92 / 200
二年目
92:修学旅行六日目〜八日目。
しおりを挟む
駅を降りたばかりの祈羊は、荘厳な神殿とその集落、の様な印象を受けた。だが、祈羊の周辺に住んでいるらしいその2曰く、
「ここは『修行用の場所』であって、中心地は普通の街と同じような雰囲気なんです」
だそうだ。
日程によると、この修行用の施設で一日、簡易的な修行を行なう。そして修行が終わった後、中心地にある施設の見学となる。
「多分、『神聖な場所に入る前に身を清めて下さい』ってことだと思います」
日程について、その2がそう教えてくれた。
『修行用の場所』は灰色の岩肌が剥き出しの場所で、その周囲には青白い透き通った石が使われた建物が複数建ち並んでいる。
「(……灰色の岩肌に、青白い神殿の素材がよく映えるなぁ)」
そうは思うものの、景色のほとんどが白っぽい灰色の岩肌ばかりで、植物がほとんど見られない。なので、アザレアは不満気に口を尖らせる。
「……不自然すぎるほどに、自然がないなぁ」
「でも、少しこの辺りから離れた所には草花はあるんですよぉ。お祈りの儀式や祈祷などで色々使うみたいで」
不満そうなアザレアを見て、その2が苦笑した様子で答えた。
「そうなの?」
「はい。……一応、私はこの辺り出身という設定になっているらしいので、というか、数年は住んでいるので少しくらいは知ってますよ」
「ふーん?」
いまいち意味はわからなかったが、要はその2が魔術アカデミーに転入する前にいた場所なのだろうと判断した。
×
一日目の修行が終わると、すぐさま中心地への移動が始まる。
移動には簡易的な馬車を利用する。車を引くのは聖獣とされる人間に益をもたらす魔法生物で、専用の道を早い速度で駆けるのだ。
祈羊の中心地は白い石材の建物で構成されていた。
「…………」
日の光を浴びて青白く輝く街に、アザレアは目を細める。
足元は白っぽい灰色の石畳で、見られる植物は人工的に植えられたであろうものばかりだ。砂埃や劣化で外壁がくすんでいることもなく、全てが新品同様に透き通ったように真っ白だった。
×
そして施設見学の折に、数名の聖職者とすれ違ったのだが、
「……なんか、すっごいつるぴかりんな人いなかった?」
少し引いた様子でアザレアは言う。おまけに、何故だかすごい顔でこちらを見ていた。怒りのような、恐怖のような表情で。
「…………あー……。そう、ですねー」
何故か、その2が気まずそうに同意する。
「どうしたの?」
とアザレアがその様子に首を傾げると、友人Aが苦笑混じりに答えた。
「その人、あなたが作った薬で禿げ……涼やかな頭髪になった人よ」
「んえ、そうなの?」
つまり……なんだっけ、とアザレアの(すっかり存在をわすれている)様子にその2も小さく笑った。
「ふふ、私の元保護者の方ですよぉ」
「え、なんかごめん?」
どうして薬を処方したのか思い出せない魔女は、とりあえずその2に謝る。
「別に気になんかしてないですよ。お陰で、私もちゃんとした場所に引き取ってもらえたんですから」
幸せそうなその2に、まあいいか、と思ったアザレアだった。
×
それは修行がひと段落した、月の明るい夜だった。
「(なんだか眠れない……)」
もそり、とアザレアは起き上がる。月明かりを見たら眠れるような気がしたからだ。
部屋分けのグループは友人Aと魔女と聖女候補のその2で、男子であるその3は別の班の男子と相部屋になった。隣のベッドを見ると、友人Aが静かに眠っている。それを起こさないよう気を配り、そっと抜け出した。
窓辺には人影がある。そろりと近付くとその2だった。ぼんやりとした様子で外を眺めている。
「あれ、眠れませんでしたか」
アザレアの姿を認め、その2は小さく首を傾げた。
「ちょっとだけ」
小さな声で返事をする。
「……少し、お話ししませんか」
そう言い、その2はアザレアの方を向いた。
「いいよ」
頷き、アザレアは窓を挟むようにしてその2の向かい側に就く。
「祈羊での修行、辛くないですか」
「ちょっぴり、ね」
だが、これでも簡易的にしているのだと説明を受けているので、本当の修行はもっと大変なはずだ。
「私は、慣れているので」
