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第3章 淫武御前トーナメントの章
24話 敗者
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24話 敗者
「1回戦第四試合、マモンチームの勝利です!!!!!!!!!!!!」
「「「「「やらせろーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」
勝者のコールの直後起こった、押し寄せんばかりの観客からのヤラセロコールの大合唱。四面から受け止めながらにナツキは目を覚ました。
「……っ、オネエ、――――ごめん……」
繰り返されたアナル陵辱の末昏倒したナツキは、目覚めるなり身体を拭ってくれているオネエに懺悔を繰り返していた。
「大丈夫よ、ナツキちゃん。……ほんと強くなったわね」
「――――え……」
「小金井から聞いたわ。ロボを倒したって。あたしでも勝てるか怪しいのにね」
「……オネエ。――――オネエ、ほんとうに……、ごめんなさいっ。……オネエ、オネエだけでも、逃げられないの? ――1人なら逃げられるんじゃないの?」
カチンッ! ――カチカチカチッ……。
オネエが石の礫をコートの外に投げ捨てた。
しかし、透明な壁にぶつかったように小石が弾かれてしまう。
「コートに上がるときに選手の身体に呪術の類が掛かる仕組みみたい。石だけじゃなくて、引っ掻いたり、蹴っ飛ばしたりしたんだけど透明な壁があるみたいにびくともしなかったわ。――幸か不幸かマモンに監禁されたエリナさん以外罰ゲームね」
――くそっ……。オネエを無視して小金井と戦った結果がこれか。
私はどれだけ迷惑を掛ければ気が済むんだ。オネエが戦っている理由を知ったのに、何でも良いから手伝いたいと思ったのに何てざまだっ……。
一回戦敗退? 笑えないよ。
その上オネエまで巻き込んで慰みもの? くそっ……。
しかしどんな罰ゲームにしろ、いつまで待たせるつもりだ。
一回戦が終わってから優に30分は過ぎている。しかし、ナツキがマロッグに敗北してから一切の進展が無かった。
勝者から課せられる筈の逃れられない罰ゲーム。どういった訳かマモンチームがその内容を決め兼ねていたのだ。
大会にわざわざ招待しておいて、これだけ用意周到な策を巡らせていたにもかかわらずにだ。
だいたいマモンの狙いはオネエを妻として迎え入れること。罰ゲームなんて端から決まっているようなものだ。
それなのになぜ時間が掛かっている。何を企んでいる。
――何か、……トラブルでも起きたのか?
『お待ちかねの観客のみなさーーーーーーーーん!!!!!! 敗者ナツキへの罰ゲームが決まりましたーーーーーーーーーっ! 抽選順にナツキをレーーーーーーーーーーーーーーイプ!!!!!!!!!』
トラブルに期待したところを狙ったようにアナウンスが流れた。
野獣のような雄叫びあげて沸き上がる館内。
『服部翔子には監禁室での拷問がまってまーーーーーーーーーーす!!!』
やはりオネエは個別に襲われるのか。
マモンの狙いを伝えるべきか。
しかし、言ったところでどうにもならない。
「ずいぶんとVIP待遇ねぇ。思わなぁい? ナツキちゃん」
言おう……。現実が見えていない。
「オネエ、違うんだよ。この大会は仕組まれてて、エリナを拉致したマモンって男がオネエを娶るっ――――――――!?」
突如コートが影に覆い隠され、トーンを反転させた。
バッ、とナツキは視線を天へと向ける。
え……?
ナイターライトを遮った巨大なシルエットが、グルングルングルンッ、と体操選手のムーンサルトのように優雅に舞っていたのだ。その一っ飛びに跳躍した逞しい身体が、タイルの上の、――ぴたっ、と重力を無視して着地する。
その鎧のような筋肉を纏った逞しい肉体を見て、ナツキは声を失った。
顔を見て、時が凍ったように固まった。
「う、そ……でしょ…………?」
男性ホルモンマックスフォームのオネエの姿がそこにはあった。
しかし隣には、小綺麗でスラッとした女医バージョンのオネエがいる。
そう、オネエが2人いるのだ。
「オネエって、ふ、2人だったの!?」
答えを導き出すなり叫んだ。
「HAHAHA! 違うぞナツキ少年。そうだろう翔子くん」
洋画の吹き替え担当の声優のようにすごく聞き取りやすいバリトンボイスだった。
どういうこと……? 罰ゲームは?
