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一年目
34:まあそういう事もある。
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今日は珍しく友人Aと友人Bも一緒にアザレアと一緒に温室で昼食を食べていた。『愛の日』などが近いこともあるが、もしかすると冬季休暇前にあった、ものが隠されたり、移動されたりしていたのを危惧してくれたのかもしれない。
「別にいいのに」
と、不思議と心が温かくなりながらもそう伝えると、
「お馬鹿。あなた、すごく元気がなかったじゃないの」
「そうだよ。……『拗れるだろうから』というよりは何も言わないから、こっちは何もしてないけど」
と、友人Aと友人Bに怒られた。
「それにしても、」
友人Aは少し困った風にアザレアを見、
「凄いもん食ってんね」
苦笑いしながら友人Bが言葉を続ける。
「そう?」
無論、薬草弁当のことだ。友人Aは生野菜がたっぷりと詰まったパンを、友人Bは肉類がたっぷり詰まったパンをそれぞれ持ち寄り、二人でアザレアを挟んで座っている。
「んー。わたしも、二人とおんなじ薬草のスタックパニスにした方がよかったかなぁ」
友人Aと友人Bのパン達に挟まれたそれを見、アザレアは呟いた。
「薬草を詰め込んだだけを『凄いもん』だって言った訳じゃないよ」
「具材のこと言っても今更しょうがないわよ」
×
「ん、」
「……来たわね」
「えっなにが?」
薬草弁当を食べ終えたアザレアが食後の薬草水を飲んでいると、友人Bと友人Aは食事の手を止め、近付く人影に視線を向ける。アザレアは首を傾げ同じ方向を見ると、緊張した面持ちの転入生その2がいた。
「……え、と……」
目を泳がせ、その2は言葉を探している様子だった。
「なにか用事?」
と、アザレアが訊くと、
「ごめんなさいっ! 貴女のノート、私が捨てましたっ!」
勢いよく頭を下げ、その2は謝罪をする。
「おぅ、元気な告白だね。勢いでつい許しちゃいそうになる」
目を瞬かせ、アザレアはその2を見た。
「……本当に、ごめんなさい」
ぽろぽろと大粒の涙を溢すその2は、アザレアには心の底から反省しているように見える。
「んー、許す許さないは置いといて、なんでやったか教えてくれる?」
「……はい、」
とりあえず、なぜものを隠したのか、その理由が気になっていたアザレアだった。
×
その2は真っ赤になり、鼻を啜りながら自分が扶養者から『上位5位以内を取り、学生会に入れ』と言われていたこと、そのプレッシャーに耐えきれず、アザレアの持ち物に触ってしまったことを話した。
「いいよ。許してあげる」
アザレアはあっさりと、そう言ってのける。
「ほ、ほんとですかぁ?!」
その2は丸い目を更に丸く見開き、ひどく驚いた様子だ。
「いいのかよ」
「……結構追い詰められてたじゃない、あなた」
友人Bと友人Aは納得していない様子だったが、『本人がそう言うんなら』と、矛を収めた(抜いてはいなかったが)。
「いいって。つまり、きみをそこまで追い詰めた扶養者のおっさんが悪いんでしょ?」
「……」
アザレアの言葉に、その2は困ったように押し黙る。
「その様子で、きみが本当は優しい子だってのもなんとなくわかるし、金品は狙わず物も壊さずだったから許す」
その2を見てアザレアはにっと笑った。
「だけどそいつ、絶対に毛枯剤でつるっ禿げにしてやんよ」
「え、」
いい笑顔からの過激な言葉に、その2は固まる。
「だいじょーぶだいじょーぶ。そこらじゅうにある雑草で作れるやつだし、検出されても『そんな効果はない』ってなるやつだから」
「えげつないことするわね」
「流石は『薬術の魔女』」
×
