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第八話 喪失の哀しみに
第八話 一一
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(なんて酷いの……)
それは誰に向けた言葉だっただろう。陰の国の式神使いか、あるいは自分か。
最初は取り乱したが、いまやすっかり慣れた光景だった。それを悲しく思う。
振り返ると、皆一様に暗い顔をしていた。特に結月と秋之介はやりきれないようだった。それもそのはず、二人にとっては同族が消えていくようなものなのだから。あかりも半分は妖の血を引いているので、二人ほどではないかもしれないが気持ちは痛いほどわかった。
「……なんで、いつもいつも妖なんだよ」
「秋くん……」
秋之介が吐き捨てるように言った。昴が痛ましげに彼を見やる。
「人も妖もおんなじだろ。それなのに使役されるのは妖ばっかりじゃねえか。どうしてだよ……!」
あかりと結月は何も言えなかったが、昴は毅然とした態度で答えを示した。
「それが、陰の国の価値観だからだよ。秋くんだって、知ってるでしょ?」
人は妖よりも優れている。だから妖は使役されるものだ。これが陰の国の考え方だった。
諭されるような物言いに腹が立ったのか、それとも昴の冷静過ぎる態度が気に食わなかったのか。秋之介は昴を睨みつけた。
「そうだよな。人間の昴にはわかんねぇよな……! 俺がどんだけ悔しいか、しんどいかなんて……っ」
あかりが秋之介を制しようとしたときだった。
「やめてよ、秋」
痛切な声がその場に落とされた。声の主は結月で、その表情は今にも泣きだしそうにあかりには見えた。
「……なんで、止めんだよ。ゆづにはわかるだろ、俺の気持ちが」
結月の顔に少しだけ頭が冷えたらしい秋之介が憮然とした態度で言い返す。結月は悲しげに答えた。
「わかる、わかるよ。だけど、それで昴に当り散らすのは、間違ってる。さっき秋も言ってたでしょ、人と妖は同じだって。昴だって何も思わないはず、ない。だよね、昴?」
「……そうだね。力の足りない自分が情けない。命を救えなくて辛い。僕だって、秋くんほどではないにせよ、そう思ってるんだ」
昴は下唇を嚙み締めた。
秋之介はさすがに自身の失態に気づいたのか、ばつが悪そうに「……ごめん」と呟いた。
昏倒させた式神使いを捕縛し、綻んだ結界の修復を言葉少なに済ませる。
それは誰に向けた言葉だっただろう。陰の国の式神使いか、あるいは自分か。
最初は取り乱したが、いまやすっかり慣れた光景だった。それを悲しく思う。
振り返ると、皆一様に暗い顔をしていた。特に結月と秋之介はやりきれないようだった。それもそのはず、二人にとっては同族が消えていくようなものなのだから。あかりも半分は妖の血を引いているので、二人ほどではないかもしれないが気持ちは痛いほどわかった。
「……なんで、いつもいつも妖なんだよ」
「秋くん……」
秋之介が吐き捨てるように言った。昴が痛ましげに彼を見やる。
「人も妖もおんなじだろ。それなのに使役されるのは妖ばっかりじゃねえか。どうしてだよ……!」
あかりと結月は何も言えなかったが、昴は毅然とした態度で答えを示した。
「それが、陰の国の価値観だからだよ。秋くんだって、知ってるでしょ?」
人は妖よりも優れている。だから妖は使役されるものだ。これが陰の国の考え方だった。
諭されるような物言いに腹が立ったのか、それとも昴の冷静過ぎる態度が気に食わなかったのか。秋之介は昴を睨みつけた。
「そうだよな。人間の昴にはわかんねぇよな……! 俺がどんだけ悔しいか、しんどいかなんて……っ」
あかりが秋之介を制しようとしたときだった。
「やめてよ、秋」
痛切な声がその場に落とされた。声の主は結月で、その表情は今にも泣きだしそうにあかりには見えた。
「……なんで、止めんだよ。ゆづにはわかるだろ、俺の気持ちが」
結月の顔に少しだけ頭が冷えたらしい秋之介が憮然とした態度で言い返す。結月は悲しげに答えた。
「わかる、わかるよ。だけど、それで昴に当り散らすのは、間違ってる。さっき秋も言ってたでしょ、人と妖は同じだって。昴だって何も思わないはず、ない。だよね、昴?」
「……そうだね。力の足りない自分が情けない。命を救えなくて辛い。僕だって、秋くんほどではないにせよ、そう思ってるんだ」
昴は下唇を嚙み締めた。
秋之介はさすがに自身の失態に気づいたのか、ばつが悪そうに「……ごめん」と呟いた。
昏倒させた式神使いを捕縛し、綻んだ結界の修復を言葉少なに済ませる。
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