何が起きているのか分からない。
ただオネエがアメコミ臭のする男を睨んでいるところをみると、あまり芳しい状況ではないのだろう。
「オネエ、……どういう……こと? というか、どうなってるの?」
「まさかあなたまで生きていたなんてね。すっからかんの性的不能にしてから焼却したはずだけど? 四聖淫魔の1人・マーラ。どうやって蘇ったのかしら?」
「企業秘密だよ」
企業秘密? とは言っているが、唯一身に付けている真っ青の全身スパッツに肉棒の形をおもいっきり浮かばせているマーラと呼ばれた男は、誰がどう見ても企業には属していない。
「ナツキちゃん。この男はねぇ。アタシが変化の術で男に化けるときに使っているベースの淫魔なのよねぇ。間違いなく殺した筈なんだけど」
「HAHAHAHAHA!」
この演技掛かった大笑いをするマーラの襲来によって、葬儀会場のようにしんみりとした空気は吹き飛んでしまった。
「では翔子くん。ワタシの部屋で拷問を始めようか」
だからこそ、この発言に驚いた。
全くもって繋がらない。
マーラは対戦相手ではないのだ。
「どういうことかしら? アタシはこれから一回戦の相手から拷問される予定なんだけど? 説明願いたいわねぇ」
「企業秘密だよ」
「企業秘密企業秘密って……。――企業も何もニートでしょ? マモンはどうなってるの? なんで関係ない男が拷問を執行するの」
割って入るナツキのひと言に、空気が凍った。
そんな中ブツブツとマーラが小声で呟きだした。
ニートと言われたのが勘に障ったのかと思ったら、誰かと喋っているようだ。ブツブツブツブツと。
それが終わったところで、マーラは信じられない事を口にしたのだ。
「――教えてあげよう。ちびっこマモンくんはキミの友達に重傷を負わされて、医務室で魘されているよ。つまり戦闘不能だ」
ちびっ子マモンくんが重傷? はい? マモンが戦闘不能? エリナがマモンを倒した? ってこと……?
「…………え? 友達ってエリナ? 逆じゃないの? どういう、…………こと」
*****
今から数刻前、エリナは確かにマモンに堕ちていた。ナツキにも陵辱の様子がテレパスで流されていたのだから間違えようのない事実であった。
しかし、あの戦いには続きがあったのだ。
仮眠を取ると言った後。マモンがナツキとマロッグの戦いから存在感を消した後の話である。
「ここまで見事に完堕ちすると、ほんとに攻撃出来なくなるんだねー」
クナイを向けるも、攻撃の意思を挫こうとする見えざる力を前にエリナは呟いた。
「ボクもナツキさんとの契約があるからエリナさんに攻撃出来ないけど」
堕ちたエリナも、エリナに危害を加えない契約したマモンも、お互いにお互いを干渉できない状況に置かれていた。
「ふーん……てことは、完堕ちする前に戻れば、あたしは一方的に攻撃出来るよね?」
「戻る?」
エリナの足元からもくもくと上がる、まるで雲を思わせる湯気のような煙。その煙がエリナを包み、そして隠していく。
雲の中に隠れた気配が、――そして雲に浮かばせた影の形が変わっていく。
見てくれだけを変える単純な変化では無い。同じ存在が別な形へと変わるというよりは、存在そのものが変わっていく、そんな変化だった。
煙の中の影は小さくなっていく。しかし力が弱まっているわけではない。むしろ力が凝縮されたようにコンパクトになっていくようだった。それでいてただでさえ幼い少女がさらに無邪気に――、そうマモンが思う中、煙が晴れていった。
「ふうーっ、はーっ……服がゆるゆるーっ。というかスカスカ??」
緩いパーマの掛かったブロンズヘアーをツインテールにした少女。大きな乳房とチャームポイントの大きな目、そしてぷくっと膨らんだ頬は面影そのままなのだが、説明の付かない事態が起きている。
「な、なに……お、おまえ……」
マモンは手に持っていた、音波を鳴らすコントローラーを落としてしまった。
