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2章
②
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その日は緊張しながらも瑛二と食事を共にした
広い机ではなく家庭的な横に長い飴色の食卓だった
瑛二と近い距離もあり、少し緊張した
緊張しているのがわかっていたようで、緊張を和らげる為に会話を続けてくれた
私は頷くのが精一杯だった
瑛二と他愛無い話なんてしたことなかった
まるで、立場が逆になったようで少しくすぐったい気持ちになった
食事が終わると、お風呂に案内された
お風呂なんていつぶりだろうか
あの家では、お風呂に浸かるなんて許されなくて体を流す程度だった
世話係のくせに図々しいと、他の使用人達に言われ
ああ、私には過ぎたものだと、そう思っていた
現実に起きてる事は、未だに信じられない
お湯に浸かりながら私は今日起きたことを振り返った
色んなことがあって疲れてしまった
温かいお湯は、私の心を癒すように身に染みていく
『私は…こんなに幸せになってもいいの
かしら?』
誰も答えが返ってこないとわかっていながらも
呟いてしまう
私の心の声が、浴槽に小さく響いた
初めて人から、心を許した相手に好きと言われ
戸惑いもあったけど、心が落ち着いた今考えると嬉しかった
お湯の水面に映る自分の表情は、泣く手前の顔をしていた
いつも無表情を貫いていた私が、表情が少しずつ変わっていたことに驚いた
『私は今、泣きたいほど嬉しいのね…』
言霊には力が宿る、というけれど本当のようだ
だって、さっきよりも泣きそうになっていたから
少し長湯をしてしまったようで、頬が紅潮していた
着替えは用意してくれて、肌触りがいい丈の長い白いワンピースだった
寝衣と呼ぶものらしい
着用するととても着心地が良くて少し戸惑った
こんな素敵なものを着ていいのかと
洗面台の前に座り、髪をタオルで乾かしているとノックの音が聞こえた
『天音、入ってもいいか?』
『はい、どうぞ』
急なノックと相手が瑛二な事に驚いて、少し声が上擦ってしまった
けどそれを気にすることなく、部屋に入室した
『よかった、中々出てこないから心配した』
『お湯に浸かるなんて、久々だから
思ったより長く浸かってしまったみたい
心配させてごめんなさい』
そう言うと彼は首を横に振った
何か間違ったことをしてしまった、と思った
けれど違ったらしい
『俺が勝手に心配して見にきただけだから
そう畏まらないでいい』
そう言い、私の手からタオルを取り、私の髪を乾かし始めた
『瑛二、何を…?』
『天音の綺麗な髪、一度乾かして見たかったんだ
こんな素敵な髪、勿体無いくらいだ』
褒められたことなくて、言葉が見つからず私は俯くことしかできなかった
瑛二の優しい手つきに私は身を任せた
とても居心地がよくて、瞼がうとうとしてしまった
そのまま私は眠りに誘われた
『眠ってしまったか、今日は色んなことがあって
疲れたよな』
そう言い、瑛二は起こさないように天音をそっと抱き上げた
お姫様抱っこのような形だ
歩くたびに、天音の銀髪の髪が揺れ見入ってしまう
天音の純粋で無垢な心のように、真っ白で綺麗で汚れを知らない
『きっと、天音は真実を知ったら…
受け入れてくれるだろう
けど、それはずるいと思うんだ』
そう、瑛二には天音にまだ言えない秘密があった
天音をあの家から救い出したのも、それが一つの理由
寝室に着き、天音をベットに横にさせる
天音が軽いからなのか、ベットが少し沈んだ
もっと色んなものを食べさせなくては、と思った
痩せ細った体は、転んだらすぐ折れてしまいそうで心配になる
『天音、おやすみ。いい夢を』
幸せそうな表情で眠る天音は、まるでお姫様のように美しかった
広い机ではなく家庭的な横に長い飴色の食卓だった
瑛二と近い距離もあり、少し緊張した
緊張しているのがわかっていたようで、緊張を和らげる為に会話を続けてくれた
私は頷くのが精一杯だった
瑛二と他愛無い話なんてしたことなかった
まるで、立場が逆になったようで少しくすぐったい気持ちになった
食事が終わると、お風呂に案内された
お風呂なんていつぶりだろうか
あの家では、お風呂に浸かるなんて許されなくて体を流す程度だった
世話係のくせに図々しいと、他の使用人達に言われ
ああ、私には過ぎたものだと、そう思っていた
現実に起きてる事は、未だに信じられない
お湯に浸かりながら私は今日起きたことを振り返った
色んなことがあって疲れてしまった
温かいお湯は、私の心を癒すように身に染みていく
『私は…こんなに幸せになってもいいの
かしら?』
誰も答えが返ってこないとわかっていながらも
呟いてしまう
私の心の声が、浴槽に小さく響いた
初めて人から、心を許した相手に好きと言われ
戸惑いもあったけど、心が落ち着いた今考えると嬉しかった
お湯の水面に映る自分の表情は、泣く手前の顔をしていた
いつも無表情を貫いていた私が、表情が少しずつ変わっていたことに驚いた
『私は今、泣きたいほど嬉しいのね…』
言霊には力が宿る、というけれど本当のようだ
だって、さっきよりも泣きそうになっていたから
少し長湯をしてしまったようで、頬が紅潮していた
着替えは用意してくれて、肌触りがいい丈の長い白いワンピースだった
寝衣と呼ぶものらしい
着用するととても着心地が良くて少し戸惑った
こんな素敵なものを着ていいのかと
洗面台の前に座り、髪をタオルで乾かしているとノックの音が聞こえた
『天音、入ってもいいか?』
『はい、どうぞ』
急なノックと相手が瑛二な事に驚いて、少し声が上擦ってしまった
けどそれを気にすることなく、部屋に入室した
『よかった、中々出てこないから心配した』
『お湯に浸かるなんて、久々だから
思ったより長く浸かってしまったみたい
心配させてごめんなさい』
そう言うと彼は首を横に振った
何か間違ったことをしてしまった、と思った
けれど違ったらしい
『俺が勝手に心配して見にきただけだから
そう畏まらないでいい』
そう言い、私の手からタオルを取り、私の髪を乾かし始めた
『瑛二、何を…?』
『天音の綺麗な髪、一度乾かして見たかったんだ
こんな素敵な髪、勿体無いくらいだ』
褒められたことなくて、言葉が見つからず私は俯くことしかできなかった
瑛二の優しい手つきに私は身を任せた
とても居心地がよくて、瞼がうとうとしてしまった
そのまま私は眠りに誘われた
『眠ってしまったか、今日は色んなことがあって
疲れたよな』
そう言い、瑛二は起こさないように天音をそっと抱き上げた
お姫様抱っこのような形だ
歩くたびに、天音の銀髪の髪が揺れ見入ってしまう
天音の純粋で無垢な心のように、真っ白で綺麗で汚れを知らない
『きっと、天音は真実を知ったら…
受け入れてくれるだろう
けど、それはずるいと思うんだ』
そう、瑛二には天音にまだ言えない秘密があった
天音をあの家から救い出したのも、それが一つの理由
寝室に着き、天音をベットに横にさせる
天音が軽いからなのか、ベットが少し沈んだ
もっと色んなものを食べさせなくては、と思った
痩せ細った体は、転んだらすぐ折れてしまいそうで心配になる
『天音、おやすみ。いい夢を』
幸せそうな表情で眠る天音は、まるでお姫様のように美しかった
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