141 / 200
三年目
141:急に言われても困る。
しおりを挟む
戸を開けた直後、フォラクスからするものと同様の、だが、圧倒的に濃いにおいがした。
甘く芳しい、香のような匂い。
「魔力が抑えられぬ様でね。相性が良いお前には少しきついか」
顔をしかめそうになるアザレアに、呪猫当主は問う。
「……大丈夫、です」
口を結び、アザレアは答える。
「(このにおい、魔力の匂いだったんだ)」
そう思いながら、アザレアは部屋の中を見ようと戸に近付いた。
暗い部屋の奥からは獣のような低い唸り声と荒い呼吸が聞こえる。それが、アザレアにはとても苦しそうに聞こえ、思わず唇を噛んだ。
部屋の様子を見ながら、
「……拙いな。悪化している」
アザレアの横で、顎に手を充てた呪猫当主が小さく呟く。
部屋の中には一切の明かりや窓が無く、アザレア達のいる場所から差し込んだ光が唯一の光源だった。
そっと、アザレアは部屋の中を覗き込む。
まず目に付いたのは部屋中に広がる長い髪だ。
婚約者のものと同様の、黒紫色をしたそれは光が差し込むと蠢き、一束、のそりとアザレア達の方へ伸びた。
「わっ!?」
しかし、それは部屋の外には出られないらしく、アザレアの目の前で何かに弾かれる。
すると、部屋の中央にいるそれが低い唸り声を上げ、こちらを睨み上げた。
「……っ!」
アザレアは息を呑む。
戸の奥にいるのは婚約者のはずだが、その髪の隙間から覗いた虹彩の色が、全く別の色だったからだ。
常盤色の筈のそれが赤黒く濁っており、止め処なく黒い涙を流している。
赤黒く染まった目はまるで、魔獣のようだった。
そして、アザレアはゆっくりとその視線を彼の身体の方へ向ける。
暗くて良くは見えないが、髪の隙間から彼の身体の端々が見えた。骨格は人のものに近いが、人とは別の形状をしている。まるで人と獣を無理矢理に混ぜたかのような、獣を人間の形に歪めたかのような、そんな厭な形状だった。見ているだけで強制的に嫌悪の感情を抱くような、悍ましい姿。
暗くてよく見えないが顔も人間ではなくなっており、人間になり損ねた獣、のような印象を抱くだろう。
衣類は纏っているようだが、顔や身体、衣類のほとんどが目から溢れているものと同じ黒い液体で汚れている。
アザレアはもう一度、彼の顔を見た。そして、横に立つ呪猫当主を見上げる。
「…………ねこちゃんになる魔法にかかったの?」
唸る声や、髪から覗く尖った耳が、猫のようだと思ったからだ。普通の人間ならば嫌悪を抱くその姿を、アザレアはいとも容易く直視する。それはきっと、彼女の魂が妖精のものであり人間でないからできたことだ。
「……ふ、」
呟いた声に、当主が吹き出した。
「……そうか。お前はそう言うのか」
柔らかい声色で呪猫当主は零す。兄である自分ですらまともに見られないその姿を直視し、かつ嫌悪を抱かないなど何とも羨ましいことか。魂が人間である限り、それは適わない節理である。
「あれは魔術や魔法ではなく、何方かと言えば『呪い』だ」
彼を、精霊憑きにしてしまったゆえの弊害。
「『呪い』?」
「他所から取り入れた『穢れ』に依る魂或いは魔力の暴走、とも言えるのだが……兎に角、今は彼奴に私達の声は聞こえていない」
首を傾げるアザレアに、呪猫当主は云った。
「少しすれば鎮静剤が投与される。其の時に、彼奴と話せるだろうよ」
そして、部屋の戸を閉める。
×
「……あれを、大事にしてやってくれないかな」
奥の部屋から少し離れ、呪猫当主はアザレアを見る。
「私は昔、両親に本家に売られたんだ。だから、両親の事はまあどうでも良いとは思っているのだが」
溜息を吐き、続けた。
「……私にとって、彼奴はたった一人の肉親だ。屹度、私の事を恨んで、呪っているだろうけれど」
「だが、仕方なかった」と、零す。
「あれが私の弟として生まれてしまったのが運の尽きだ。弟が生まれた時に、私はその運命を視た」
そう言うと、少し声を落とした。
「……ずっと私と比べ続けられた末に、自身を呪い、私を呪い、呪猫を呪って滅ぼすのだと」
だから細工をしたのだと、告げる。
「呪猫の家は、4つになると使役の為に精霊と契約を交わす。契約を交わした精霊は自身の持ち歩く道具に精霊を宿すのだが」
アザレアから、呪猫当主は視線を外した。
「彼奴は、自身の身体に精霊を宿している」
「……身体?」
首を傾げるアザレアに構わず、続ける。
「宿しているのは私が家の者に捕獲させ育て殺した、飛び切りに呪力の強い猫魈だ」
開祖の血に混ざるものと同じものだと、呪猫当主は云う。
「あれに猫魈……要は開祖の血と同じものを混ぜたのは、才能が有ったからだ」
『才能』の言葉に、アザレアは薬猿での当主候補の男との会話を思い出した。
「呪いの才能と使役の獣を育てる才能が、有った。屹度、あの儘成らば本当に家を潰せるほどの怨霊を作り上げられただろうね」
と、小さく笑う。
「……それは、あなたがあの人のことを『脅威』だと思ったってことですか」
顔をしかめ、アザレアが問いかけると、