「どう、いう……。こと?」
「あー、これ? あたしもびっくりなんだけどー元に戻っちゃったみたいだし」
「元……ってなに……。その力の事を聞いてるんだけど」
見た目はまるで時を遡ったように幼い。
小学生にも見間違えてしまうほどのあどけなさ。
だというのに、忍びとしての力がマモンが恐怖を感じるほどに圧倒的だった。
ずば抜けていると思っていたナツキの身体能力や、忍びの素質。
目の前のロリ巨乳は、そのナツキすら遥かに凌駕している。
コントローラー落としたままの指先が、爪が食い込むくらいに握り締めていないと止めらないくらいに未だ震え続けている。
「どういう、こと……? それ、なに?」
マモンはエリナの足元に転がる空箱を見つけて指を差した。
「その煙が、……力の正体!? それならボクも――」
「来ないほうがいいよー。逆さま玉手箱って知ってる? 若返るだけのアイテムだから。もしかしたらもっとちっちゃくなっちゃうかも?」
「っ……」
「完堕ちする前に戻れればそれで良かったんだけど、戻り過ぎちゃったね」
「……どういう、……ことかな?」
*****
――これはエリナが榎本とコンビを組むと決めてから正式に組む少し前の話。エリナと、エリナの父・前古賀忍軍頭領との間で行われたやり取りの話である。
「己の力を封じたい、か……。相方の、……榎本くんが力を使えないからか?」
「忍術使う素質があるから、榎本に勝てると思われるの嫌だからねー」
「思うわけ無いだろうが……。榎本くんはそのことはとうの昔に分かった上で忍びとして高みを目指し続けている。……エリナ、考え直してくれんか? わざわざエリナまで忍びの素質を捨てることはないだろう?」
「無理。忍術使う素養を封じてくれないならくノ一やめるー」
「はぁ……。これだけの才覚を持って生まれたと言うのに……これでは元も子もない。――言っておくが、後からやっぱり欲しいと言っても、もう取り返せないぞ。……はぁ、……もうくたくただ……。おてんば娘がっ」
「わかったって。早くしてくれないとくノ一やめるよー」
ふわーーーーーーーーーーーーーん……。
淡く白い光が散り散りになって空気中に露と消えいった時には、エリナの忍びとしての力も露と消えたのであった。
「まさかあの後お父さんが殺されて、永遠に力がなくなるとは思っていなかったけどねー。あーでも、あの言い方だと、どっちにしても永遠に力が使えなかったのかな?」
「エリナ! ふざけているの? 嘘を吐いてない? 力を捨てた? 何のために?」
「話を聞いてなかったのー? 邪魔になったからねー」
「邪魔? その力がっ……?」
「それから暫くして榎本が力使えるようになった時は力捨てなきゃ良かったー、なんて思ったりもしたけどね。まぁーでもこれで元通り」
「く、くそっ……」
「じゃ、あんただけ攻撃出来ない絶体絶命のところ悪いんだけど、全力でいかせてもらいまーーーーす、アハハハハハハハハッ!!!!!!」
こうしてマモンは医務室のベッドの上で魘される事となったのである。
ざっくり話を聞いたナツキは、途中でマモンの声が消えた理由を知った。
しかし恐るべきはエリナだ。忍術らしい術の行使を見たことは無かったが、まさか使えないまま今まで戦っていたとは思ってもみない。
そのエリナの体術に苦戦していたとなると、自嘲気味な笑いが漏れてしまう。
「分かったかな? マモンチームは壊滅したんだよ。これで晴れて君たちも一回戦進出だ。おめでとう!!」
激励し慣れた力強い声を張って、オネエの肩に手を掛けるマーラ。
「一回戦進出なら何で罰ゲームを受けないとならないの?」
「君たちは一回戦は突破出来るけど、それは後日判明するマモンチームの壊滅によっての繰り上げによるものだからね。今日はマモンチームが決めた罰ゲームを受けないとならない」
「なにっ……?」
