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一章 ステンドグラスは幻に…
4:…いらっしゃいませ、魔の巣窟へ
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あー…ほら、予想通りの展開じゃないか…と大きなため息がでました。
とりあえず、衣服を押しつけてワーウルフを人気のない森へ避難させましたが…逃がさぬよう、一応首輪をつけておいたのでいつでも呼び戻せます。
そんな事よりも、だ…先ほども言ったとおり、ため息が出てしまう状況なわけです。
「失礼する…貴殿は、ここで何をしている?」
僕の目の前に立つ男が言ってるのですが…この男は間違いなく人間で、神官騎士のようだ。
…神官と騎士の両方とは、なかなか面白いですよね――聖騎士じゃあ、ダメだったんですか?
まぁ、そんな事を考えてしまいましたが…それを口に出す事はできません。
「ここで一晩過ごしておりました…神官騎士様こそ、どうされましたか?」
あたりさわりのない返事をしておきましたが、彼の反応はいまひとつの様子。
もしかして、また死霊術士にでも間違われたか…と思ったんですが、ただ無表情に僕の頭から足先までを確認するように見て小さく頷くだけです。
不思議に思い首をかしげる僕に、彼は申し訳なさそうに声をかけてきた。
「あぁ、すまない…知り合いに似ている気がしてな。それよりも、貴殿は巡礼者かな?」
「まぁ…そのようなっものです。ここは捨て置かれたままでしたので、せめて安寧の地にしたく――」
もっともらしい事を言ってみましたが、心の中で自分は何を言っているのだろうと呆れてしまいました…仕事なので、そこは我慢です。
しかし、知り合いに似ているからと言ってじろじろ見られても困ります…
彼の年齢から考えても、僕と会った事は絶対にない――というより、僕らはつい最近復活したばかりなのだから出会うなどあり得ない。
あり得ないのですが…彼に気づかれぬよう、魔法で探りを入れて僕は気づいてしまった。
…でも、気づかぬふりでいきます。
前も言ったとおり、準備ができてないんです…色々と。
大体、彼は僕に気づかれぬよう…教会周辺に部下達を配置して、合図を待つように命じてるみたいです。
ならば、おあいこでしょう…というか、何なんだこの茶番はっ!
お互いに無言のまま、数分が経ちました。
とりあえず、来てしまったのならば仕方ないので…彼らにひと仕事してもらって帰ってもらいましょうかね。
「そういえば、僕の質問に答えを頂いておりませんが…神官騎士様方は、何故こちらへ?」
さっきから、視界の端にチラチラと貴方の部下達がこちらの様子を窺っているのが見えてるんだという思いを込めて訊ねてみました。
まぁ、わかりますよ…数分間も無言で立っているんですからね、僕達は。
「あ、あぁ…そうだったな。突如、この辺り一帯で闇の気配が濃くなってな…何が起こったのか調査の為、我々が派遣されたのだ」
…何か、申し訳なくなりました。
目覚めさせるつもりも予定もなかったのに、ゾンビ祭りを開催させてしまいましたからね…
本来の力が戻っておらず魔力が不安定なのが原因でして、そこは反省しております。
「そうだったのですね」と笑顔で答えておきましたが、内心穏やかではありません…
調査が半日で終わるとは、とても思えないのだから。
もうついでに、教会内の死霊もどうにかしてくれればいいのに…と、自棄を起こしたくなりました。
***
「…調査、という事ですけど貴方だけがここに滞在するつもりなんですか?」
思わず訊いてしまいましたが、神官騎士は気分を害した様子もなく首をかしげています。
…彼は部下達を全員帰して、何故か自分だけ残って元壁であった瓦礫に腰かけているんですよ。
部下達が寂しそうにしてたじゃないですか…つーか、お前も帰れよ!
何故、ここに残るんだ!
ひとりで何を調べる?
