84 / 390
第六話 幸せはいつもそばに
第六話 一八
しおりを挟む
店主の男性にお金を渡して、白い板と爪楊枝をそれぞれ受け取る。そこからは無言で作業にのめりこんだ。
あかりは半分ほど削り出したところで、細かな部分を欠いてしまった。隣を見ると、結月は真剣な顔で作業を続けていた。手元にも目をやると三分の二ほどの型がきれいに抜かれていた。しばらく待っていると、型はすっかり取り出された。
「結月くんは相変わらず器用だな」
店主はかかっと笑うとどの景品が欲しいか結月に訊いたが、結月はあかりを見た。
「あかりはどれがいい?」
「え、私が選んじゃっていいの?」
結月が頷いたので、あかりは景品の置かれた棚に目をやった。カルメ焼きやきな粉飴などのお菓子や、竹とんぼや紙風船といった遊具など子どもの好きそうなものが棚を占めるなかであかりの目を引いたのは髪飾りだった。先ほどの思い出話にも影響を受けたのかもしれない。つまみ細工でできた可愛らしい意匠のかんざしを指し示して「これがいいな」と言うと、結月は目を細めた。
「昔も髪飾りを欲しがってたよね」
「そのときも結月がとってくれたんだよね。普段使いするには子どもっぽい意匠だけど、なんだかその時のことが思い出されてね」
「うん、いいと思う」
話を聞いていた店主が景品をあかりに差し出す。
「これだね? はいよ」
「ありがとう、おじさん」
あかりは受け取った髪飾りを屋台の灯りにかざして見た。赤色と桃色の布が花を形作っていて、確かに子どもっぽくはあるが愛らしい雰囲気だ。
せっかくだからと、あかりはかんざしを挿すことにした。とはいえこの場では他の客の迷惑になりかねないので、少し離れた人の掃けた場所に移動する。
お嬢様結びにした際にまとめた方の髪束を団子にしていこうとするも、長い髪は扱いにくい。あかりが苦戦していると見かねた結月が手を貸してくれた。
「うん、できた」
結月の呟きは満足げな響きを帯びていた。懐から手鏡を取り出したあかりは、鏡の端に自身の後頭部を映しこんだ。団子は整っており、そこに挿されたかんざしも確認できた。
「ありがとう。どう? 似合ってる?」
「うん、かわいい」
優しく微笑まれ、あかりの胸がどきりと高鳴った。しかしそれも一瞬のことで、すぐに現実を思い出す。
「そろそろ半刻経つよね」
「そうだね。中央御殿に戻ろうか」
名残惜しくはあったが、二人は屋台と人で賑わう玄舞大路を後にした。
あかりは半分ほど削り出したところで、細かな部分を欠いてしまった。隣を見ると、結月は真剣な顔で作業を続けていた。手元にも目をやると三分の二ほどの型がきれいに抜かれていた。しばらく待っていると、型はすっかり取り出された。
「結月くんは相変わらず器用だな」
店主はかかっと笑うとどの景品が欲しいか結月に訊いたが、結月はあかりを見た。
「あかりはどれがいい?」
「え、私が選んじゃっていいの?」
結月が頷いたので、あかりは景品の置かれた棚に目をやった。カルメ焼きやきな粉飴などのお菓子や、竹とんぼや紙風船といった遊具など子どもの好きそうなものが棚を占めるなかであかりの目を引いたのは髪飾りだった。先ほどの思い出話にも影響を受けたのかもしれない。つまみ細工でできた可愛らしい意匠のかんざしを指し示して「これがいいな」と言うと、結月は目を細めた。
「昔も髪飾りを欲しがってたよね」
「そのときも結月がとってくれたんだよね。普段使いするには子どもっぽい意匠だけど、なんだかその時のことが思い出されてね」
「うん、いいと思う」
話を聞いていた店主が景品をあかりに差し出す。
「これだね? はいよ」
「ありがとう、おじさん」
あかりは受け取った髪飾りを屋台の灯りにかざして見た。赤色と桃色の布が花を形作っていて、確かに子どもっぽくはあるが愛らしい雰囲気だ。
せっかくだからと、あかりはかんざしを挿すことにした。とはいえこの場では他の客の迷惑になりかねないので、少し離れた人の掃けた場所に移動する。
お嬢様結びにした際にまとめた方の髪束を団子にしていこうとするも、長い髪は扱いにくい。あかりが苦戦していると見かねた結月が手を貸してくれた。
「うん、できた」
結月の呟きは満足げな響きを帯びていた。懐から手鏡を取り出したあかりは、鏡の端に自身の後頭部を映しこんだ。団子は整っており、そこに挿されたかんざしも確認できた。
「ありがとう。どう? 似合ってる?」
「うん、かわいい」
優しく微笑まれ、あかりの胸がどきりと高鳴った。しかしそれも一瞬のことで、すぐに現実を思い出す。
「そろそろ半刻経つよね」
「そうだね。中央御殿に戻ろうか」
名残惜しくはあったが、二人は屋台と人で賑わう玄舞大路を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
退屈令嬢のフィクサーな日々
ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。
直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。
《完結》悪役聖女
ヴァンドール
ファンタジー
聖女になり、王妃となるため十年間も教育を受けて来たのに蓋を開ければ妹が聖女の力を持っていて私はには聖女の力が無かった。そのため祖国を追放されて隣国へと旅立ったがそこで……
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる