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小話
雪散る空に貴女を恋う
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「今、どこにいるの……?」
小さな呟きが降り積もる雪に溶け消える。
結月の青い瞳に映るのは、灰色の空と真っ白な雪だけ。寂しさを助長させる光景に、結月はため息を吐いて視線を落とした。
幼い頃から側にいた少女はいつも明るく、まるで太陽のようだと結月は常々思っていたが、彼女がいないだけでこんなにも隣が寒く感じられるとは知らなかった。
「あかり……」
無意識のうちに彼女の名前を口にする。
あかりが隣からいなくなって半年以上が経ったが、未だ詳細な行方はわからないままだった。もどかしく思いながらも幼なじみの秋之介と昴と共に、あかりの生存を信じて、その行方を探す毎日だ。
雪を目にして、寒さが大の苦手なあかりのことが思われた。
(風邪、ひいてないかな……。寒さに、震えてないかな……)
心配事は尽きることがない。
(せめて側にいてあげられたら、よかったのに)
そうすれば寒さ除けの霊符を使えただろうし、そうでなくとも手を取って温かさを分けられたかもしれない。寒さと孤独から守ってあげられたかもしれない。
結月は自身の左手を見た。
あのとき、あかりの手を掴み損なわなければと後悔しない日はなかった。しかし、後悔ばかりで立ち止まることはしない。あかりを救いたいと思えばこそ、立ち止まらずに一刻も早く彼女を見つけ出すのだと胸に誓ったのだ。
「ゆづー!」
「おはよう、ゆづくん」
一足早く結月の屋敷にやって来た秋之介と昴の呼び声が届く。その声に誘われるようにして、結月は一歩を踏み出した。
今日もまた、自分たちの灯火を取り戻すための戦いが始まる。
遠い雪空の向こうから、微かな謡声が聴こえた気がした。
小さな呟きが降り積もる雪に溶け消える。
結月の青い瞳に映るのは、灰色の空と真っ白な雪だけ。寂しさを助長させる光景に、結月はため息を吐いて視線を落とした。
幼い頃から側にいた少女はいつも明るく、まるで太陽のようだと結月は常々思っていたが、彼女がいないだけでこんなにも隣が寒く感じられるとは知らなかった。
「あかり……」
無意識のうちに彼女の名前を口にする。
あかりが隣からいなくなって半年以上が経ったが、未だ詳細な行方はわからないままだった。もどかしく思いながらも幼なじみの秋之介と昴と共に、あかりの生存を信じて、その行方を探す毎日だ。
雪を目にして、寒さが大の苦手なあかりのことが思われた。
(風邪、ひいてないかな……。寒さに、震えてないかな……)
心配事は尽きることがない。
(せめて側にいてあげられたら、よかったのに)
そうすれば寒さ除けの霊符を使えただろうし、そうでなくとも手を取って温かさを分けられたかもしれない。寒さと孤独から守ってあげられたかもしれない。
結月は自身の左手を見た。
あのとき、あかりの手を掴み損なわなければと後悔しない日はなかった。しかし、後悔ばかりで立ち止まることはしない。あかりを救いたいと思えばこそ、立ち止まらずに一刻も早く彼女を見つけ出すのだと胸に誓ったのだ。
「ゆづー!」
「おはよう、ゆづくん」
一足早く結月の屋敷にやって来た秋之介と昴の呼び声が届く。その声に誘われるようにして、結月は一歩を踏み出した。
今日もまた、自分たちの灯火を取り戻すための戦いが始まる。
遠い雪空の向こうから、微かな謡声が聴こえた気がした。
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