あんまり辛くないんですよね、とその2は返した。修行の内容によっては、こうして人と話す時間もないのだとか。
「ねぇ、『聖女』ってどんな存在?」
ふとアザレアは問うた。その2は『聖女候補』で、聖女になるために沢山の努力を重ねている。だが、アザレアはその『聖女』について良く知らなかった。敬虔な使徒や聖職者ならばきっと、知っているだろうと思ったのだ。
だが、その2の言葉は意外なものだった。
「私も、よくわかってないです」
恥ずかしながら、と気まずそうに乾いた笑いを零す。
「でも……書物に書かれている存在としては……」
言いつつ、思い出すためか頬に手を遣り、視線を少し動かした。
「世界を浄化し、救う……みたいです。何かの脅威から国民を護る、とも」
『護る』とは言いつつも、何から護るのか叙述されていない。
「ふーん。なんか大変そう」
何か物語の主人公みたいだ、と少し思うだけだ。今は何も脅威がないはずなのできっと、しばらくの間は『聖女』の力は不要なのだろう。
「……でも、私。とある国……私が身を置いてる『十字教』の大元の国では『魔女』って、呼ばれてるみたいなんです。……最近知った事ですが」
肩を落とすその2に、今度はアザレアが首を傾げた。
「……私、本当は転移者で、『この世界に居なかった者』なんです」
ぎゅっと自身の服の裾を握り、その2は意を決した様子で告げる。
「ここにきたのも、神殿で召喚されたからで……元の世界の記憶なんてほとんど持ってないし、元の世界には帰れないみたいなので『帰りたい』って気持ちはないのですが」
その様子は冗談を言っているようには見えなかった。それに『転移者』の話は、創作ではあるものの少し聞いたことがあるのだ。言葉通り、異なる世界から転移してきた者だと。
「それでも少し、疎外感があるんです……話が逸れましたね」
申し訳なさそうに小さく笑い、その2は話を戻す。
「『転移者の聖女』だから、『この世界に居なかった異物の女』だから、『魔女』。……まあ、まだ聖女候補なんですけど」
そして、アザレアとは少し異なった意味の『魔女』なのだと言った。
「転移者の聖女候補は間違いなく聖女になれるらしいので、私が『聖女』になるのはほとんど確定事項らしいです」
不思議ですよね、とその2は再び窓の外に視線を向けた。
「確か、色々な『魔女』と区別するために『胡蝶の魔女』……って呼ばれ方だったような」
小さく呟き、再び魔女へと視線を向ける。今度は窓の方向に身体を向けたままだ。
「ふふ。実は私、精神に作用する魔術……奇跡が得意みたいなんです。他人の心を操って、私の事を好きにさせるとか、相手がしてほしい事をそれとなく察する、だとか」
なんとなく便利な力ですよね、と言い刹那、ハッとした様子でアザレアに向き合う。
「あ、もちろん皆さんにはしてないですよっ! ……っと、ちょっと声が大きかったですね」
しょんぼりと肩を落としてその2は小さく謝った。ベッドの方へ視線を向けると、先程と同様で友人Aは静かにそこに横たわっている。
「私は、そんな力を使わなくても……みんなと仲良くなりたかった」
小さな声でその2は告げた。
「ちょっと、許されない事をしてしまいましたが」
「そういえば、魔女ちゃんの『魔女』って、本当はどういった存在なんですか?」
ややあって、その2はアザレアへ問い掛ける。
「お、意趣返し?」
「そ、そんなつもりは……」
「冗談だよ。うーん。わたしもあんまりわかってないけどね」
一言断り、アザレアは自分なりの答えを言うことにした。
「きっと、あんまり良くない存在なんだよ」
そうでなければ、皆が『魔女だ』と言って離れる訳がない。
「ざっといえば、みんなが『怖い』って思う存在な訳だし」
それに、数名から監視もされている。実は、監視をされている事に全く気付いていないわけではなかった。監視員の中にも腕前や能力に得手不得手があり、アザレアが気付くこともあるのだ。
「『聖女』も『魔女』も、周囲が勝手にそう呼んでるだけで対して特別じゃないと思うな、わたしは」
そう、アザレアは言う。
「……そっか。ちょっと、寂しかったんですきっと」
ぽつりとその2は言葉を零した。