「『恐れた』? はは、勿論だ。彼奴は私には届かぬが相当な力を持つ男だからね」
呪猫当主は頷いた。
「私とて、呪猫の当主だ。弟が生まれた時点で既に実権は握っていたし、折角の権力を手放すのは惜しかった」
乾いた笑いを交えながら、呪猫当主は続ける。
「而、此の家を潰すと、軈て国が滅ぶ」
笑いを止め、呪猫当主はアザレアに言葉をかけた。
「ここの役割は知っているだろう。『国の守護』だ。……何も知らぬ者は『呪いだの言う出鱈目を使う星見台』としか思っていない様だが」
アザレアは頷く。貴族や歴史について学ぶ時に、『古き貴族』の役割について学習した記憶があった。
「占術で未来を測り、起こり得る災害を回避させてきたのが呪猫だ。其れが無ければ、国軍でも災害全てを防ぎ切れるものか」
低く呟き、呪猫当主は溜息を吐く。
「……だが、先に彼奴を潰しておけば……彼奴が呪うのは私と私達の生まれた家だけになる」
その言葉に、ほとんど感情を感じられなかった。
「だから、彼奴は国の為に私の都合によって潰された」
だがアザレアには、後悔をしているように、懺悔しているように聞こえた。
「私は彼奴に赦されない事をしたのだ。だから、私がしてやれない分まで大事にして欲しい」
×
「……薬の投与が終わった様だ」
少しして、呪猫当主はアザレアに告げる。
「今成らば、彼奴と会話が出来るだろう。何か、会話でも為ると良い」
暫く人払いをしておく、と呪猫当主は部屋の扉を開け
「唯の勘だが、お前成らば彼奴の事を如何にか出来るだろう。其れも含めて宜しく頼む」
「うわっ?!」
アザレアを部屋に押し込んだ。
振り返るも、戸は閉じられてしまった。
甘く芳しい、香のような匂い。
「魔力が抑えられぬ様でね。相性が良いお前には少しきついか」
顔をしかめそうになるアザレアに、呪猫当主は問う。
「……大丈夫、です」
口を結び、アザレアは答える。
「(このにおい、魔力の匂いだったんだ)」
そう思いながら、アザレアは部屋の中を見ようと戸に近付いた。
暗い部屋の奥からは獣のような低い唸り声と荒い呼吸が聞こえる。それが、アザレアにはとても苦しそうに聞こえ、思わず唇を噛んだ。
部屋の様子を見ながら、
「……拙いな。悪化している」
アザレアの横で、顎に手を充てた呪猫当主が小さく呟く。
部屋の中には一切の明かりや窓が無く、アザレア達のいる場所から差し込んだ光が唯一の光源だった。
そっと、アザレアは部屋の中を覗き込む。
まず目に付いたのは部屋中に広がる長い髪だ。
婚約者のものと同様の、黒紫色をしたそれは光が差し込むと蠢き、一束、のそりとアザレア達の方へ伸びた。
「わっ!?」
しかし、それは部屋の外には出られないらしく、アザレアの目の前で何かに弾かれる。
すると、部屋の中央にいるそれが低い唸り声を上げ、こちらを睨み上げた。
「……っ!」
アザレアは息を呑む。
戸の奥にいるのは婚約者のはずだが、その髪の隙間から覗いた虹彩の色が、全く別の色だったからだ。
常盤色の筈のそれが赤黒く濁っており、止め処なく黒い涙を流している。
赤黒く染まった目はまるで、魔獣のようだった。
そして、アザレアはゆっくりとその視線を彼の身体の方へ向ける。
暗くて良くは見えないが、髪の隙間から彼の身体の端々が見えた。骨格は人のものに近いが、人とは別の形状をしている。まるで人と獣を無理矢理に混ぜたかのような、獣を人間の形に歪めたかのような、そんな厭な形状だった。見ているだけで強制的に嫌悪の感情を抱くような、悍ましい姿。
暗くてよく見えないが顔も人間ではなくなっており、人間になり損ねた獣、のような印象を抱くだろう。
衣類は纏っているようだが、顔や身体、衣類のほとんどが目から溢れているものと同じ黒い液体で汚れている。
アザレアはもう一度、彼の顔を見た。そして、横に立つ呪猫当主を見上げる。
「…………ねこちゃんになる魔法にかかったの?」
唸る声や、髪から覗く尖った耳が、猫のようだと思ったからだ。普通の人間ならば嫌悪を抱くその姿を、アザレアはいとも容易く直視する。それはきっと、彼女の魂が妖精のものであり人間でないからできたことだ。
「……ふ、」
呟いた声に、当主が吹き出した。
「……そうか。お前はそう言うのか」
柔らかい声色で呪猫当主は零す。兄である自分ですらまともに見られないその姿を直視し、かつ嫌悪を抱かないなど何とも羨ましいことか。魂が人間である限り、それは適わない節理である。
「あれは魔術や魔法ではなく、何方かと言えば『呪い』だ」
彼を、精霊憑きにしてしまったゆえの弊害。
「『呪い』?」
「他所から取り入れた『穢れ』に依る魂或いは魔力の暴走、とも言えるのだが……兎に角、今は彼奴に私達の声は聞こえていない」
首を傾げるアザレアに、呪猫当主は云った。
「少しすれば鎮静剤が投与される。其の時に、彼奴と話せるだろうよ」
そして、部屋の戸を閉める。
×
「……あれを、大事にしてやってくれないかな」
奥の部屋から少し離れ、呪猫当主はアザレアを見る。