「ところで、共通中間テストのあととか教室移動中にわたしを見てたのきみ?」
「どうやって勉強してたのかなって思って、見てましたけど……ごめんなさい、嫌だったんですね」
「あ。……悪意がなかったんならいいよ、うん」
「別にいいのに」
と、不思議と心が温かくなりながらもそう伝えると、
「お馬鹿。あなた、すごく元気がなかったじゃないの」
「そうだよ。……『拗れるだろうから』というよりは何も言わないから、こっちは何もしてないけど」
と、友人Aと友人Bに怒られた。
「それにしても、」
友人Aは少し困った風にアザレアを見、
「凄いもん食ってんね」
苦笑いしながら友人Bが言葉を続ける。
「そう?」
無論、薬草弁当のことだ。友人Aは生野菜がたっぷりと詰まったパンを、友人Bは肉類がたっぷり詰まったパンをそれぞれ持ち寄り、二人でアザレアを挟んで座っている。
「んー。わたしも、二人とおんなじ薬草のスタックパニスにした方がよかったかなぁ」
友人Aと友人Bのパン達に挟まれたそれを見、アザレアは呟いた。
「薬草を詰め込んだだけを『凄いもん』だって言った訳じゃないよ」
「具材のこと言っても今更しょうがないわよ」
×
「ん、」
「……来たわね」
「えっなにが?」
薬草弁当を食べ終えたアザレアが食後の薬草水を飲んでいると、友人Bと友人Aは食事の手を止め、近付く人影に視線を向ける。アザレアは首を傾げ同じ方向を見ると、緊張した面持ちの転入生その2がいた。
「……え、と……」
目を泳がせ、その2は言葉を探している様子だった。
「なにか用事?」
と、アザレアが訊くと、
「ごめんなさいっ! 貴女のノート、私が捨てましたっ!」
勢いよく頭を下げ、その2は謝罪をする。
「おぅ、元気な告白だね。勢いでつい許しちゃいそうになる」
目を瞬かせ、アザレアはその2を見た。
「……本当に、ごめんなさい」
ぽろぽろと大粒の涙を溢すその2は、アザレアには心の底から反省しているように見える。
「んー、許す許さないは置いといて、なんでやったか教えてくれる?」
「……はい、」
とりあえず、なぜものを隠したのか、その理由が気になっていたアザレアだった。
×
その2は真っ赤になり、鼻を啜りながら自分が扶養者から『上位5位以内を取り、学生会に入れ』と言われていたこと、そのプレッシャーに耐えきれず、アザレアの持ち物に触ってしまったことを話した。
「いいよ。許してあげる」
アザレアはあっさりと、そう言ってのける。
「ほ、ほんとですかぁ?!」
その2は丸い目を更に丸く見開き、ひどく驚いた様子だ。
「いいのかよ」
「……結構追い詰められてたじゃない、あなた」
友人Bと友人Aは納得していない様子だったが、『本人がそう言うんなら』と、矛を収めた(抜いてはいなかったが)。
「いいって。つまり、きみをそこまで追い詰めた扶養者のおっさんが悪いんでしょ?」
「……」
アザレアの言葉に、その2は困ったように押し黙る。
「その様子で、きみが本当は優しい子だってのもなんとなくわかるし、金品は狙わず物も壊さずだったから許す」
その2を見てアザレアはにっと笑った。
「だけどそいつ、絶対に毛枯剤でつるっ禿げにしてやんよ」
「え、」
いい笑顔からの過激な言葉に、その2は固まる。
「だいじょーぶだいじょーぶ。そこらじゅうにある雑草で作れるやつだし、検出されても『そんな効果はない』ってなるやつだから」
「えげつないことするわね」
「流石は『薬術の魔女』」
×
「ところで、共通中間テストのあととか教室移動中にわたしを見てたのきみ?」
「どうやって勉強してたのかなって思って、見てましたけど……ごめんなさい、嫌だったんですね」
「あ。……悪意がなかったんならいいよ、うん」
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