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第二話 囚われの二年間
第二話 一
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第二話 囚われの二年間
赤い屋敷、その玄関先はあかりにとって日常に埋もれるほど、見慣れたものだった。
「いいか、あかり。昴くんたちの言うことはちゃんときくんだよ。ひとりで走っちゃいけない。はぐれたらその場でじっとして助けを待つこと。それから」
穏やかで心落ち着く低音。黄金の髪に狐の耳と尾、目は火を灯したような優しい赤。一声聞いて、一目見て、それが若かりしころの父の姿だとわかった。
隣に並ぶ女性は、髪も目も袴も赤い。同じ赤なのに、父とは対照的に炎を燃やしているかのような力強い瞳は紛れもなく母のものだ。
母はばっさりと父の言葉を遮った。
「もう、いつまで言ってるのよ。あかりも今日で四歳よ。稽古だって厳しくしたし、父親なんだからもっと信じてあげなさいよ」
「わ、わかったよ。ああでも、最後に一つだけ」
苦笑して母を見上げた父は、ついとあかりの方に目を向けるとふわりと微笑んだ。
「何があっても、最後まで諦めてはいけないよ。お父様との約束だ、いいね?」
繰り返し聞かされた言葉だ。あかりは今日も「私、やくそくまもるよ!」と元気よく答える。次いで、母もあかりと視線の高さを合わせると「お母様との約束は言えるわね?」とあかりの顔を覗き込んだ。
「れいけんはまもるためにつかうこと。のりとはこころをこめてうたうこと」
「よくできました」
そう言って母はあかりの手に何かを握らせた。母の手が退けられて、あかりはそれが何なのか知る。
「おまもりだ!」
あかりの両手に乗るくらいの大きさのお守りは、全体的に赤い。金属の金銀を細く撚った刺繍があかりの名前と鳳凰を描き、お守りに華々しさと豪華さを添えていた。
「あかりが無事を祈ってお母様とお父様がつくったのよ。ずっと持っていること。当たり前だけど絶対なくしちゃだめだからね」
「ありがとう!」
満面の笑みを返すと、両親はようやく安心したように笑った。
「初任務、頑張るのよ」
「いってらっしゃい」
「行ってきます!」
笑顔の両親に見送られ、あかりは朱咲門目指して駆けて行った。
「うう……。結月ぃ、どうしよう……」
初任務から時は経ち、あかりは少しだけ成長していた。それでもまだまだ子どもで、感情のまま、涙目になって一番近くにいた結月に縋った。
結月は無表情のまま、あかりを見つめ返す。しかし、瞳に浮かぶ色は思案げで心配していることは明らかだった。
「どうしたの」
「お守り、なくしちゃって。でも朝はあったから、なくしたのはさっきの任務のとき、だと思うの」
初任務のときに両親からもらったお守りをあかりはとても大事にしていたし、気に入ってもいた。それにも関わらず失くしてしまったことはかなりショックで、同時に約束を破ってしまった罪悪感も胸を襲う。
あかりと結月のすぐ後ろを歩いていた秋之介と昴にも話は聞こえたようで、あかりに身を寄せてきた。
「あんなに赤いし戻ればすぐ見つかるかもしれないぜ」
軽く振り返った先は林だ。秋之介の言葉にも一理あるかもしれないが、日暮れの迫る林は薄暗く、落とし物探しには向いていないように思える。代表して昴が首を振った。
「探すなら明日の明るいときにしよう」
「また妖が出ないとも限らない」
結月も言い添えたことで、その場は『明日お守り探しをする』という意見にまとまった。
結月に優しく手を引かれるまま、あかりは家路をのろのろ辿った。
赤い屋敷、その玄関先はあかりにとって日常に埋もれるほど、見慣れたものだった。
「いいか、あかり。昴くんたちの言うことはちゃんときくんだよ。ひとりで走っちゃいけない。はぐれたらその場でじっとして助けを待つこと。それから」
穏やかで心落ち着く低音。黄金の髪に狐の耳と尾、目は火を灯したような優しい赤。一声聞いて、一目見て、それが若かりしころの父の姿だとわかった。
隣に並ぶ女性は、髪も目も袴も赤い。同じ赤なのに、父とは対照的に炎を燃やしているかのような力強い瞳は紛れもなく母のものだ。
母はばっさりと父の言葉を遮った。
「もう、いつまで言ってるのよ。あかりも今日で四歳よ。稽古だって厳しくしたし、父親なんだからもっと信じてあげなさいよ」
「わ、わかったよ。ああでも、最後に一つだけ」
苦笑して母を見上げた父は、ついとあかりの方に目を向けるとふわりと微笑んだ。
「何があっても、最後まで諦めてはいけないよ。お父様との約束だ、いいね?」
繰り返し聞かされた言葉だ。あかりは今日も「私、やくそくまもるよ!」と元気よく答える。次いで、母もあかりと視線の高さを合わせると「お母様との約束は言えるわね?」とあかりの顔を覗き込んだ。
「れいけんはまもるためにつかうこと。のりとはこころをこめてうたうこと」
「よくできました」
そう言って母はあかりの手に何かを握らせた。母の手が退けられて、あかりはそれが何なのか知る。
「おまもりだ!」
あかりの両手に乗るくらいの大きさのお守りは、全体的に赤い。金属の金銀を細く撚った刺繍があかりの名前と鳳凰を描き、お守りに華々しさと豪華さを添えていた。
「あかりが無事を祈ってお母様とお父様がつくったのよ。ずっと持っていること。当たり前だけど絶対なくしちゃだめだからね」
「ありがとう!」
満面の笑みを返すと、両親はようやく安心したように笑った。
「初任務、頑張るのよ」
「いってらっしゃい」
「行ってきます!」
笑顔の両親に見送られ、あかりは朱咲門目指して駆けて行った。
「うう……。結月ぃ、どうしよう……」
初任務から時は経ち、あかりは少しだけ成長していた。それでもまだまだ子どもで、感情のまま、涙目になって一番近くにいた結月に縋った。
結月は無表情のまま、あかりを見つめ返す。しかし、瞳に浮かぶ色は思案げで心配していることは明らかだった。
「どうしたの」
「お守り、なくしちゃって。でも朝はあったから、なくしたのはさっきの任務のとき、だと思うの」
初任務のときに両親からもらったお守りをあかりはとても大事にしていたし、気に入ってもいた。それにも関わらず失くしてしまったことはかなりショックで、同時に約束を破ってしまった罪悪感も胸を襲う。
あかりと結月のすぐ後ろを歩いていた秋之介と昴にも話は聞こえたようで、あかりに身を寄せてきた。
「あんなに赤いし戻ればすぐ見つかるかもしれないぜ」
軽く振り返った先は林だ。秋之介の言葉にも一理あるかもしれないが、日暮れの迫る林は薄暗く、落とし物探しには向いていないように思える。代表して昴が首を振った。
「探すなら明日の明るいときにしよう」
「また妖が出ないとも限らない」
結月も言い添えたことで、その場は『明日お守り探しをする』という意見にまとまった。
結月に優しく手を引かれるまま、あかりは家路をのろのろ辿った。
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