「生兎で、みんなが『昔の話』をしているのに、自分にはそれがなかったから」
強く握っていた手を、ゆっくり解いてその2は伺うようにアザレアを見つめる。
「こんな私でも、仲良くしてもらえますか?」
「……当然に決まってるじゃない」
「わ、」
突如、アザレアと違う方向から声がかけられる。顔を向けると、友人Aが立っていた。
「あ、あれ? 寝てたんじゃないんですか」
戸惑うアザレアとその2に
「別に。それはともかく、いい加減に寝なさい。眠くなくても、目を閉じて。良い事を、楽しかった事を思い出して想像するのよ」
そう、友人Aは諭すように二人の手を取る。
「そうすれば、きっと明日はもっと楽しくなるから」
×
そして。
「なんか、羊の所あんまり好きじゃないなー」
と、薬猿へ移動するための汽車の個室で、なんとなしにアザレアは呟く。
植物が少ないし、決まり事がいっぱいで自由が見当たらない。
祈羊での日々は、ほとんどが時間とスケジュールに追われて休まる暇もなかった。
「……きっと、ああいうのが好きって人もいるんだろうけど」
聖職者には向いていないな、とアザレアは結論を出した。
「……でも、またなんかわたしのこと見てたな」
理由は分からずとも、あまり良い視線ではなかったのは確かだ。
「ここは『修行用の場所』であって、中心地は普通の街と同じような雰囲気なんです」
だそうだ。
日程によると、この修行用の施設で一日、簡易的な修行を行なう。そして修行が終わった後、中心地にある施設の見学となる。
「多分、『神聖な場所に入る前に身を清めて下さい』ってことだと思います」
日程について、その2がそう教えてくれた。
『修行用の場所』は灰色の岩肌が剥き出しの場所で、その周囲には青白い透き通った石が使われた建物が複数建ち並んでいる。
「(……灰色の岩肌に、青白い神殿の素材がよく映えるなぁ)」
そうは思うものの、景色のほとんどが白っぽい灰色の岩肌ばかりで、植物がほとんど見られない。なので、アザレアは不満気に口を尖らせる。
「……不自然すぎるほどに、自然がないなぁ」
「でも、少しこの辺りから離れた所には草花はあるんですよぉ。お祈りの儀式や祈祷などで色々使うみたいで」
不満そうなアザレアを見て、その2が苦笑した様子で答えた。
「そうなの?」
「はい。……一応、私はこの辺り出身という設定になっているらしいので、というか、数年は住んでいるので少しくらいは知ってますよ」
「ふーん?」
いまいち意味はわからなかったが、要はその2が魔術アカデミーに転入する前にいた場所なのだろうと判断した。
×
一日目の修行が終わると、すぐさま中心地への移動が始まる。
移動には簡易的な馬車を利用する。車を引くのは聖獣とされる人間に益をもたらす魔法生物で、専用の道を早い速度で駆けるのだ。
祈羊の中心地は白い石材の建物で構成されていた。
「…………」
日の光を浴びて青白く輝く街に、アザレアは目を細める。
足元は白っぽい灰色の石畳で、見られる植物は人工的に植えられたであろうものばかりだ。砂埃や劣化で外壁がくすんでいることもなく、全てが新品同様に透き通ったように真っ白だった。
×
そして施設見学の折に、数名の聖職者とすれ違ったのだが、
「……なんか、すっごいつるぴかりんな人いなかった?」
少し引いた様子でアザレアは言う。おまけに、何故だかすごい顔でこちらを見ていた。怒りのような、恐怖のような表情で。
「…………あー……。そう、ですねー」
何故か、その2が気まずそうに同意する。
「どうしたの?」
とアザレアがその様子に首を傾げると、友人Aが苦笑混じりに答えた。
「その人、あなたが作った薬で禿げ……涼やかな頭髪になった人よ」
「んえ、そうなの?」
つまり……なんだっけ、とアザレアの(すっかり存在をわすれている)様子にその2も小さく笑った。
「ふふ、私の元保護者の方ですよぉ」
「え、なんかごめん?」
どうして薬を処方したのか思い出せない魔女は、とりあえずその2に謝る。
「別に気になんかしてないですよ。お陰で、私もちゃんとした場所に引き取ってもらえたんですから」
幸せそうなその2に、まあいいか、と思ったアザレアだった。
×
