118 / 390
第九話 訪れる転機
第九話 八
しおりを挟む
するとあかりの背後から第三者の気配がした。結月が背後に護符を放った。
「誰?」
結月の鋭い声に、少女の声が答えた。
「あなた方に協力したいのです」
「……協力?」
今度は少年の声が答える。
「そうです。我々はあの妖狐を助けたい」
正直すぐには頷けなかったが、現状を打破するにはこれしかないようにも思えた。結月の目配せに気づいたあかりも攻撃の隙間で首肯した。
「よかった、ありがとうございます」
結月と少年少女は素早く打ち合わせを終えると、前に向き直った。隙を見て、結月があかりと妖狐の間に霊符を放った。
「恐鬼怨雷、急々如律令!」
すさまじい轟音と閃光が視界を覆いつくす。あかりは事前に結月からもらった護符があるからなんともなかったが、相手はひとたまりもないはずだ。
一瞬の隙に、結月はあかりの手を引いて退路を駆けた。振り返ると少年少女は逃げる妖狐を追いかけていたが、すでに式神使いの姿はなかった。
林道を走りながら、あかりと結月はまず、昴たちのもとへ向かった。
「よかった、ちゃんと合流できて」
こちらは術使いが多く配備されていたため、すぐに戦いは収まったらしい。
「さっそくで悪いんだけど、あかりちゃんには捕えた式神の邪気を払ってほしいんだ」
「もちろん」
先ほどの妖狐との戦闘と疾駆とであかりの体力は残りわずかだったが、妖を救えるのなら全く気にならなかった。
霊剣を正面に突きつけ、四縦五横に宙を斬る。
「青柳、白古、朱咲、玄舞、空陳、南寿、北斗、三体、玉女」
真っ赤な光が式神を覆う。光が弾けるように散るとそこには何の姿も残ってはいなかった。しかし、魂が浄化され、持ち主のもとへ還っていくのは感じられた。
「さすが、あかりちゃん」
結界の修復も終わったようで、それを見届けると秋之介と昴があかりと結月を振り返った。
「つーか、おまえらどこにいたんだよ」
「なかなか来ないから心配したんだよ」
あかりと結月は顔を見合わせた。一体どこから話したものかとそろって考え込んでいるときに、あの声がした。
「それは、私たちからお話しさせていただきます」
少年少女は、ばっと一斉にその場の皆の視線を集めた。
「陰の国の者じゃないか……⁉」
「なんだってこんなところに!」
ざわつく皆を制したのは、この場で最も地位の高い昴だった。その顔は厳しい。
「君たちは陰の国の者だよね? 何をしに来たの?」
「待って、昴」
いてもたってもいられず、あかりは昴と少年少女の間に立った。
「この子たちは私と結月を助けてくれたんだよ」
「……どういうこと?」
あかりは妖狐と再会したこと、不気味な式神使いに遭遇したこと、そして少年少女が退避に力を貸してくれたことを順に説明した。
話を聞き終えると、昴は「なるほどね」と頷いた。先ほどより穏やかな表情ではあったが、まだ少年少女を警戒しているようだった。
「それで、君たちが話したいことって?」
「陰の国の実情をお教えに参りました」
周囲は再びざわついた。さすがの昴もこれには驚きを隠せなかったようで目を見開いていた。
「決して危害は加えないとお約束いたします」
「どうか我々の話を聞いていただけませんか」
昴は少年少女を見てから、あかりと結月に視線を移した。信用していいのかどうか決めかねているのだろう。だからあかりは頷いた。
昴は大きく息を吐くとその場の皆に「解散」と言い渡した。そして昴自身も踵を返す。
「話は僕の邸で聞くよ」
「あ、ありがとうございます!」
そして、あかりたち一行は玄舞家へと向かった。
「誰?」
結月の鋭い声に、少女の声が答えた。
「あなた方に協力したいのです」
「……協力?」
今度は少年の声が答える。
「そうです。我々はあの妖狐を助けたい」
正直すぐには頷けなかったが、現状を打破するにはこれしかないようにも思えた。結月の目配せに気づいたあかりも攻撃の隙間で首肯した。
「よかった、ありがとうございます」
結月と少年少女は素早く打ち合わせを終えると、前に向き直った。隙を見て、結月があかりと妖狐の間に霊符を放った。
「恐鬼怨雷、急々如律令!」
すさまじい轟音と閃光が視界を覆いつくす。あかりは事前に結月からもらった護符があるからなんともなかったが、相手はひとたまりもないはずだ。
一瞬の隙に、結月はあかりの手を引いて退路を駆けた。振り返ると少年少女は逃げる妖狐を追いかけていたが、すでに式神使いの姿はなかった。
林道を走りながら、あかりと結月はまず、昴たちのもとへ向かった。
「よかった、ちゃんと合流できて」
こちらは術使いが多く配備されていたため、すぐに戦いは収まったらしい。
「さっそくで悪いんだけど、あかりちゃんには捕えた式神の邪気を払ってほしいんだ」
「もちろん」
先ほどの妖狐との戦闘と疾駆とであかりの体力は残りわずかだったが、妖を救えるのなら全く気にならなかった。
霊剣を正面に突きつけ、四縦五横に宙を斬る。
「青柳、白古、朱咲、玄舞、空陳、南寿、北斗、三体、玉女」
真っ赤な光が式神を覆う。光が弾けるように散るとそこには何の姿も残ってはいなかった。しかし、魂が浄化され、持ち主のもとへ還っていくのは感じられた。
「さすが、あかりちゃん」
結界の修復も終わったようで、それを見届けると秋之介と昴があかりと結月を振り返った。
「つーか、おまえらどこにいたんだよ」
「なかなか来ないから心配したんだよ」
あかりと結月は顔を見合わせた。一体どこから話したものかとそろって考え込んでいるときに、あの声がした。
「それは、私たちからお話しさせていただきます」
少年少女は、ばっと一斉にその場の皆の視線を集めた。
「陰の国の者じゃないか……⁉」
「なんだってこんなところに!」
ざわつく皆を制したのは、この場で最も地位の高い昴だった。その顔は厳しい。
「君たちは陰の国の者だよね? 何をしに来たの?」
「待って、昴」
いてもたってもいられず、あかりは昴と少年少女の間に立った。
「この子たちは私と結月を助けてくれたんだよ」
「……どういうこと?」
あかりは妖狐と再会したこと、不気味な式神使いに遭遇したこと、そして少年少女が退避に力を貸してくれたことを順に説明した。
話を聞き終えると、昴は「なるほどね」と頷いた。先ほどより穏やかな表情ではあったが、まだ少年少女を警戒しているようだった。
「それで、君たちが話したいことって?」
「陰の国の実情をお教えに参りました」
周囲は再びざわついた。さすがの昴もこれには驚きを隠せなかったようで目を見開いていた。
「決して危害は加えないとお約束いたします」
「どうか我々の話を聞いていただけませんか」
昴は少年少女を見てから、あかりと結月に視線を移した。信用していいのかどうか決めかねているのだろう。だからあかりは頷いた。
昴は大きく息を吐くとその場の皆に「解散」と言い渡した。そして昴自身も踵を返す。
「話は僕の邸で聞くよ」
「あ、ありがとうございます!」
そして、あかりたち一行は玄舞家へと向かった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
退屈令嬢のフィクサーな日々
ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。
直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。
《完結》悪役聖女
ヴァンドール
ファンタジー
聖女になり、王妃となるため十年間も教育を受けて来たのに蓋を開ければ妹が聖女の力を持っていて私はには聖女の力が無かった。そのため祖国を追放されて隣国へと旅立ったがそこで……
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる