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第三話 束の間の平穏
第三話 一五
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一気に静かになった庭で、美桜は縁側に座り直すとぬるくなったお茶をすする。一方で紫苑は自室に入ると、裁縫道具を手にして縁側に戻ってきた。彼は楓から受け取った風呂敷包みを膝の上で開ける。美桜はそれを横目で見遣って、首を傾げた。
「……端切れ布と紐? それに霊符も?」
「うん。美桜に渡したお守りはもう効果がないだろうし、昨夜のこともあるから念のため美桜の分のお守りを新しく作ろうと思って」
話しながら紫苑は断ち切りばさみで布の形を整え、難なく針孔に刺繍糸を通し、そのままちくちくときれいに布端を縫っていく。
「私も手伝いましょうか?」
紫苑の手捌きは見事なものでおそらく自分の助けなど要らないだろうとは思いつつ、美桜は一応訊いてみた。案の定、紫苑は首を横に振った。
「このお守りに関しては僕が作らないと効果がなくなるから。気持ちは嬉しいよ、ありがとう」
美桜は頷くと、紫苑の邪魔をしないように隣から静かに紫苑の手元を眺めることにした。
(紫苑は本当に器用ね)
今時の男性にしては珍しく、紫苑は料理、洗濯、掃除など一通りの家事をこなすことができる。紫苑の生い立ちがそうさせたのか、もとより彼の物事をそつなくこなせる性格がそうさせるのかは定かではないが、女性である美桜からみても非の打ち所がないと思う。
最初は眺めるつもりだったが、美桜はいつの間にか見惚れていた。
そうこうしているうちに紫苑は一辺だけを残して周囲を縫い終えると中に折りたたんだ霊符を入れ、口を紐で縛った。
「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前」
最後にお守りに向けて九字を切ると、紫苑は「できた」と言って美桜にそれを手渡した。
「ありがとう」
「この家には結界が張ってあるから大丈夫だとは思うけど、肌身離さず持っててね。特に外出するときは絶対に忘れないように」
「ええ、肝に銘じておくわ」
美桜は懐にお守りを仕舞う。紫苑はそれを見届けるとおもむろに立ち上がった。
「そろそろお昼ご飯の準備をしようか」
「そうね。何を作りましょうか」
「一緒に考えながら作ろう」
穏やかな午後の始まりを告げるように、晴天に午の刻の鐘の音が高らかに鳴り渡った。
「……端切れ布と紐? それに霊符も?」
「うん。美桜に渡したお守りはもう効果がないだろうし、昨夜のこともあるから念のため美桜の分のお守りを新しく作ろうと思って」
話しながら紫苑は断ち切りばさみで布の形を整え、難なく針孔に刺繍糸を通し、そのままちくちくときれいに布端を縫っていく。
「私も手伝いましょうか?」
紫苑の手捌きは見事なものでおそらく自分の助けなど要らないだろうとは思いつつ、美桜は一応訊いてみた。案の定、紫苑は首を横に振った。
「このお守りに関しては僕が作らないと効果がなくなるから。気持ちは嬉しいよ、ありがとう」
美桜は頷くと、紫苑の邪魔をしないように隣から静かに紫苑の手元を眺めることにした。
(紫苑は本当に器用ね)
今時の男性にしては珍しく、紫苑は料理、洗濯、掃除など一通りの家事をこなすことができる。紫苑の生い立ちがそうさせたのか、もとより彼の物事をそつなくこなせる性格がそうさせるのかは定かではないが、女性である美桜からみても非の打ち所がないと思う。
最初は眺めるつもりだったが、美桜はいつの間にか見惚れていた。
そうこうしているうちに紫苑は一辺だけを残して周囲を縫い終えると中に折りたたんだ霊符を入れ、口を紐で縛った。
「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前」
最後にお守りに向けて九字を切ると、紫苑は「できた」と言って美桜にそれを手渡した。
「ありがとう」
「この家には結界が張ってあるから大丈夫だとは思うけど、肌身離さず持っててね。特に外出するときは絶対に忘れないように」
「ええ、肝に銘じておくわ」
美桜は懐にお守りを仕舞う。紫苑はそれを見届けるとおもむろに立ち上がった。
「そろそろお昼ご飯の準備をしようか」
「そうね。何を作りましょうか」
「一緒に考えながら作ろう」
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