
***
水竜の少年・ユハは、協会本部の階段を上って4階に辿り着いた。
その廊下で立ち止まり、首にかけているペンダントを右手で握り締めて独り愚痴る。
「…よし、ちゃんと約束を守らないとだよな。大切なコレを――って、そういえばどこだっけ?」
目的のクリストフの部屋を目指して4階まで来たまではよかったが、部屋が何部屋かあるのでどこが何の部屋なのか外部の者であるユハにはわからなかった。
扉には番号が1から5まで付けられ、突き当りは渡り廊下となっており…おそらく向こうも今いるところと同じ構造なのだろう。
最初から受付でクリストフの部屋を訊ねるなり、呼び出してもらうなりすればよかったなと考えたユハだが…急いでいた上に、記録が残る事で目的達成の妨げになるかもしれないと首を横にふった。
仕方がないので扉に耳をあてて様子を窺い、目的の部屋を探る事にしたユハは近くにある『1号室』と書かれた扉に耳をあてる。
(…何か、刃物を研いでるような音がする…怖っ)
静かに扉から離れ、次に『2号室』と書かれた扉に耳をあてて様子を窺った。
微かだが、話し声が聞こえてきたので好奇心から集中して聞き耳をたてる。
聞こえてきたのは、どうやら若い男性の声のようだ。
――…それが、一体何だというんだ?
――…知っていて隠していたという事ですか、キリル叔従父?
(キリルって言ったら…確か、今はクリストフの手伝いをしてる奴だったよな?)
知った名が聞こえたのでここが目的の部屋か、と考えたユハだったが肝心のクリストフの声が聞こえてこない。
首をかしげながら、更に聞き耳をたてた。
――…理由は、何となく分かりますが…俺やヴェンデルにだけは知らせて欲しかったですよ、キリル殿。
会話の感じからして、どうやらキリルの他に2人いる事は分かった…が、それしかわからない状態だ。
もう少し聞き耳をたててみようとするが、何故かキリル達の声は聞こえなくなり…ユハはもどがしげに眉を顰めた。
…その瞬間、急に扉が――どうやら内開きタイプだったらしく、開いた瞬間ユハの身体は前のめりに倒れそうになる。
姿勢を崩したユハの襟首を誰かが掴むと、強引に部屋へ引き入れた。
「へっ…うわっ!?」
床に、転がされるように倒れたユハは突っ伏したまま息をつく。
「…はぁ、やっぱりバレてたか」
「当たり前だ…確か、水竜のユハだったな。ここで何をしていた?何を聞いた?」
突っ伏したままのユハに声をかけたのは、呆れた様子のキリルだ。
残りの2人は静かにキリルとユハを、無表情で窺っていた。
起き上がったユハは、肩を回しながら答える。
「何を、って…クリストフの部屋を探して盗み聞ぎ。で、何を聞いたかだっけ…キリルが何か隠してて、この2人が知りたかったのに教えてくれないからショックだったぁ~までしか聞いてない」
「…俺、そんな風に言ったか?」
思わず呟いたのは紫色の髪をした青年で、自分の言葉がそんな風に聞こえていた事にショックを受けたらしい。
何とも言えない表情を浮かべた黒髪の青年が、隣にいる紫色の髪をした青年の肩に手を静かに置いた。
ユハの話から重要な部分は聞かれていないと判断したキリルは、安心したように息をつく。
「ならいい…我が主の部屋は『5号室』だ。そうだな…もう用は済んだので、私が案内しよう」
「それは助かるけど…2人と話し中じゃなかったっけ?」
部屋が何処か分かったので一人で行けるし、キリルはゆっくり話をすればいいのに…とユハは言った。
…だが、キリルは首を横にふるとユハの腕を引いて部屋を出ようとする。
ちなみに、キリルとユハの身長差は数センチしかないので腕を引っぱられても引きずられずに済んでいた。
「キリル叔従父、まだ話は終わっていない――」
「その話は後日する…私が勝手に話したと知られれば、お前らもあの方に仕置きされるかもしれんぞ?それと、わかっているだろうが」
尚も引き止めようとする2人に、キリルは声を潜めて脅すように続ける。
「その件を他言すれば、ただで済むと思うなよ…ヴェンデル、テルエル」
「…わかりました」
キリルの言葉が本気であると理解した黒髪の青年・ヴェンデルと、紫色の髪をした青年・テルエルは小さく頷いた。
2人の返事を聞いたキリルは、ユハの腕を引くと部屋を出ていった……
キリルの後ろ姿を見送ったヴェンデルとテルエルは、深くため息をつく。
(…やはり、だったな。しかし、どうしたものか…だ。下手な動きをすれば、あいつらに気づかれかねん)
(あー…それもだが、あの方の仕置きもな。運良くあいつらに気づかれず済んだとしても、間違いなくイオン殿とは別の恐怖が待っている)
確認だけはできたので、今は大人しくしておこう…と、2人の意見が一致したのでそのまま仕事に戻っていった。
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