それは修行がひと段落した、月の明るい夜だった。
「(なんだか眠れない……)」
もそり、とアザレアは起き上がる。月明かりを見たら眠れるような気がしたからだ。
部屋分けのグループは友人Aと魔女と聖女候補のその2で、男子であるその3は別の班の男子と相部屋になった。隣のベッドを見ると、友人Aが静かに眠っている。それを起こさないよう気を配り、そっと抜け出した。
窓辺には人影がある。そろりと近付くとその2だった。ぼんやりとした様子で外を眺めている。
「あれ、眠れませんでしたか」
アザレアの姿を認め、その2は小さく首を傾げた。
「ちょっとだけ」
小さな声で返事をする。
「……少し、お話ししませんか」
そう言い、その2はアザレアの方を向いた。
「いいよ」
頷き、アザレアは窓を挟むようにしてその2の向かい側に就く。
「祈羊での修行、辛くないですか」
「ちょっぴり、ね」
だが、これでも簡易的にしているのだと説明を受けているので、本当の修行はもっと大変なはずだ。
「私は、慣れているので」
あんまり辛くないんですよね、とその2は返した。修行の内容によっては、こうして人と話す時間もないのだとか。
「ねぇ、『聖女』ってどんな存在?」
ふとアザレアは問うた。その2は『聖女候補』で、聖女になるために沢山の努力を重ねている。だが、アザレアはその『聖女』について良く知らなかった。敬虔な使徒や聖職者ならばきっと、知っているだろうと思ったのだ。
だが、その2の言葉は意外なものだった。
「私も、よくわかってないです」
恥ずかしながら、と気まずそうに乾いた笑いを零す。
「でも……書物に書かれている存在としては……」
言いつつ、思い出すためか頬に手を遣り、視線を少し動かした。
「世界を浄化し、救う……みたいです。何かの脅威から国民を護る、とも」
『護る』とは言いつつも、何から護るのか叙述されていない。
「ふーん。なんか大変そう」
何か物語の主人公みたいだ、と少し思うだけだ。今は何も脅威がないはずなのできっと、しばらくの間は『聖女』の力は不要なのだろう。
「……でも、私。とある国……私が身を置いてる『十字教』の大元の国では『魔女』って、呼ばれてるみたいなんです。……最近知った事ですが」
肩を落とすその2に、今度はアザレアが首を傾げた。
「……私、本当は転移者で、『この世界に居なかった者』なんです」
ぎゅっと自身の服の裾を握り、その2は意を決した様子で告げる。
「ここにきたのも、神殿で召喚されたからで……元の世界の記憶なんてほとんど持ってないし、元の世界には帰れないみたいなので『帰りたい』って気持ちはないのですが」
その様子は冗談を言っているようには見えなかった。それに『転移者』の話は、創作ではあるものの少し聞いたことがあるのだ。言葉通り、異なる世界から転移してきた者だと。
「それでも少し、疎外感があるんです……話が逸れましたね」
申し訳なさそうに小さく笑い、その2は話を戻す。
「『転移者の聖女』だから、『この世界に居なかった異物の女』だから、『魔女』。……まあ、まだ聖女候補なんですけど」
そして、アザレアとは少し異なった意味の『魔女』なのだと言った。
「転移者の聖女候補は間違いなく聖女になれるらしいので、私が『聖女』になるのはほとんど確定事項らしいです」
不思議ですよね、とその2は再び窓の外に視線を向けた。
「確か、色々な『魔女』と区別するために『胡蝶の魔女』……って呼ばれ方だったような」
小さく呟き、再び魔女へと視線を向ける。今度は窓の方向に身体を向けたままだ。
「ふふ。実は私、精神に作用する魔術……奇跡が得意みたいなんです。他人の心を操って、私の事を好きにさせるとか、相手がしてほしい事をそれとなく察する、だとか」
なんとなく便利な力ですよね、と言い刹那、ハッとした様子でアザレアに向き合う。
「あ、もちろん皆さんにはしてないですよっ! ……っと、ちょっと声が大きかったですね」
しょんぼりと肩を落としてその2は小さく謝った。ベッドの方へ視線を向けると、先程と同様で友人Aは静かにそこに横たわっている。
「私は、そんな力を使わなくても……みんなと仲良くなりたかった」
小さな声でその2は告げた。