ナツキはマモンチームが控えていた対面のコートサイドを見やると、妖しげな女の鞭でマロッグが首を絞められていた。
遊び半分のナツキとは違う、蝶のメガネを掛けた本格仕様の女王様だ。
今になって気付いたが、脳筋男のマーラからは血を吸ったばかりの臭いがする。
そう、マモンチームはジャックされていたのだ。――だから企業秘密と一点張りで、質問に答えようとしなかったのか。
招待したマモンよりももっと大きな力が働いている。
「一回戦突破出来るとは言っても、ナツキくんが観客に犯されて耐えられて、翔子くんがワタシのテクで壊れなかったらの話だ。2人とも耐えられるかな!?」
三日月形の目をしてニヤリとされて、ナツキは向かっ腹が立ち、筋肉スパッツ男の首に指先を伸ばす。
が、それを天女の羽衣で去なすような指先に指先を搦め捕られてしまう。
「オネエっ……」
止めてきたのはオネエだった。
そして、指先絡めながらに熱っぽく囁かれた。
「耐えても耐えなくても2回戦進出よ? 好き放題されても対戦したときにやり返せるしねぇ~。なによりエリナちゃんと戦ってみたいなんて思っちゃったわ」
ぐっ……。
「男性ホルモンマックスの自分にめちゃくちゃにされたら良いんじゃない? 私は素人相手にすれば良いだけだからねー。っ、ぐうう……」
強がり言っているのもやきもち妬いているのも見透かされたようにオネエから頭を撫でられた。
このときナツキは、噛み付いてやろうかとも思えるほどに、置かれた状況を忘れていたのだ。
未だかつて無い数の男達によるレイプショーへの時間が刻一刻と迫っていることを。
「1回戦第四試合、マモンチームの勝利です!!!!!!!!!!!!」
「「「「「やらせろーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」
勝者のコールの直後起こった、押し寄せんばかりの観客からのヤラセロコールの大合唱。四面から受け止めながらにナツキは目を覚ました。
「……っ、オネエ、――――ごめん……」
繰り返されたアナル陵辱の末昏倒したナツキは、目覚めるなり身体を拭ってくれているオネエに懺悔を繰り返していた。
「大丈夫よ、ナツキちゃん。……ほんと強くなったわね」
「――――え……」
「小金井から聞いたわ。ロボを倒したって。あたしでも勝てるか怪しいのにね」
「……オネエ。――――オネエ、ほんとうに……、ごめんなさいっ。……オネエ、オネエだけでも、逃げられないの? ――1人なら逃げられるんじゃないの?」
カチンッ! ――カチカチカチッ……。
オネエが石の礫をコートの外に投げ捨てた。
しかし、透明な壁にぶつかったように小石が弾かれてしまう。
「コートに上がるときに選手の身体に呪術の類が掛かる仕組みみたい。石だけじゃなくて、引っ掻いたり、蹴っ飛ばしたりしたんだけど透明な壁があるみたいにびくともしなかったわ。――幸か不幸かマモンに監禁されたエリナさん以外罰ゲームね」
――くそっ……。オネエを無視して小金井と戦った結果がこれか。
私はどれだけ迷惑を掛ければ気が済むんだ。オネエが戦っている理由を知ったのに、何でも良いから手伝いたいと思ったのに何てざまだっ……。
一回戦敗退? 笑えないよ。
その上オネエまで巻き込んで慰みもの? くそっ……。
しかしどんな罰ゲームにしろ、いつまで待たせるつもりだ。
一回戦が終わってから優に30分は過ぎている。しかし、ナツキがマロッグに敗北してから一切の進展が無かった。
勝者から課せられる筈の逃れられない罰ゲーム。どういった訳かマモンチームがその内容を決め兼ねていたのだ。
大会にわざわざ招待しておいて、これだけ用意周到な策を巡らせていたにもかかわらずにだ。
だいたいマモンの狙いはオネエを妻として迎え入れること。罰ゲームなんて端から決まっているようなものだ。
それなのになぜ時間が掛かっている。何を企んでいる。
――何か、……トラブルでも起きたのか?
