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第三話 欠落の二年間
第三話 二
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「ん? なんか聞こえねえ?」
秋之介の言葉に、夜空を見上げていた結月は視線を下ろしてそちらを見遣った。
「なんかって?」
「僕は特に何も聞こえないけど」
「よーっく耳澄ましてみろ。声、みたいな?」
秋之介に促されて、耳をそばだてる。晩秋の風が木々の葉を擦る音と虫の鳴き声、その奥に声らしきものが聞き取れる。ほとんど息遣いに近いので何を言っているかまではわからない。ほどなくして声は聞こえなくなった。
「って、ゆづくんどうしたの⁉」
「え……」
昴がぎょっとした顔で、結月を振り向く。言われて初めて、頬が濡れていることに気づいた。
「まさか、今の呪詛かなんかだったんじゃねえよな」
険しい顔をする秋之介へ、結月は自分でも何故かはわからないが強く首を振って否定した。
「違う……っ!」
普段声を張り上げることなど滅多にない結月の大きな声に、秋之介と昴は肩を揺らした。
「違う……。優しいのに、悲しい声色だった……」
余韻は物悲しく、それは今のあかりを想うものにとてもよく似ていた。
身を寄せた昴が幼い弟にするように結月の頭を撫でる。
「そっか。ゆづくんがそういうってことはあかりちゃんの声だったのかもね」
「言われてみれば、あかりは言霊使いでもあるんだし、可能性としちゃあるな」
「うん……」
結月が落ち着いたのを見計らって、夕飯の弁当を広げた。
「俺たちも頑張らねえとな。まずは飯食おうぜ。この分じゃ子の刻まで結界巡回あるし」
「式神とか妖が出ないといいけどね」
おにぎりに手を伸ばしながら昴が苦笑する。
結界巡回は幼いころからやってきた任務のひとつだ。しかし、現在はあかりがいないため効率が悪い。式神や妖が出ないなら、昴が結界を点検・補強して終わるのだが、発見したら最後、戦いになる。実際、今日の午前中に式神に囲まれたとき、その数の多さに手間取ったために、こんな時間まで巡回時間が延びてしまったのだった。
秋之介がおにぎりをひとかじりしてぼやく。
「四月前にあかりが邪気を一掃したってのに、懲りないよなぁ」
結月はちらりと秋之介を見てから、ほとんど独り言のように呟いた。
「それどころか前より強くなってる。陰の国はまだ諦めてないのかも」
「……本当、ゆづくんの言う通りだよ」
昴は巽の方角を睨み据えると、おもむろに立ち上がった。すでに弁当は片づけてある。
「巽の結界に式神が十数体いるみたい。行くよ、二人とも」
「うん」
「はあ。飯もまともに食わせてくんないのかよ」
文句を垂れつつも、秋之介はさっと立ち上がる。そして三人は目的の方向へ駆けだした。
秋之介の言葉に、夜空を見上げていた結月は視線を下ろしてそちらを見遣った。
「なんかって?」
「僕は特に何も聞こえないけど」
「よーっく耳澄ましてみろ。声、みたいな?」
秋之介に促されて、耳をそばだてる。晩秋の風が木々の葉を擦る音と虫の鳴き声、その奥に声らしきものが聞き取れる。ほとんど息遣いに近いので何を言っているかまではわからない。ほどなくして声は聞こえなくなった。
「って、ゆづくんどうしたの⁉」
「え……」
昴がぎょっとした顔で、結月を振り向く。言われて初めて、頬が濡れていることに気づいた。
「まさか、今の呪詛かなんかだったんじゃねえよな」
険しい顔をする秋之介へ、結月は自分でも何故かはわからないが強く首を振って否定した。
「違う……っ!」
普段声を張り上げることなど滅多にない結月の大きな声に、秋之介と昴は肩を揺らした。
「違う……。優しいのに、悲しい声色だった……」
余韻は物悲しく、それは今のあかりを想うものにとてもよく似ていた。
身を寄せた昴が幼い弟にするように結月の頭を撫でる。
「そっか。ゆづくんがそういうってことはあかりちゃんの声だったのかもね」
「言われてみれば、あかりは言霊使いでもあるんだし、可能性としちゃあるな」
「うん……」
結月が落ち着いたのを見計らって、夕飯の弁当を広げた。
「俺たちも頑張らねえとな。まずは飯食おうぜ。この分じゃ子の刻まで結界巡回あるし」
「式神とか妖が出ないといいけどね」
おにぎりに手を伸ばしながら昴が苦笑する。
結界巡回は幼いころからやってきた任務のひとつだ。しかし、現在はあかりがいないため効率が悪い。式神や妖が出ないなら、昴が結界を点検・補強して終わるのだが、発見したら最後、戦いになる。実際、今日の午前中に式神に囲まれたとき、その数の多さに手間取ったために、こんな時間まで巡回時間が延びてしまったのだった。
秋之介がおにぎりをひとかじりしてぼやく。
「四月前にあかりが邪気を一掃したってのに、懲りないよなぁ」
結月はちらりと秋之介を見てから、ほとんど独り言のように呟いた。
「それどころか前より強くなってる。陰の国はまだ諦めてないのかも」
「……本当、ゆづくんの言う通りだよ」
昴は巽の方角を睨み据えると、おもむろに立ち上がった。すでに弁当は片づけてある。
「巽の結界に式神が十数体いるみたい。行くよ、二人とも」
「うん」
「はあ。飯もまともに食わせてくんないのかよ」
文句を垂れつつも、秋之介はさっと立ち上がる。そして三人は目的の方向へ駆けだした。
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