ちなみに、今は昼時…彼は、部下達が置いていってくれた昼食を準備しています。
僕の分もあるそうで、仲良く昼食を頂いております…サンドイッチ美味い。
「…まぁ、一応調査をしなければならないからな。それに、困っている友を見捨てられんからな…」
こちらの様子を窺いながら、そう言った彼はゆっくりとお茶を飲んでいる…んですが。
おい、ちょっと待て…
何か、とんでもない言葉を言わなかったか?
誰が貴方の友だって…?
助けてください、"我が君"…こいつ、生まれ変わっても何も変わってないです!
前世が変わり者だと、今世もなんですか?
あの時――
僕は敵だというのに「あいつは俺の友だ…だから、全力で戦って目を覚まさせる!」と勇者の盟友である騎士の彼が言っていた。
はっきり言って、友情など育んだ覚えはないです…
奴が勝手に、友人だと思っていたのだから。
しかも、最終決戦にて勇者が僕を倒した際――遠のく意識の中、確かに聞きました…
「お前は素晴らしいライバルで親友だった」という言葉を。
男泣きもしてましたねぇ…勇者も彼に「すまない…」と申し訳なさそうに言うし。
友人から親友という名のライバルに格上げしてました…
死んでも死にきれないという言葉を、あの時ほど思い知らされるとは思わなかった。
復活した現在、もう会わなくて済むと思っていたのに…何故なんでしょうか?
呪いですか、神からの。
しかも、こいつはここに居座る気でいるんですが…嫌がらせの類かなんですか?
厄日なのか…本当に。
「あ、そうだ…まだ名乗ってなかったな。"今の"俺の名前は、アルヴィド・エト・ラウドゥという…リル、よろしくな」
僕は聞かなかった事にしたい…というか、こいつ「今の」をつけましたね。
しかも、僕の愛称まで考えてるし…
「前」を覚えてるんですか、こいつは…永遠に忘れていてほしかったです。
神、仕事してください…切実なお願いです。
あー…まだ躾してないワーウルフもいるのに、何故こうも厄介な事が起こるんですかね。
というか、エンクヴィスト…いえ、今はアルヴィドですね――また、あの茶番劇を最期の時に見せるつもりなら止めてくださいね…と密かに願うしか、僕にはできなかった。
とりあえず、衣服を押しつけてワーウルフを人気のない森へ避難させましたが…逃がさぬよう、一応首輪をつけておいたのでいつでも呼び戻せます。
そんな事よりも、だ…先ほども言ったとおり、ため息が出てしまう状況なわけです。
「失礼する…貴殿は、ここで何をしている?」
僕の目の前に立つ男が言ってるのですが…この男は間違いなく人間で、神官騎士のようだ。
…神官と騎士の両方とは、なかなか面白いですよね――聖騎士じゃあ、ダメだったんですか?
まぁ、そんな事を考えてしまいましたが…それを口に出す事はできません。
「ここで一晩過ごしておりました…神官騎士様こそ、どうされましたか?」
あたりさわりのない返事をしておきましたが、彼の反応はいまひとつの様子。
もしかして、また死霊術士にでも間違われたか…と思ったんですが、ただ無表情に僕の頭から足先までを確認するように見て小さく頷くだけです。
不思議に思い首をかしげる僕に、彼は申し訳なさそうに声をかけてきた。
「あぁ、すまない…知り合いに似ている気がしてな。それよりも、貴殿は巡礼者かな?」
「まぁ…そのようなっものです。ここは捨て置かれたままでしたので、せめて安寧の地にしたく――」
もっともらしい事を言ってみましたが、心の中で自分は何を言っているのだろうと呆れてしまいました…仕事なので、そこは我慢です。
しかし、知り合いに似ているからと言ってじろじろ見られても困ります…
彼の年齢から考えても、僕と会った事は絶対にない――というより、僕らはつい最近復活したばかりなのだから出会うなどあり得ない。
あり得ないのですが…彼に気づかれぬよう、魔法で探りを入れて僕は気づいてしまった。
…でも、気づかぬふりでいきます。
前も言ったとおり、準備ができてないんです…色々と。
大体、彼は僕に気づかれぬよう…教会周辺に部下達を配置して、合図を待つように命じてるみたいです。
ならば、おあいこでしょう…というか、何なんだこの茶番はっ!