『お待ちかねの観客のみなさーーーーーーーーん!!!!!! 敗者ナツキへの罰ゲームが決まりましたーーーーーーーーーっ! 抽選順にナツキをレーーーーーーーーーーーーーーイプ!!!!!!!!!』
トラブルに期待したところを狙ったようにアナウンスが流れた。
野獣のような雄叫びあげて沸き上がる館内。
『服部翔子には監禁室での拷問がまってまーーーーーーーーーーす!!!』
やはりオネエは個別に襲われるのか。
マモンの狙いを伝えるべきか。
しかし、言ったところでどうにもならない。
「ずいぶんとVIP待遇ねぇ。思わなぁい? ナツキちゃん」
言おう……。現実が見えていない。
「オネエ、違うんだよ。この大会は仕組まれてて、エリナを拉致したマモンって男がオネエを娶るっ――――――――!?」
突如コートが影に覆い隠され、トーンを反転させた。
バッ、とナツキは視線を天へと向ける。
え……?
ナイターライトを遮った巨大なシルエットが、グルングルングルンッ、と体操選手のムーンサルトのように優雅に舞っていたのだ。その一っ飛びに跳躍した逞しい身体が、タイルの上の、――ぴたっ、と重力を無視して着地する。
その鎧のような筋肉を纏った逞しい肉体を見て、ナツキは声を失った。
顔を見て、時が凍ったように固まった。
「う、そ……でしょ…………?」
男性ホルモンマックスフォームのオネエの姿がそこにはあった。
しかし隣には、小綺麗でスラッとした女医バージョンのオネエがいる。
そう、オネエが2人いるのだ。
「オネエって、ふ、2人だったの!?」
答えを導き出すなり叫んだ。
「HAHAHA! 違うぞナツキ少年。そうだろう翔子くん」
洋画の吹き替え担当の声優のようにすごく聞き取りやすいバリトンボイスだった。
どういうこと……? 罰ゲームは?
何が起きているのか分からない。
ただオネエがアメコミ臭のする男を睨んでいるところをみると、あまり芳しい状況ではないのだろう。
「オネエ、……どういう……こと? というか、どうなってるの?」
「まさかあなたまで生きていたなんてね。すっからかんの性的不能にしてから焼却したはずだけど? 四聖淫魔の1人・マーラ。どうやって蘇ったのかしら?」
「企業秘密だよ」
企業秘密? とは言っているが、唯一身に付けている真っ青の全身スパッツに肉棒の形をおもいっきり浮かばせているマーラと呼ばれた男は、誰がどう見ても企業には属していない。
「ナツキちゃん。この男はねぇ。アタシが変化の術で男に化けるときに使っているベースの淫魔なのよねぇ。間違いなく殺した筈なんだけど」
「HAHAHAHAHA!」
この演技掛かった大笑いをするマーラの襲来によって、葬儀会場のようにしんみりとした空気は吹き飛んでしまった。
「では翔子くん。ワタシの部屋で拷問を始めようか」
だからこそ、この発言に驚いた。
全くもって繋がらない。
マーラは対戦相手ではないのだ。
「どういうことかしら? アタシはこれから一回戦の相手から拷問される予定なんだけど? 説明願いたいわねぇ」
「企業秘密だよ」
「企業秘密企業秘密って……。――企業も何もニートでしょ? マモンはどうなってるの? なんで関係ない男が拷問を執行するの」
割って入るナツキのひと言に、空気が凍った。
そんな中ブツブツとマーラが小声で呟きだした。
ニートと言われたのが勘に障ったのかと思ったら、誰かと喋っているようだ。ブツブツブツブツと。
それが終わったところで、マーラは信じられない事を口にしたのだ。
「――教えてあげよう。ちびっこマモンくんはキミの友達に重傷を負わされて、医務室で魘されているよ。つまり戦闘不能だ」
ちびっ子マモンくんが重傷? はい? マモンが戦闘不能? エリナがマモンを倒した? ってこと……?