「ちょっと、許されない事をしてしまいましたが」
「そういえば、魔女ちゃんの『魔女』って、本当はどういった存在なんですか?」
ややあって、その2はアザレアへ問い掛ける。
「お、意趣返し?」
「そ、そんなつもりは……」
「冗談だよ。うーん。わたしもあんまりわかってないけどね」
一言断り、アザレアは自分なりの答えを言うことにした。
「きっと、あんまり良くない存在なんだよ」
そうでなければ、皆が『魔女だ』と言って離れる訳がない。
「ざっといえば、みんなが『怖い』って思う存在な訳だし」
それに、数名から監視もされている。実は、監視をされている事に全く気付いていないわけではなかった。監視員の中にも腕前や能力に得手不得手があり、アザレアが気付くこともあるのだ。
「『聖女』も『魔女』も、周囲が勝手にそう呼んでるだけで対して特別じゃないと思うな、わたしは」
そう、アザレアは言う。
「……そっか。ちょっと、寂しかったんですきっと」
ぽつりとその2は言葉を零した。
「生兎で、みんなが『昔の話』をしているのに、自分にはそれがなかったから」
強く握っていた手を、ゆっくり解いてその2は伺うようにアザレアを見つめる。
「こんな私でも、仲良くしてもらえますか?」
「……当然に決まってるじゃない」
「わ、」
突如、アザレアと違う方向から声がかけられる。顔を向けると、友人Aが立っていた。
「あ、あれ? 寝てたんじゃないんですか」
戸惑うアザレアとその2に
「別に。それはともかく、いい加減に寝なさい。眠くなくても、目を閉じて。良い事を、楽しかった事を思い出して想像するのよ」
そう、友人Aは諭すように二人の手を取る。
「そうすれば、きっと明日はもっと楽しくなるから」
×
そして。
「なんか、羊の所あんまり好きじゃないなー」
と、薬猿へ移動するための汽車の個室で、なんとなしにアザレアは呟く。
植物が少ないし、決まり事がいっぱいで自由が見当たらない。
祈羊での日々は、ほとんどが時間とスケジュールに追われて休まる暇もなかった。
「……きっと、ああいうのが好きって人もいるんだろうけど」
聖職者には向いていないな、とアザレアは結論を出した。
「……でも、またなんかわたしのこと見てたな」
理由は分からずとも、あまり良い視線ではなかったのは確かだ。
0
あなたにおすすめの小説
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活
しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。
新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。
二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。
ところが。
◆市場に行けばついてくる
◆荷物は全部持ちたがる
◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる
◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる
……どう見ても、干渉しまくり。
「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」
「……君のことを、放っておけない」
距離はゆっくり縮まり、
優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。
そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。
“冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え――
「二度と妻を侮辱するな」
守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、
いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる