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第五話 朱咲の再来
第五話 二九
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「あかり。お父様とお母様との約束は言えるわよね?」
きっとこれが別れの言葉になる。任務に送り出されるときの決まったやりとりだった。
「何があっても最後まで諦めないこと。霊剣は護るために使い、祝詞は心をこめて謡うこと」
喉の奥がつまって苦しい。それでもあかりは約束の文言を紡いだ。まつりは満足そうに微笑んだ。
「よくできました」
「お母様……!」
まだ離れたくない。もっと一緒にいてほしい。駄々をこねる小さな子どものように、あかりはまつりに縋りついた。
「あかり」
優しい声に、あかりは顔を上げた。視界は滲んで、まつりがどんな表情をしているのかはわからなかった。
「私は生きて側にいてあげられない。だけど、ゆづくんに秋くん、昴くんがいる。それに朱咲様もあかりの中に。あかりは決してひとりじゃないわ。遠く、私も見守っている。だから、自分とまわりのみんなを愛して、絶対に生き抜くのよ」
「……はい」
「じゃないとお母様は冥府でおかえりって言ってあげないんだから」
「……お母様……」
まつりの着物の胸元をしわを作るくらいに強く握っていたあかりの手が、そっと引き離された。包み込むまつりの手は変わらず温かい。
「愛しているわ、あかり。私の自慢の子。……さあ、いってらっしゃい!」
まつりは離した手で、あかりの背を押した。離れがたい気持ちはなおあったが、最後は母の言う『自慢の子』でありたかったあかりは、涙を拭うと顔だけ振り返り、満面の笑みをつくった。
「お母様、大好きだよ。いってきます……!」
まつりは最後まで母の顔をしていた。あかりの背を慈しむように見送り、遠くに佇む結月たちにも優しく微笑んだ。
「あかりのこと、よろしくね」
三人が承知した意を伝えると、まつりは「あなたたちも息子のように想っていたわ。愛してる」と言って、白い光とともにその姿を消した。あかりも母の気配がなくなるのを背後に感じていた。
あかりは皆のもとに戻ると、右手に結月、左手に昴の手を握って、秋之介が儀式を締めくくるのを見届けることにした。
きっとこれが別れの言葉になる。任務に送り出されるときの決まったやりとりだった。
「何があっても最後まで諦めないこと。霊剣は護るために使い、祝詞は心をこめて謡うこと」
喉の奥がつまって苦しい。それでもあかりは約束の文言を紡いだ。まつりは満足そうに微笑んだ。
「よくできました」
「お母様……!」
まだ離れたくない。もっと一緒にいてほしい。駄々をこねる小さな子どものように、あかりはまつりに縋りついた。
「あかり」
優しい声に、あかりは顔を上げた。視界は滲んで、まつりがどんな表情をしているのかはわからなかった。
「私は生きて側にいてあげられない。だけど、ゆづくんに秋くん、昴くんがいる。それに朱咲様もあかりの中に。あかりは決してひとりじゃないわ。遠く、私も見守っている。だから、自分とまわりのみんなを愛して、絶対に生き抜くのよ」
「……はい」
「じゃないとお母様は冥府でおかえりって言ってあげないんだから」
「……お母様……」
まつりの着物の胸元をしわを作るくらいに強く握っていたあかりの手が、そっと引き離された。包み込むまつりの手は変わらず温かい。
「愛しているわ、あかり。私の自慢の子。……さあ、いってらっしゃい!」
まつりは離した手で、あかりの背を押した。離れがたい気持ちはなおあったが、最後は母の言う『自慢の子』でありたかったあかりは、涙を拭うと顔だけ振り返り、満面の笑みをつくった。
「お母様、大好きだよ。いってきます……!」
まつりは最後まで母の顔をしていた。あかりの背を慈しむように見送り、遠くに佇む結月たちにも優しく微笑んだ。
「あかりのこと、よろしくね」
三人が承知した意を伝えると、まつりは「あなたたちも息子のように想っていたわ。愛してる」と言って、白い光とともにその姿を消した。あかりも母の気配がなくなるのを背後に感じていた。
あかりは皆のもとに戻ると、右手に結月、左手に昴の手を握って、秋之介が儀式を締めくくるのを見届けることにした。
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