お互いに無言のまま、数分が経ちました。
とりあえず、来てしまったのならば仕方ないので…彼らにひと仕事してもらって帰ってもらいましょうかね。
「そういえば、僕の質問に答えを頂いておりませんが…神官騎士様方は、何故こちらへ?」
さっきから、視界の端にチラチラと貴方の部下達がこちらの様子を窺っているのが見えてるんだという思いを込めて訊ねてみました。
まぁ、わかりますよ…数分間も無言で立っているんですからね、僕達は。
「あ、あぁ…そうだったな。突如、この辺り一帯で闇の気配が濃くなってな…何が起こったのか調査の為、我々が派遣されたのだ」
…何か、申し訳なくなりました。
目覚めさせるつもりも予定もなかったのに、ゾンビ祭りを開催させてしまいましたからね…
本来の力が戻っておらず魔力が不安定なのが原因でして、そこは反省しております。
「そうだったのですね」と笑顔で答えておきましたが、内心穏やかではありません…
調査が半日で終わるとは、とても思えないのだから。
もうついでに、教会内の死霊もどうにかしてくれればいいのに…と、自棄を起こしたくなりました。
***
「…調査、という事ですけど貴方だけがここに滞在するつもりなんですか?」
思わず訊いてしまいましたが、神官騎士は気分を害した様子もなく首をかしげています。
…彼は部下達を全員帰して、何故か自分だけ残って元壁であった瓦礫に腰かけているんですよ。
部下達が寂しそうにしてたじゃないですか…つーか、お前も帰れよ!
何故、ここに残るんだ!
ひとりで何を調べる?
ちなみに、今は昼時…彼は、部下達が置いていってくれた昼食を準備しています。
僕の分もあるそうで、仲良く昼食を頂いております…サンドイッチ美味い。
「…まぁ、一応調査をしなければならないからな。それに、困っている友を見捨てられんからな…」
こちらの様子を窺いながら、そう言った彼はゆっくりとお茶を飲んでいる…んですが。
おい、ちょっと待て…
何か、とんでもない言葉を言わなかったか?
誰が貴方の友だって…?
助けてください、"我が君"…こいつ、生まれ変わっても何も変わってないです!
前世が変わり者だと、今世もなんですか?
あの時――
僕は敵だというのに「あいつは俺の友だ…だから、全力で戦って目を覚まさせる!」と勇者の盟友である騎士の彼が言っていた。
はっきり言って、友情など育んだ覚えはないです…
奴が勝手に、友人だと思っていたのだから。
しかも、最終決戦にて勇者が僕を倒した際――遠のく意識の中、確かに聞きました…
「お前は素晴らしいライバルで親友だった」という言葉を。
男泣きもしてましたねぇ…勇者も彼に「すまない…」と申し訳なさそうに言うし。
友人から親友という名のライバルに格上げしてました…
死んでも死にきれないという言葉を、あの時ほど思い知らされるとは思わなかった。
復活した現在、もう会わなくて済むと思っていたのに…何故なんでしょうか?
呪いですか、神からの。
しかも、こいつはここに居座る気でいるんですが…嫌がらせの類かなんですか?
厄日なのか…本当に。
「あ、そうだ…まだ名乗ってなかったな。"今の"俺の名前は、アルヴィド・エト・ラウドゥという…リル、よろしくな」
僕は聞かなかった事にしたい…というか、こいつ「今の」をつけましたね。
しかも、僕の愛称まで考えてるし…
「前」を覚えてるんですか、こいつは…永遠に忘れていてほしかったです。
神、仕事してください…切実なお願いです。
あー…まだ躾してないワーウルフもいるのに、何故こうも厄介な事が起こるんですかね。
というか、エンクヴィスト…いえ、今はアルヴィドですね――また、あの茶番劇を最期の時に見せるつもりなら止めてくださいね…と密かに願うしか、僕にはできなかった。
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