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第五話 朱咲の再来
第五話 一二
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辰巳の刻に、あかりはひとり町へ繰り出した。玄舞家の屋敷を出て最初に向かったのは玄舞大路に並ぶ店だ。食料品、お菓子、反物や装飾品など一通りのものが揃っている。眺めるだけでも楽しいはずのそれらも、今のあかりにはあまり魅力的に映らなかった。
沈んだ面持ちで通りを歩いていると、昔馴染みの店主やよく行き会う町民に次々と声を掛けられた。
「あかり様! ああ、またお目にかかれて本当に良かった……」
「なんだか顔色が優れませんが、大丈夫なのですか?」
「……うん。ちょっと疲れてるだけだから、心配しないで」
あかりはとっさに取り繕うような硬い笑顔で応じたが、幸い町民たちには気づかれなかった。久しぶりに会えたことの喜びの方が遥かに大きいらしい皆は、笑顔であかりの生還を寿いでくれた。
「ほれ、あかりちゃんはうちの饅頭がすきだったろう? 良かったらお食べ」
饅頭屋を営む老齢の男性が、あかりにできたての饅頭を差し出した。あかりはまだ温かさの残るそれをありがたく受け取った。
すると隣家の駄菓子屋のおばあさんや巻き物屋の中年男性も、饅頭屋の店主に続いて菓子やのり巻きをあかりに与えた。
彼らに勧められるままに饅頭やのり巻きを頬ばる。変わらない優しい味は懐かしく、あかりは思わず涙ぐみそうになった。
「変わらず美味しいね。……ごちそうさまです」
食べることであかりの気分はわずかに上向いた。すると先ほどよりもずっと自然な微笑みがこぼれる。北の民はあかりの笑顔を見て、心底嬉しそうにしていた。
(彼らのこの笑顔を守るために、私はどうしたらいいの?)
沈んだ面持ちで通りを歩いていると、昔馴染みの店主やよく行き会う町民に次々と声を掛けられた。
「あかり様! ああ、またお目にかかれて本当に良かった……」
「なんだか顔色が優れませんが、大丈夫なのですか?」
「……うん。ちょっと疲れてるだけだから、心配しないで」
あかりはとっさに取り繕うような硬い笑顔で応じたが、幸い町民たちには気づかれなかった。久しぶりに会えたことの喜びの方が遥かに大きいらしい皆は、笑顔であかりの生還を寿いでくれた。
「ほれ、あかりちゃんはうちの饅頭がすきだったろう? 良かったらお食べ」
饅頭屋を営む老齢の男性が、あかりにできたての饅頭を差し出した。あかりはまだ温かさの残るそれをありがたく受け取った。
すると隣家の駄菓子屋のおばあさんや巻き物屋の中年男性も、饅頭屋の店主に続いて菓子やのり巻きをあかりに与えた。
彼らに勧められるままに饅頭やのり巻きを頬ばる。変わらない優しい味は懐かしく、あかりは思わず涙ぐみそうになった。
「変わらず美味しいね。……ごちそうさまです」
食べることであかりの気分はわずかに上向いた。すると先ほどよりもずっと自然な微笑みがこぼれる。北の民はあかりの笑顔を見て、心底嬉しそうにしていた。
(彼らのこの笑顔を守るために、私はどうしたらいいの?)
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