追憶のステンドグラス

雪原るい

文字の大きさ
6 / 17
一章 ステンドグラスは幻に…

5:ゾンビ祭りの真相…?

しおりを挟む
とりあえず、僕にとっての恐怖の存在であるアルヴィドを墓地の調査へ向かわせ…その間に、件のワーウルフの元へ行く事にしました。

彼の気配と首輪の力を辿り…人目につかない木のうろで、僕が渡した服を身に着けて丸くなり寝ている様子。
…やはり夜行性なので、日中は眠っているんでしょうが――正体を知らなかったら、昼間でも寝てるダメ人間にしか見えないでしょう。

そんな事よりも…です。
早々に、こいつに事情説明しておかないと勘違いストーカーな神官騎士が暴走する予感しかしません…

「…あ、リルハルト様」

僕の気配に気づいたらしい彼は目を覚ましてくれました…気持ち良く寝ているところを申し訳ない気分です。
どうしたのかと尋ねる彼に、僕は簡単に今の状況を説明しました。
…もちろん、あの神官騎士の存在も。

危険な状況でもあるので、手伝いは日中だけしてほしいと頼むと彼は小さく頷いてくれました。

あぁ…そういえば、このワーウルフの名は訊いてませんでしたね。
その事を尋ねてみると、彼は少し慌てたように頭を下げた。

「申し訳ありません、俺の名はダウィト=ロウです。あ…後、真名は――」

きちんと真名も教えてくれたので、ちゃんと褒めておきます…頭を撫でて。
とりあえず、今日はゆっくり休むよう命じて僕はダウィトのねぐらを後にしたんですが…どうも、あいつの気配がするんです。

あの神官騎士アルヴィドの気配が…――

墓地とは反対方向ですが、あいつは何を…あぁ、僕の動向の監視でしょうね。
大人しく墓地を調査していろよ…とは思います。
何故、あいつが僕に興味を持ったのか本気でわかりませんが…


***


ダウィトのねぐらからだいぶ離れた所にある大きな樫の根元に僕は腰をおろす事にしました。

…まだアルヴィドの気配を感じるので、付かず離れずの距離を保っているのでしょう。
ダウィトの所から引き離す事には成功ですが、一体何の用があるというのか…僕に。

大きなため息ひとつ出てしまったところで、頭上から笑い声が聞こえてきました。

「あはは、お前また変なのに目をつけられてんのな?好かれ過ぎだろー」

見上げると、そこには兄のエルハルトが太めの枝の上に立っているのがわかりました。
兄はおそらく気づいているのでしょう…アルヴィドがエンクヴィストの生まれ変わりなのを――
そういえば、あいつと一番剣を交えていたのが兄だったと思うのですが…友認定されてませんでしたね。

ちなみに、僕は剣を扱うより魔法を使う方が得意なんですよ。
――兄が前衛、僕が後衛で戦う感じになります。

「そう思うのでしたら、兄さん…何とかして下さい」

ダメ元で兄に助けを求めてみましたが、「無理無理」と断られてしまった。
…残念です。

そういえば、今日は何をしに来たのだろうか…兄は?
どう見ても一人のようですし…粉砕犯も連れてきていない。

「…兄さん、手ぶらで何をしに?」

目の前に降りてきた兄へ、思わず怒りを込めて訊いてみると…兄は肩をすくめて、また笑う。

「いや、本当はミンナを連れてこようとしたんだが『ゾンビは嫌だー』って逃げてしまってなー。あはははー」

ミンナというのは、序列8位の…やらかしたと言いながら、実際はステンドグラスを粉砕した凶悪犯です。
ちなみに、魔族のくせにゾンビが大の苦手なんだそうですが…よくそれで8位を保てるものだと感心しますよ。
…というか、よく序列2位の兄から逃げ遂せたものだ。
逃げ遂せた、というより兄が手をかなり抜いてあげたんでしょうねぇ。
弟である僕にも、そういう優しさをくれてもいいのでは…?

「そんな事よりも、面白い話があるんだが聞くか?」
「…今の、僕の状況より面白いなら聞いてもいいですよ」

話題を変えようとしてきた兄に笑顔で答えておきました。
僕の言動に、若干ひきつった笑みを兄は浮かべてますが…何か思うところでもあるんですかねぇ?

僕は別に怒ってませんよ、兄さん…

小さく息をついた兄は僕の隣に腰掛けると、辺りの様子をうかがいながら話しはじめました。

「…どうも、前回俺達に協力してた魔術師達があちこちに魔道具を仕掛けてるみたいでなー。俺達の気配というか魔力を感知すると作動するらしいんだ…で、あの廃協会近くの墓地にも置かれてるようだぞ」
「それが…ゾンビ祭りが開催された理由ですか。というか、そんな物を仕掛けたという話も報告もなかったと思うのですが?」

人を裏切った魔術師というのは、前回多かった…
理由はいつも通り、力を持たぬ人々に恐れられ虐げられたからというものに加え…情勢不安と疫病も流行っていたのも合俟ったようです。

そんな彼らは、僕達が倒された後に呪いのつもりで各地に魔道具を仕掛け…僕らが復活した時に作動するようにしていたようだ、と兄が教えてくれました。
まぁ、調べたのは"我が君"なのでしょう…さすがです。

…でも、何故それがわかったのでしょうか?
"我が君"も倒された後に仕掛けられたそうですが…?

疑問が僕の顔に出ていたのでしょう、兄が笑みを浮かべて教えてくれました。

「逃げ回るミンナを追ってたら、ゾンビがあちこち出現してなー…追うのをやめて、"我が君"に報告したんだわ」

その流れでいくと、ゾンビに遭遇して恐怖したミンナを回収した兄が"我が君"に報告…で、"我が君"がお調べになったという事でしょう。
あちこちゾンビが出現って…何ですか、そのちょっとした地獄風景は。
しかも、その原因は僕と同じく魔力が不安定な…序列2位と8位の魔力を糧に魔道具が動いてるんですから、本当に笑うしかない状況ですね。

あの魔導師ども、余計な事をしてくれましたね…僕が思わず笑い声をあげると、兄も笑いはじめました。

…よし、アルヴィドを兄に押しつけよう――
久しぶりに剣を交えればいいんじゃないですか、もっと楽しいと思いますよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

冴えない建築家いずれ巨匠へと至る

木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」 かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。 安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。 現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。 異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

処理中です...