「私は昔、両親に本家に売られたんだ。だから、両親の事はまあどうでも良いとは思っているのだが」
溜息を吐き、続けた。
「……私にとって、彼奴はたった一人の肉親だ。屹度、私の事を恨んで、呪っているだろうけれど」
「だが、仕方なかった」と、零す。
「あれが私の弟として生まれてしまったのが運の尽きだ。弟が生まれた時に、私はその運命を視た」
そう言うと、少し声を落とした。
「……ずっと私と比べ続けられた末に、自身を呪い、私を呪い、呪猫を呪って滅ぼすのだと」
だから細工をしたのだと、告げる。
「呪猫の家は、4つになると使役の為に精霊と契約を交わす。契約を交わした精霊は自身の持ち歩く道具に精霊を宿すのだが」
アザレアから、呪猫当主は視線を外した。
「彼奴は、自身の身体に精霊を宿している」
「……身体?」
首を傾げるアザレアに構わず、続ける。
「宿しているのは私が家の者に捕獲させ育て殺した、飛び切りに呪力の強い猫魈だ」
開祖の血に混ざるものと同じものだと、呪猫当主は云う。
「あれに猫魈……要は開祖の血と同じものを混ぜたのは、才能が有ったからだ」
『才能』の言葉に、アザレアは薬猿での当主候補の男との会話を思い出した。
「呪いの才能と使役の獣を育てる才能が、有った。屹度、あの儘成らば本当に家を潰せるほどの怨霊を作り上げられただろうね」
と、小さく笑う。
「……それは、あなたがあの人のことを『脅威』だと思ったってことですか」
顔をしかめ、アザレアが問いかけると、
「『恐れた』? はは、勿論だ。彼奴は私には届かぬが相当な力を持つ男だからね」
呪猫当主は頷いた。
「私とて、呪猫の当主だ。弟が生まれた時点で既に実権は握っていたし、折角の権力を手放すのは惜しかった」
乾いた笑いを交えながら、呪猫当主は続ける。
「而、此の家を潰すと、軈て国が滅ぶ」
笑いを止め、呪猫当主はアザレアに言葉をかけた。
「ここの役割は知っているだろう。『国の守護』だ。……何も知らぬ者は『呪いだの言う出鱈目を使う星見台』としか思っていない様だが」
アザレアは頷く。貴族や歴史について学ぶ時に、『古き貴族』の役割について学習した記憶があった。
「占術で未来を測り、起こり得る災害を回避させてきたのが呪猫だ。其れが無ければ、国軍でも災害全てを防ぎ切れるものか」
低く呟き、呪猫当主は溜息を吐く。
「……だが、先に彼奴を潰しておけば……彼奴が呪うのは私と私達の生まれた家だけになる」
その言葉に、ほとんど感情を感じられなかった。
「だから、彼奴は国の為に私の都合によって潰された」
だがアザレアには、後悔をしているように、懺悔しているように聞こえた。
「私は彼奴に赦されない事をしたのだ。だから、私がしてやれない分まで大事にして欲しい」
×
「……薬の投与が終わった様だ」
少しして、呪猫当主はアザレアに告げる。
「今成らば、彼奴と会話が出来るだろう。何か、会話でも為ると良い」
暫く人払いをしておく、と呪猫当主は部屋の扉を開け
「唯の勘だが、お前成らば彼奴の事を如何にか出来るだろう。其れも含めて宜しく頼む」
「うわっ?!」
アザレアを部屋に押し込んだ。
振り返るも、戸は閉じられてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活
しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。
新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。
二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。
ところが。
◆市場に行けばついてくる
◆荷物は全部持ちたがる
◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる
◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる
……どう見ても、干渉しまくり。
「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」
「……君のことを、放っておけない」
距離はゆっくり縮まり、
優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。
そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。
“冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え――
「二度と妻を侮辱するな」
守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、
いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる