【本編完結】朱咲舞う

南 鈴紀

文字の大きさ
上 下
47 / 388
第五話 朱咲の再来

第五話 一一

しおりを挟む
 言われた通り、あかりは渋々ながらも戦いから離れて過ごしていた。
ひとりでぼんやりしていると、ろくに戦えない己の不甲斐なさについてばかりが頭をめぐる。自室前の縁側であかりがため息をこぼしていると、昴たちが通りがかった。
「あかりちゃん」
「……昴。結月に、秋も」
 のろのろと頭を持ち上げれば、昴に微笑まれた。
「退屈してるんでしょ。町にでも行ってくるといいよ」
あかりを気遣っての提案だろうことは容易に察せられた。少し迷った末、あかりは有難く厚意を受け取ることにした。
 結月たちは心配して同行を申し出てくれたが、あかりは断った。心配ばかりかけて、その上彼らの修行時間まで奪うのは嫌だったからだ。町の人たちがいるし大丈夫だと言うと、彼らはあかりの意思を尊重してくれた。
しおりを挟む

処理中です...