「…………え? 友達ってエリナ? 逆じゃないの? どういう、…………こと」
*****
今から数刻前、エリナは確かにマモンに堕ちていた。ナツキにも陵辱の様子がテレパスで流されていたのだから間違えようのない事実であった。
しかし、あの戦いには続きがあったのだ。
仮眠を取ると言った後。マモンがナツキとマロッグの戦いから存在感を消した後の話である。
「ここまで見事に完堕ちすると、ほんとに攻撃出来なくなるんだねー」
クナイを向けるも、攻撃の意思を挫こうとする見えざる力を前にエリナは呟いた。
「ボクもナツキさんとの契約があるからエリナさんに攻撃出来ないけど」
堕ちたエリナも、エリナに危害を加えない契約したマモンも、お互いにお互いを干渉できない状況に置かれていた。
「ふーん……てことは、完堕ちする前に戻れば、あたしは一方的に攻撃出来るよね?」
「戻る?」
エリナの足元からもくもくと上がる、まるで雲を思わせる湯気のような煙。その煙がエリナを包み、そして隠していく。
雲の中に隠れた気配が、――そして雲に浮かばせた影の形が変わっていく。
見てくれだけを変える単純な変化では無い。同じ存在が別な形へと変わるというよりは、存在そのものが変わっていく、そんな変化だった。
煙の中の影は小さくなっていく。しかし力が弱まっているわけではない。むしろ力が凝縮されたようにコンパクトになっていくようだった。それでいてただでさえ幼い少女がさらに無邪気に――、そうマモンが思う中、煙が晴れていった。
「ふうーっ、はーっ……服がゆるゆるーっ。というかスカスカ??」
緩いパーマの掛かったブロンズヘアーをツインテールにした少女。大きな乳房とチャームポイントの大きな目、そしてぷくっと膨らんだ頬は面影そのままなのだが、説明の付かない事態が起きている。
「な、なに……お、おまえ……」
マモンは手に持っていた、音波を鳴らすコントローラーを落としてしまった。
「どう、いう……。こと?」
「あー、これ? あたしもびっくりなんだけどー元に戻っちゃったみたいだし」
「元……ってなに……。その力の事を聞いてるんだけど」
見た目はまるで時を遡ったように幼い。
小学生にも見間違えてしまうほどのあどけなさ。
だというのに、忍びとしての力がマモンが恐怖を感じるほどに圧倒的だった。
ずば抜けていると思っていたナツキの身体能力や、忍びの素質。
目の前のロリ巨乳は、そのナツキすら遥かに凌駕している。
コントローラー落としたままの指先が、爪が食い込むくらいに握り締めていないと止めらないくらいに未だ震え続けている。
「どういう、こと……? それ、なに?」
マモンはエリナの足元に転がる空箱を見つけて指を差した。
「その煙が、……力の正体!? それならボクも――」
「来ないほうがいいよー。逆さま玉手箱って知ってる? 若返るだけのアイテムだから。もしかしたらもっとちっちゃくなっちゃうかも?」
「っ……」
「完堕ちする前に戻れればそれで良かったんだけど、戻り過ぎちゃったね」
「……どういう、……ことかな?」
*****
――これはエリナが榎本とコンビを組むと決めてから正式に組む少し前の話。エリナと、エリナの父・前古賀忍軍頭領との間で行われたやり取りの話である。
「己の力を封じたい、か……。相方の、……榎本くんが力を使えないからか?」
「忍術使う素質があるから、榎本に勝てると思われるの嫌だからねー」
「思うわけ無いだろうが……。榎本くんはそのことはとうの昔に分かった上で忍びとして高みを目指し続けている。……エリナ、考え直してくれんか? わざわざエリナまで忍びの素質を捨てることはないだろう?」
「無理。忍術使う素養を封じてくれないならくノ一やめるー」
「はぁ……。これだけの才覚を持って生まれたと言うのに……これでは元も子もない。――言っておくが、後からやっぱり欲しいと言っても、もう取り返せないぞ。……はぁ、……もうくたくただ……。おてんば娘がっ」
「わかったって。早くしてくれないとくノ一やめるよー」
ふわーーーーーーーーーーーーーん……。
淡く白い光が散り散りになって空気中に露と消えいった時には、エリナの忍びとしての力も露と消えたのであった。
「まさかあの後お父さんが殺されて、永遠に力がなくなるとは思っていなかったけどねー。あーでも、あの言い方だと、どっちにしても永遠に力が使えなかったのかな?」
「エリナ! ふざけているの? 嘘を吐いてない? 力を捨てた? 何のために?」
「話を聞いてなかったのー? 邪魔になったからねー」
「邪魔? その力がっ……?」
「それから暫くして榎本が力使えるようになった時は力捨てなきゃ良かったー、なんて思ったりもしたけどね。まぁーでもこれで元通り」
「く、くそっ……」
「じゃ、あんただけ攻撃出来ない絶体絶命のところ悪いんだけど、全力でいかせてもらいまーーーーす、アハハハハハハハハッ!!!!!!」
こうしてマモンは医務室のベッドの上で魘される事となったのである。
ざっくり話を聞いたナツキは、途中でマモンの声が消えた理由を知った。
しかし恐るべきはエリナだ。忍術らしい術の行使を見たことは無かったが、まさか使えないまま今まで戦っていたとは思ってもみない。
そのエリナの体術に苦戦していたとなると、自嘲気味な笑いが漏れてしまう。
「分かったかな? マモンチームは壊滅したんだよ。これで晴れて君たちも一回戦進出だ。おめでとう!!」
激励し慣れた力強い声を張って、オネエの肩に手を掛けるマーラ。
「一回戦進出なら何で罰ゲームを受けないとならないの?」
「君たちは一回戦は突破出来るけど、それは後日判明するマモンチームの壊滅によっての繰り上げによるものだからね。今日はマモンチームが決めた罰ゲームを受けないとならない」
「なにっ……?」
ナツキはマモンチームが控えていた対面のコートサイドを見やると、妖しげな女の鞭でマロッグが首を絞められていた。
遊び半分のナツキとは違う、蝶のメガネを掛けた本格仕様の女王様だ。
今になって気付いたが、脳筋男のマーラからは血を吸ったばかりの臭いがする。
そう、マモンチームはジャックされていたのだ。――だから企業秘密と一点張りで、質問に答えようとしなかったのか。
招待したマモンよりももっと大きな力が働いている。
「一回戦突破出来るとは言っても、ナツキくんが観客に犯されて耐えられて、翔子くんがワタシのテクで壊れなかったらの話だ。2人とも耐えられるかな!?」
三日月形の目をしてニヤリとされて、ナツキは向かっ腹が立ち、筋肉スパッツ男の首に指先を伸ばす。
が、それを天女の羽衣で去なすような指先に指先を搦め捕られてしまう。
「オネエっ……」
止めてきたのはオネエだった。
そして、指先絡めながらに熱っぽく囁かれた。
「耐えても耐えなくても2回戦進出よ? 好き放題されても対戦したときにやり返せるしねぇ~。なによりエリナちゃんと戦ってみたいなんて思っちゃったわ」
ぐっ……。
「男性ホルモンマックスの自分にめちゃくちゃにされたら良いんじゃない? 私は素人相手にすれば良いだけだからねー。っ、ぐうう……」
強がり言っているのもやきもち妬いているのも見透かされたようにオネエから頭を撫でられた。
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